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スキー場で
「こんなの無理だよぉ」
白銀のスロープを見下ろして、マーロンはストックを握ったまま凍り付いた。
母親が買い揃えてくれた真っ赤なスキーウェアは、ロッジの中では毛布を体に縛り付けた様に暑苦しく感じた。
しかし、いざゲレンデに出てみると、刺す様な冷気がまるで針の様に、ナイロン地のスキーウェアのそこかしこから忍び込んで来る。
「クラスにも、スキーで脚を折っちゃった子がいるんだ」
改めて言葉にすると、自分もそうなる危険性が一段と高まった様に思えた。
「新聞にも、木に激突して死んだ人のニュースとか良く載るじゃないか」
滑る先には九十九パーセント以上の確率で巨大な障害物が待ち構えており、避けて通れる可能性は一パーセントに満たない気がしてきた。