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飛行機で

「どうぞ」


泡立つ水と型通りのスマイルを置き土産に、女性アテンダントは立ち去っていく。


確か娘たちが持ってるバービーの衣装にも、あんなアテンダント風のがあったな、とマーロンは思い出す。

口角だけキュッと上げた他人行儀な笑い方も、何だかアテンダントとバービーで似ている。

というより、人形の方がその種の取り澄ました顔つきを真似たんだろうな。


マーロンは座席に凭れたまま一口含むと、胸ポケットから写真を取り出した。


折り目や指跡で微妙に歪み、端の磨り減った写真の中で笑う、幼い黒人の双子。

これは、確か二年生の時のクリスマス休暇でサム伯父さんの家に行ったときに撮ったやつだ。


二人とも同じよそ行きの蝶ネクタイをして写ってるけど、よく見ると鼻がちょっと赤い方が俺だ。

写真を撮る前に、台所のパイを盗み食いしたと疑われて親父に拳骨をもらった。

本当は伯父さんとこの猫が食べたのに、俺ら二人の仕業と決め付けられたのだ。

俺はベソをかいたが、その頃のマイケルは叩かれても決して泣かなくなっていたので、綺麗な笑顔で写ってる。

白い歯を覗かせて、大きな目を楽しげに細めた、笑顔そのものの表情だ。


マーロンはカップを置くと、指先で、そっとその写真の笑顔を撫でた。


新築したばかりのオフィスで倒れた時も、あいつのスーツの胸ポケットにはこの写真が入っていたらしい。

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