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短編集

可愛い幼馴染をもつオレの見解

作者:

オレには幼馴染がいる。隣の農家の一人娘で十六年間ずっと側にいた。だけど五歳になるまでオレは彼女とろくに話をしたことはなかった。


ただ、オレが家庭教師に勉強を教わっていると窓の外に広がるあいつの家の畑で両親と楽しそうに畑の世話をする幼馴染の姿を見ることはあった。

泥にまみれ大口を開けて笑ったり、何かやらかして親に怒られて目にも留まらない速さで逃げていく姿を呆れたりしながらなんとなく見ていた。


同じ年とは思えないほど小さな身体で大人顔負けの手際で根野菜を収穫していく姿には不覚にも感心させられてしまった。………その後、収穫した野菜を入れた籠を持ちきれずそのまますっ転んでしまったのには笑ったが。


そうやって彼女を見ているうちに段々とオレは疑問に思うようになった。どうして彼女は外であんなに楽しそうにしているのにオレは家の中で勉強をしているのだろうか?

父に言われたから。オレが会社の跡取りでたくさん勉強しないといけないから。理由なんてたくさんある。同年代の子供よりもずっと頭の回転が速いオレは大人の事情なんかも全部知っていた。


だけど………それらを理解してもなお、オレは疑問に思ったんだ。


どうしてオレはあいつみたいに外で遊ぶことが許されないのか、って。


勉強や習いごとや顔つなぎのパーティー。

当たり前だと感じていたそられが一気に疎ましく思った。


だから、オレは、ある日、家から脱走した。


習いごとも勉強も何もかも全部サボってオレは人目を避けて家を脱出した。



隠れて走ってそして………道の先を歩く小さな背中を見つけた。心臓がばくばくした。顔が紅潮する。オレはエサを見つけた犬のように真っ直ぐに隣の家のずっとずっと見ているだけの名前も知らない女の子の元へと走った。


「待って!!」


「ふぇ?」


棒状のスナック菓子のような物を食べていた女の子は口をモグモグさせながらオレを見上げ、そして何かに気づいたのかニパァーと笑った。


「あれ?おとなりのおにいちゃんだ~。こんにちわ!」


その笑顔とオレのことを知っていてくれたということでオレはなんだか胸が一杯になって泣きたいぐらい嬉しくなった。

嬉しくて嬉しくて本当に嬉しくて。その勢いのままオレは女の子の手を握り締めた。


「あ、あのね!オレ、オレと友達になって!!」


キョトンとしたあと笑顔で頷いてくれた女の子の顔をオレは死んでも忘れない。


あれから十一年。オレは今でもナツの側にいる。そしてこれからもきっと………。


「あ!ナツナツナツ~~~~~!!今、帰りか?一緒に帰ろう!」


「大声で呼ばなくても聞こえてる!!」


十一年間友情だと思っていた感情が実は別のものだとオレが悟るのはまだまだ先の話だったりもする。


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