第一話・生徒会メンバー(1)
ボーイズラブにする気はないのですが、主人公(♂)に惚れている男キャラが居ます。
苦手な方、嫌悪感を感じられる方は、ご遠慮ください。
ひょんなことから、ここ里中高校の生徒会長になっちまった俺、大槻大地。
そして一癖二癖どころではすまない生徒会メンバー。
この一年、無事に生徒会を運営することが出来るのか……
第一話:生徒会メンバー(1)
「豊中ぁ、何作ってんだ?」
「輪ゴム鉄砲」
「すげっ!出来たら撃たしてくれよ」
「おぉ」
生徒会に入ってから、良く聞くようになった豊中光秀と戸部大輝の会話。
基本的に、豊中が作っているものに戸部が興味を示し、そこから遊びの方向へと会話は発展していく。
もしくは、豊中が遊んでいるものに戸部が興味を示すか。
どちらにせよ、遊んでいることには変わりはない。
「はぁ……」
この調子で大丈夫なものか……と、本気で不安になる今日この頃。
新入生が入ったらこの状態も少しは変わるだろうとは思ってたけど、逆に、新入生が入ったと同時に、俺の悩みの種がまたひとつ増えてしまった。
「かっいっちょ〜〜〜」
語尾にハートマークがついてそうに聞こえる甲高い声。
俺は盛大にため息をついた。
「アレ?会長元気ないですよ?」
「てめぇのせいだよてめぇの……」
俺は悩みの主を睨みつけるように見た。
身長165で痩せ型。髪は真黒のさらさらヘヤー。
これで女だったら、俺は笑顔でこいつの顔を見返したであろう。
しかし今の俺は、笑顔どころか眉間にしわを寄せた常態でこいつの顔を見据えている。
なぜならこいつは『男』なのだから。
「てめぇなんて言わないでくださいよ!!俺にはちゃんとした名前があるんですから」
「だったら雪野!五月蝿いから黙れ!頭痛がする!!」
「酷い!!翼って呼んでくださいよ!!」
「翼。てめぇ、俺の話聞いてなかったのか……?」
ガタッと音を立てながら、俺は椅子から腰を上げた。
身長180近くある俺からしたら、目の前に居る男はただのちび。俺は見下ろしながら目の前のちび雪野翼を見た。
「第一、俺は何べんも断ったよな?『俺に男色の趣味はない!』って」
「失礼ですね。俺にもないですよ」
ぷぅっと頬を膨らませ、拗ねてみせる雪野。
きっと、女子から見たら、このようなこいつの姿は『可愛い』に分類されるのだろう。しかし、男である俺から見たら、ただのむかつく餓鬼でしかなかった。
「だったら…」
「俺は会長だから……いや、大槻先輩だから言い寄るんです」
「でもな…」
「わかってます。会長にはそんな趣味ないってこと……」
そのとき、雪野の目元に光るものが見えた。
「ゆき…」
「でも俺は諦めませんから」
その言葉と同時に、雪野の笑顔。そして、頬に生暖かいものが触れるのを感じた。
「っ!?」
「俺部活のほうあるんで行ってきますね。その間に浮気しちゃだめですよ、会長」
「てめっ、雪野!!」
怒鳴っては見たが、すでに、雪野の姿は生徒会室からきえていた。
流石陸上部というべきか。本当に逃げ足が速い奴だと思う。
俺は大きくため息をつき、再び腰を下ろした。
「会長も大変だな」
そのとき、慰めの言葉をかけてくれたのは六道だった。
中学、そして高校のクラスも違う六道とは、生徒会に入って初めて知り合った。
読書好きということ以外のことはほとんど分からない。
唯一分かりそうな名前も、智広とかいて『ともひろ』と読むのか『ちひろ』と読むのかハッキリしない。
(本人は『ちひろ』と言うが、周りは『ともひろ』というからだ)
本当に謎の多い。もしかしたら、生徒会一謎の多い人物かもしれない。
「ま、慣れるように頑張ってみるわ」
そう笑いながら返すと、六道は『ま、頑張れ』と一言言って、ポケットから取り出した本を読み始めた。
空き時間があると、必ずといっていいほど読んでいる本。
一体どんな本を読んでいるかも分からないから、これも謎のひとつだったりする。
「仕方ない。一先ず体育祭のことについて調べるか……」
重い腰を上げ、俺は生徒会メンバーに適当に挨拶をしてから、生徒会室を後にした。
−第一話・完−