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壱矢

「パンパカパ~ぁン!」

 脳内に響き渡る大音量で、楠居 朔一(くすい しゅういち)(高校二年)は目が覚めた。

 寝ぼけ(まなこ)を薄く開け、黒い双眸(そうぼう)(すが)めながら正面を見据えてみる。

 閉めたはずの窓から吹き込む夜風を受けて、黒髪を揺らす少女がにっこりと笑い掛けている。

(何が起きたんだ、この家に…)

 妙に冷静だったのは自分の思考だ。でも見えるのは別の光。そもそも朝日でもなかった。

「おめでとうございます! アナタ、記念すべき烏森(からすもり)の生贄第一〇九号に選ばれました!」

「……はぁ?」

「これはとても名誉あることなのです! 普通の人間ではなかなかなれない超名誉?」

(なんで疑問形なんだよ…)

「…これ、ナンか日本語としておかしくないですかねぇ…?」

 目の前に突然現れた人物|(と思われる)は手元の紙切れを見ながら口をへの字にした。

 それ以前に、こちらとしては問題事が盛り沢山なのだが、口にするのも面倒だったので取り敢えず欠伸(あくび)をする。

「あ、ま、まぁそれはともかくと致しまして。早速お役目、ご苦労様です☆」

 言いながら、どこから出したのか大きな鎌がぶん回された。

 ザン…ゴツっ、ブシュア…――

 言葉も出なかった。

 思考が追いつく前に、空を切る音と(かたまり)穿(うが)つ音、水飛沫(みずしぶき)の上がる音。それらが室内に響く。

 それが自分の目の前で、自分の頭の上に振り下ろされたもので、自分の血だって知ったのは、随分時間が経ってからだ。




 頭の天辺が(うず)く痛みと頬を過ぎる冷気に(まぶた)を開けると、思いもよらない風景が広がっていた。

 長い長い暗闇を抜けると、そこは深い群青色の夜が広がる星空の中だった。そんな感じだ。

「――あ、目が覚めたのね」

 突然聞こえた声は聞いたことの無い……いや、聞き覚えがあった。

 ついさっきの夢での出来事のような記憶の中で、鎌を振り回してきた人物の声だ。

「………っ?」

 ここは何処だと聞こうとして、声が出ないことを知った。と言うか、口を塞がれてる。ガムテープ……というか紙のようなもので。

 それを()がそうとして、腕が縛られていることを知った。

 両脇に腕をぴったりと付ける形で、布のようなものを巻かれている。両手首も後ろ手に縛られる形で転がされている。ばたつこうとして、両脚もこれまた布のようなもので包まれていることを知った。

(何コレ……夢の続きか? ……それにしても頭が痛い……)

 痛みを感じる時点で夢では無いことを教えられているが、頭の中は現状を悪夢の一種だと確定しようとしている。と言うか、夢で窮屈(きゅうくつ)感満載なんて悪夢以外の何物でも無い。

(まぁ近頃、試験や提出期限やらで圧迫され続けていたからな……)

 ここ最近の状況を思い出して、ふと感慨(かんがい)(ふけ)る。

 現実(ほんとう)を考えると、こんな状況であっても夢から覚めたいと思えないのが、なんとも自分らしい。

 ちょっと苦しいのと寒いのを我慢すれば、何の問題も無い。何より、目の前の星空が綺麗だ。

「ねぇ? もしも~し? まだ寝惚(ねぼ)けてるの?」

 夢にひたろうとしているのに、邪魔な声が耳元で鳴り響く。

「起きているのよね。だったら話が早いわ。ねぇアナタ、騒がないって約束できる?」

 (のぞ)き込んでくる顔は見覚えの無い……いや、あの時鎌を振り回した少女の顔だ。

 白い肌に映える黒髪を風に(なび)かせ、ふっくらとした頬にはあどけなさが見える。丸くて大きな眼が、やや赤味を帯びて見えるのは夢だから、と言うことにしておけば問題ない。

 小首を傾げている姿は、正直ちょっと可愛い。

 前髪を上げているため、見事なでこっぱちが宵闇にも(まぶ)しい。

「ねぇ。聞きたいことがあるから外してあげたいんだけど、騒がれると面倒なの。騒がないって約束できる?」

 もう一度聞かれて、取り敢えず頷いておく。

 本当はどうでも良かった……夢の中でもあるし……。

「じゃあ外してあげる。でも騒いだら今度は猿轡(さるぐつわ)ね★」

 にっこりと笑って少女は、顔に似合わない物騒な言葉を口にした。

 何のことかと考えている間にも、口に貼られていた紙が剥がされる。

(…ちょっと痛い。ヒリヒリする…)

「私はスワコ。澄んだ羽の子。アナタは?」

「……朔一……」

 唇がベタついていなくて良かった。そして声もちゃんと出て、少しほっとする。

 こんな格好で、(おど)されるように名乗っているというのに、頭は割と冷静だった。

「じゃあ朔一。正直に答えてね。アナタ、人間?」

「……他の何に見えるんだよ……」

「ふ~ん。外見は人間だけど中身は悪~い鬼の子なのね。だったら私に成敗されても文句は無いわよね?」

「スミマセン。一応人間です」

「正直で宜しい」

 笑顔の向こうに刃が見えたので、直ちに訂正した。

(何ていうか、オーラがハンパねぇ……しかも変な格好してるし、ヤバイ()かも……)

 見た目は同じ年くらいに見えるが、和服のような格好に地下足袋のような物を履いている。

 明らかに一般人とは思えない、忍者コスプレと言われれば納得できそうだが。

 そんな澄羽子の姿を見ている内に、昔にどこかの本で読んだ、夢とは自己の記憶から脳が作り出した産物である知覚現象の一種だと言う一節が浮かぶ。

 つまり、これが夢だとしたら、目の前の人物の格好も自身の記憶が作り出したものだということだ。

 ……それはそれで、少し残念な気がした。

(どうせならもっとこう、露出の多めな感じが……)

「何、その目」

「え?」

「いやらしぃ感じがする」

 澄羽子の言葉は的確に心の内を言い当てた。

「そんな事は…―――」

 無い・と取り敢えず答えようとしたが、突然地面がぐらりと揺れて、体が宙に放り出される感覚に言葉を失った。

「ぅわぁァアぁぁァ―――っ!!」

 次の瞬間、急速に落下する感覚が思わず悲鳴を上げさせた。

 案外大きな声が出て、これで目が覚めるかも、と頭の隅の冷静な部分が考えていた。

 そうしている内に、絶叫の声と体は夜空に吸い込まれていく。

 一向に訪れない目覚めに、これはさすがにヤバイんじゃないかと思い始める。

 後頭部から下に向かっているため、着地点までの距離が掴めないのがせめてもの救いだ。星空はどこまでも綺麗で恐怖感は(ほとん)ど無い。

 後どれくらいなのかは分からないが、取り敢えず目を閉じておく。風が目に凍みるから。

「――ふぅ。間に合ったわ」

 突如、ガクンと体が空中で止まった。

 うっすらと目を開けると、澄羽子が足に巻かれた布の端を掴んでいる。

 大きな羽の上に乗っているというのは、この際スルーしておこう。

「ねぇ、大丈夫?」

「……頭に血が集まりつつある以外は」

「そう。良かった」

 澄羽子は安堵(あんど)の笑顔を向けた。しかしそれだけだ。上げようとはしてくれない。

 そのまま羽が動き出して、仕方なく自分から声を掛けた。

「あの……ぅ」

「何?」

「もう直ぐ俺、頭が自分の血で破裂しそうなんですけど……」

「そうなの? 人間って凄いのね。私初めて見るわ」

「いや、そこは感心するところじゃなくて……マヂで、苦しい……」

 澄羽子は的外れなことを言って、羽の下を覗き込んだ。興味深げな紅い瞳に、悪意が無いのが余計に困らせる。

 これ以上はさすがに意識が続かず、息も絶え絶えに現状を訴えると、頭がゆっくりと地面に付く感触があった。

 そのまま少し引き摺られたことは、些細なこととしておく。取り敢えず血流が元に戻り始めたから。

 そして、どさっと縛られた体が地に着くのと、ふわりと優雅に澄羽子が着地したのはほぼ同時だった。

 すかさず澄羽子はにっこりと笑顔を向けてくる。無事を確認しようとしていないのは確かだ。

「ちょっと黙って目を閉じててね。お子ちゃまの目には毒だから☆」

 澄羽子は唇に人差し指を当て、目隠しするように朔一の顔に白い羽扇を乗せた。

 何をする気なのかと怪訝に眉を寄せたが、口を開く前に闇を裂く悲鳴が聞こえた。

――ピェエェェィ――!

 甲高いその音は、鳥の鳴き声にも似ていたが、そんな可愛らしい響きではなかった。まさに断末魔の叫びだった。

 突如走った戦慄(せんりつ)に、思わず息を呑む。

 微かに見える視界の端で、澄羽子が背中を向けて立っているのが見えた。

 その手先には苦無(くない)がいくつか握られ、腕を振ってそれらが飛ぶ度、(のど)から振り絞られた悲鳴が上がる。

 声の主が何なのかは判らなかったが、良いものでは無いような気がする。

 予想でも何でも無く、ただ頭の芯が訴える本能のようなもので。

「ん~。これじゃキリが無いわ」

 澄羽子は呆れたように呟いて、目隠し代わりに顔に掛けていた羽扇を拾い上げた。

 そして手首を掴み上げて身体を起こさせると、おもむろにその羽扇を宙に放つ。

 すると羽扇は大きな影を作り、澄羽子はふわりと優雅に、それに飛び乗った。

「バイバ~イ☆」

 手まで振りそうな挨拶を残して、澄羽子は飛立つ。

 こちらはと言うと、目を覚ましたときと同じ様に澄羽子の横で転がっている。

(これ、羽だったのか……)

 自分が横たわった上が、毛足の長い絨毯か何かだと思っていたのだが、先刻顔に掛けられていた羽扇だと分かって、少し驚く。

 どういう仕組みかは分からないが、変わる場面を目にしたのだから認めない訳にはいかない。

 それに、不本意ながら、本当に不本意ではあったが、これが現実に起こっていることなのだと、頭が認識し始めていた。

(これは何と言うか……面倒事に巻き込まれている気がする……)

 その気持ちと同じように、頭の上の方で澄羽子が口を開いた。

「これは……面倒になりそうね……」

 カチャリと金属の揺れる音がして、見上げれば澄羽子の手にはまた苦無が握られていた。

 立ち膝で露わになった左足の太腿には、三本の苦無が付いている。

 顔を上げている澄羽子の視線を追うと、いつの間にかたくさんの鳥のような生物のが群れを成して自分たちを囲んでいた。

 鳥のような。と形容したのは、今まで見たことの無い生物だったからだ。

 両腕が羽の代わりで、まるで蝙蝠(こうもり)のようだ。キィキィとうるさく鳴く口は、鼻と(あご)が突き出た形で牙がのぞいている。さらに宵闇の中では、奴らの飛び出た紅い瞳が鋭く光っている。

「もう直ぐ朝だって言うのに……ご苦労なことね」

 余裕を見せる澄羽子だったが、奴らよりも深い紅色の瞳は剣呑(けんのん)に光っている。

「何モンだよ……こいつら」

「あら、意外と豪胆(ごうたん)ね。奴らの姿を目にしても悲鳴を上げないなんて」

 思わず口から飛び出た言葉に、澄羽子は感心した様子で返しながら、視線を外したその隙に動き出した奴らに苦無を飛ばした。

「まったく……数だけは多いのよね」

 言いながら澄羽子は両の(たもと)に手を入れて、紐に通された幾つもの苦無を取り出した。

 それを振り回すようにして、襲い掛かる奴らを仕留めていく。

 飛び交う血と肉を切る音。風を切る音に紛れて金属の重なる音も立つ。――そして悲鳴。

 どうやら澄羽子の腕は確かなもので、奴らは羽扇の内側には入れずにいる。

 (むち)を振るう要領で奴らの壁を突破して、澄羽子はようやく息をついた。

「ふぅ。いつにも増して数が多かったわ…苦無(コレ)も高いのに。……ねぇ、まさかアナタ?」

 苦無(くない)を仕舞いこみながらぼやいていた澄羽子が、何か思い当たった様子でこちらを見た。

 その目の鋭さに、『奴ら』を呼んでいるのではないかと疑われているらしいことに気付く。

「ち、違うぞ。俺にあんな知り合いはいない」

「それは分かっているわ。だってアナタ、人間の筈だもの。でも……」

「な、何だよ」

「まさかとは思うけど、念のため封をしておくわ」

「ちょ、何?!」

「お互いの為よ。解って」

「何が―――モゴっ」

 最後の方は言葉にならなかった。

 再び口に紙を貼られて、それが封印の札だと知ったのは自分の声が出せなかったからだ。

 そして「オマケもしておくわね」と言いながら、澄羽子は体にも布を巻きだしたのだった。

 さらに窮屈になりながら、自分ではどうしようもないことを悟る。

 再び痛み出した頭を気持ちでは両手で抱えながら、眩暈(めまい)を覚えるように瞼を閉じた。


 


 明るい光が、瞼の中に広がった。

 眩しさに目を開けると、山間から朝日が昇る姿が見える。

 睡眠不足の頭にもはっきりと見えるその空が、昨夜自分に降り掛かった出来事が現実であったことを伝えた。

(ああ、まだ縛られたままな、俺)

 もう一度目を閉じようとしたところへ、声が聞こえる。

「この辺なんだけどな~。もう少し降りてみるしかないわね」

 澄羽子の言葉通りに、羽扇が下降する。そこで杉の木が並ぶ丁度真上を飛んでいることを、初めて知った。山々が連なる風景からも、何処かの山の中だろうと思う。

(いやいやいや……おい待てよ。俺の住んでいた近くにこんな山は無かったぞ)

 呑み込みかけた現状に、再び頭痛を覚える。

 口を覆われているから声を出すこともできないから、今は黙っているしかない。

 そんな遣る瀬無い気持ちを他所に、澄羽子はきょろきょろと辺りを見回している。

「ねぇ、起きているんならアナタも探して。私の友達なんだけど……」

 この状態で探すのを手伝えとは、随分無茶なことを言う。

 それでも律儀(りちぎ)に、首と視線の動く範囲で、澄羽子に(なら)って辺りを見てみる。

 少し進むと、視界の端で木々の間に黒髪が揺れた。

「あ、居た」

 同じく澄羽子もその人物を見つけたらしく、羽扇が下降する。

 近付くにつれて、黒く長い髪に緑色の忍び装束を身に(まと)った少女が見えてきた。

 真っ直ぐな髪も、キリッと切れ長の目も、姿勢の良い佇まいも、日本人形のような姿だ。

 少し冷たさを感じさせるが、確かに整った顔立ちだと思う。

 ただ、澄羽子の友達だと言われると、正直なところ違和感がある。

 ここまでの短い付き合いではあるが、澄羽子のことはよく言えば明るい活発な子。はっきりと言えば自己中心的で猟奇的な子だと思っている。|(既に縛られているので。)外見は物静かそうな顔をしているのに、中身は至って行動派だ。

 そんな澄羽子と、日本人形が問題なく友好関係を築いているのか疑問に思える。

 そもそも、澄羽子の交友関係に口出ししている場合じゃないのだが。

 ふたりの様子からそんな感想を抱いている間にも、目的の人物の立つ杉の木の側で羽扇を停めると、澄羽子は軽やかに地面に降り立った。

「何、ソレ」

 ぞんざいな扱いだった。

 初めて会う澄羽子の仲間は、開口一番にそう言った。

(まぁ誰だってそう思うよな。正直な感想かもしれない。口も体もぐるぐる巻きで、ミイラかってね……俺は笑えねぇけど)

「私の下僕」

 ――うをぉい!

 心の中でつっこむが、澄羽子は平然として話を続ける。

「何でか知らないけど、真っ白な姿になっちゃったの。それで、長老様に聞こうと思って連れて来たの」

「でもソレ、人間じゃない」

「そうなの。だからちょっと困っちゃって」

「だったらその辺に捨ててくればいいじゃない。人間なら人間に助けてもらえばいい」

「でもでも、こんな姿だし…それにちょっと面倒事も付いちゃって」

「面倒事って…――」

 澄羽子と話していた人物は、突然言葉を区切ったと思うと鋭い視線を走らせて、左腕を横に払った。

 見ればいつの間に手にしたのか、左手には槍の柄が握られている。

「コレ?」

「そう、それよソレ。お蔭で来るのも遅くなっちゃったの」

 びちゃっと濡れた音を立てながら、ソレは地面に打ち付けられた。

 ここに来るまでに何度か現れた奴らに似ている。原形を留めていないから、憶測だ。

 あまりまじまじと見ているのも(はばか)られて視線を逸らす。その横で、ふたりの話は進んでいた。

「はぁ……。事情は長老様の所で聞くわ」

由翬子(ゆきこ)も一緒に行ってくれるのね。良かった~☆」

「何を暢気(のんき)なこと言ってるのよ、さっさと行くよ」

 ……察するに、どうやら拉致犯が二人に増えたらしい。

 冷静な状況分析をしながら、()巻きの体は再び宙に舞った。



 羽扇に揺られて山の中に入って行く。朝日を受ける木々の間を飛んでいるのはミイラ状態の体だけで、澄羽子とその友人・由翬子は枝を跳び渡りながら、黙って先を急いでいた。

 心なしか、澄羽子から緊張感が引いているように見える。

 先刻の早技を目にしているから、由翬子が腕の立つことは分かる。

 その友人との合流が襲われる危険度を(やわ)らげてくれているのだと、何となく思う。

 それに由翬子も、初めは冷たい印象だったが、澄羽子との遣り取りからするとちゃんと友達関係ではあるらしい。

 そしてどうやら、自分の現状を聞くために「長老様」の元を尋ねるらしい。

 訊きたいことは山ほどあるが、口を封じられているので今は黙って付いて行く。……しかできないから、とも言う。まさに、されるがままだ。

 第一、羽扇に乗せられて身動きの取れないよう縛られていては、どうすることもできない。

 そろそろこの状態から解放される方向を望みたい。腹も空いてきたし、咽も渇いた。

(敵方に捕まった捕虜ってこんな感じなのかな……ははは)

 などと暢気なことを考えられる頭が、やはり自分らしいと思った。

 乾いた笑いも、流れる景色も、ついでにいうと経っている時間の長さも、『夢』の一言で片付けたい。

 脳内の七割方が、現実感を伝えるのを押し込めるのも、さすがに限界に近かった。

 それから少しして、ふたりの足が止まった。

 目の前には風が吹けば崩れてしまいそうな外観の山小屋がある。

(まさかこんな所に長老様が住んでいるんじゃない、よな……?)

 浮かんだ不安を肯定するように、澄羽子が入り口らしい木戸を叩いて声を掛けた。

 ――どんどん、どんどん――

「長老様~。ご在宅ですよね、長老様~」

 中に人が居るのは前提らしい。

「長老様~。澄羽子です、長老様~」

「無駄に広いからな、あの家は」

 横から聞こえた由翬子の言葉は、今目の前にある物の容積を裏切るものだった。

 澄羽子の声は、目の前の小屋の中に呼びかけるには大袈裟なくらい大きなもので、数軒先にまで聞こえるんじゃないかと思うくらいだ。

「長老様~。そろそろ開けて下さい~。…出ないと、扉をぶっ飛ばします」

 ワントーン下がった澄羽子の声は、不穏な言葉を告げた。

 長老様を(おど)すなんて、やっぱり誘拐犯は悪人だ。というか、澄羽子の行動は野蛮と紙一重過ぎだ。

 その上、類は友を呼ぶということわざを目の当たりにする。

「さっさと起きて下さい、長老」

 言いながら、由翬子は木戸が(きし)むほどの力で戸を蹴り上げた。

 それが決め手になったのか、それともやっと声が届いたのか、木戸の向こう側で物音がした。

「長老様?」

「何用じゃい。こんな朝方に…」

 幾度目かの声掛けに、ようやく応答があった。

 口調も、掠れた声も『長老』を思わせた。

 しかし木戸を開きながら覗かせた顔は、眠たげに瞼を(こす)る小学生くらいの少年だ。

「長老様っ」

「また酒か。この飲んだくれめ」

(ええ!? 子どもだろ、見るからに。どんな目ぇしてんだアンタら……)

 ふたりの口から出た言葉に耳を疑う。

 目の前の少年は、長老と呼ばれるには不似合いだし、酒なんてもっての外だ。

 しかしそんなことを考えているのは自分だけらしい。

「一大事なんです!」

「どうしたんじゃそんなに慌てて……。おや、人間じゃないか。おかしな氣を放っとるが」

「コレのことで、澄羽子から話があります」

「ほぅ。澄羽子の仕業(しわざ)かぃ」

「えっとまぁ…ちょっとした手違いで…」

「まぁ中に入れ。玄関先で話せる物でもなさそうだしのぅ」

「ありがとうございます、長老様」

「失礼します」

(本気でこの人が長老なのかよ? もぉ外見判断っつうか、人相判断なんかアテにできねぇな……)

 少年姿の長老に導かれるまま、屋敷の奥へと入って行く。

 外から見たときには、そんなに広い様子はなかった。むしろ今にも倒壊しそうなほどで、古い山小屋のようであったのに、一歩入れば雰囲気が変わった。

 敷居を跨ぐと石の敷き詰められた玄関があり、その先に続く木張りの廊下は横に人三人並んで歩けるくらいの幅がある。

(実は凄いのは玄関と廊下だけで、直ぐに行き止まりだったりして)

 上手く呑み込めない頭はそんなことを考える。

 だがそれも直ぐに裏切られ、廊下を進んで縁側を歩く頃には理由を考えることも面倒になっていた。

 縁側から見えた庭先は、森の中の日本庭園よろしく整然としており、むしろ玄関先で見たあの掘っ立て小屋こそが、別に造り付けられた物のようだ。

「茶は出んぞ」

「あ、どうぞお構いなく」

 通された一室で、和やかな(社交辞令とも言える)会話が交わされた。

 ここまでの様子で澄羽子には期待していなかったが、長老も捉えている事態の大きさが、当人とは異なっているらしい。

(なんか。流れている世界が雄大過ぎやしないか、この人ら)

 『人』かどうかも怪しいのだが、既にそんな些細なことはどうでもよくなってきている。……というか呑み込まれてる形だ。

 大自然に育てられると、こんな感じなのかな。などと思い始めていると、長老|(らしき少年)が口を切った。

「んで、どうしたんじゃ一体」

「それがですね…話せば長くなるので、要点だけでも宜しいですか?」

「ま、話してみぃ」

「はい。実はこの人間が、突然白くなってしまったんです」

「…………………それだけか?」

「はい。要点としては」

端折(はしょ)りすぎじゃ! んなことは見れば分かる。そうなった過程を話さんか!」

 要点というより結果だけを告げた澄羽子に、長老の激が飛んだ。

 良かった。ちょっとはマトモな部分が見えて安心する。

 澄羽子はそれを受けて、バツが悪いのか、言い難そうに両手をモジモジさせながら上目遣いで答えた。

「え、えっとぉ……。私の鎌で脳天をぶっ刺したら途端に光が湧いて、見たら真っ白だったんです。その後何度かやり直してみたんですけど、全然変わらなくて……」

 どうりで頭が痛いと思った。何度も脳天に刺すなんて…いくら本人に意識がなくても(ひど)過ぎだろ。やっぱり行動が外見を裏切る奴だ。

 斜め前に座る長老は、それを聞いて何か考えるように眉根を寄せて、声を低くする。

「まさかその鎌とやらは、『()』を集められる代物か?」

「そ、そうです。一〇八の『清廉(せいれん)()』を集めた私の鎌です」

「本気だったのか……まさかそこまでするとはのぅ……」

 驚きと困惑の入り混じる表情が長老の顔に浮かぶ。そして深く瞼を閉じたまま口を開く。

「それで、そこの(ぼん)が一〇八人目か」

「いいえ。一〇九人目です」

「……ど、どうして、必要数を超えて」

「だって、多い方が良いかと思ったので。それだけ近くなるかなって。えへ☆」

「……こんの…莫迦者(ばかもの)!!」

「ひぃ…っ」

 長老が卓を両手で叩いて立ち上がった。その勢いに気圧されて、澄羽子の口から短い悲鳴が上がる。

「お前に必要じゃったのは一〇八の『清廉の氣』じゃろ! それを、欲張るからこんなことになるんじゃ、莫迦者!!」

「ご、御免なさいぃ!」

 卓に片足を上げてまで怒気を露わにする長老に、澄羽子は頭を抱えて謝った。

 びくびくと震える背中は、まるで猛獣の前に晒された仔兎のようだ。

 外見は少年だが、その覇気はホンモノだった。最初の一喝には、こちらまでビビッてしまうくらい。

「――それで、元に戻す方法はあるのですか?」

 場違いなほど静かな声音は、きちんと正座をしたままの由翬子である。

「フン……っ。取り敢えず、その坊を解放してやれ」

 長老は由翬子を一瞥しただけで、問いには答えず縄を解くように言った。

 やっと自由になるのかと安堵しかけたところに、澄羽子がすかさず口を挟む。

「待ってください。それを外すと大変なことに!」

「分かっておる。結界は既にしておるわ」

「でも、本当に凄いんですよ!」

「長老に失礼でしょ。いくら飲んだくれていたって、あんな小鬼くらい――」

「あ、待って由翬子!」

 澄羽子は慌てているがふたりは意にも介さず、由翬子が近付いて来て首輪に手を掛けた。

 その瞬間、身体中の縄が眩い光とともに弾け飛ぶ。

 自分の体に何が起こっているのかは分からなかったが、急に温かな空気に包まれていくのを感じた。

 全身の拘束が解かれ、ようやく身体を動かせるようになった喜びを胸に、腰と背中を伸ばして肩や腕を回してみる。長時間同じ姿勢だったせいで節々が疼くように痛んだが、解放感がそれらに勝った。

 そして血の巡りと反比例するように、体を包む光は収束を迎えた。

 ふと見れば、驚愕に目を丸くする由翬子と額に手を当てる澄羽子、感心した様子の長老の姿が目に入る。

 しかし何か声を掛けようとした途端、鋭い視線が六つ光り、由翬子が手に槍を持って向かって来た。

 避けることなど到底無理な速さで、両腕で顔を覆うその右横を由翬子は駆け抜ける。

 同時に左頬を石のようなものが掠め、次には首と胸に衝撃が走った。

(あぁ、また押さえ付けられた……)

 澄羽子の両手で咽元と心臓の真上を押さえられ、頭も背中も畳の上に戻った。

 馬乗りになった澄羽子は何やら呪文のようなものを口にして、それに呼応するように、首と両腕を縛る呪布が巻かれて再び拘束されてしまう。

「……ふぅ。これで一先ずは安心ね」

 澄羽子は額の汗を拭いながら離れた。

(短かったな、俺の自由)

 感慨深くなりながら、溜め息を零す。

「まさか、これ程とは思わなんだ」

 頭の横辺りから聞こえた声は、腕組みをしながら庭を眺める長老のものだ。

 何を見ているのかと首を巡らせ顎を上げて庭の方を見ると、其処には道中の短い時間で何匹も目にした羽の無い鳥のような獣が数匹、討ち捨てられていた。

「一体何者なのですか、ソレ」

 屋根の上から降り立つ由翬子の開口一番はそれだった。

 その疑問はこっちだって聞きたいものだ。

 何故自分はこんな体になっているのか。どうして身動きを封じられているのか。それに横たわった自分に何故三人は珍獣を見る視線を向けてくるのか理由が聞きたい。

 自分が理解できる内容を話してもらえるのか不安ではあるが、頭に響く痛みが現実を訴えているのならば聞かずにはおれない。

 後頭部もかなり痛い。

 慰謝料はふんだくってやりたいと思う。……払ってくれればだが。



「…――つまり、集めた『清廉の氣』が坊の中に取り込まれた。と言う訳じゃな」

「そうだと思います。鎌の中も空っぽでしたし……頑張って集めたのに」

「欲張るからじゃ。それで『清廉の氣』は取り出せなかったんじゃな?」

「はい。……できれば取り戻したいんですけど……」

「鎌が使えんようじゃ、仕方あるまいよ。諦めるんじゃな」

「えぇー。私の三年の苦労はどうなるんですか!?」

「知らん」

「そんな一言で私の気持ちは治まりません!」

「問題はお前の気持ちどころじゃないんじゃ。坊の方をどうにかせんと……」

「そうですよ。『清廉の氣』が入っているのは確かなんですから、それを取り戻…じゃなかった、取り出してあげれば、この子だって元に戻るのでは?」

「理屈ではそうなんじゃがなぁ……何で取り出せるというのか……」

「そうですね。ここまで変態してしまうくらい影響があるということは、馴染んでいるとも取れますよ、長老」

「ちょっと由翬子、希望が弱まるような事を言わないでよ」

「でも実際そうなんだから、認めなさい」

 茶卓を囲んで三人――澄羽子と長老と由翬子は、昨夜の澄羽子の行動と事の顛末を話し合っている。

 要点だけ掻い(つま)んでみると、どうやらこの体には澄羽子が集めたという『清廉の氣』とやらが入っているらしい。

 澄羽子は『清廉の氣』を取り戻したいらしいが、現時点では無理な様子。そして由翬子の話によると、その『清廉の氣』が朔一(おれ)に馴染んでいるようで、澄羽子的にはマズイことらしい。

 ここまでは大体理解した。『清廉の氣』がどんなものかは解からないが、澄羽子にとっては大切なもので、未練が強いというのも分かった。だが三人とも重要なことを忘れている。

 巻き込まれた朔一本人(おれ)に対する説明と、本人がソレを望んでいる現実を。

「一先ず、俺の話を聞いてください」

 ふたりに突き付けられた現実に、目の前のややいじけ気味な澄羽子を見なかったことにして、極力丁寧に申し出た。

 ここまで黙らされていたためか、その声は少ししわがれて険を含んだものだ。

「あ、喋った」

「何だかご機嫌ナナメね」

 突然の申し出に、由翬子は意外そうな声を発した。その横で澄羽子はこれまた意外そうに小首を傾げた。

 澄羽子のことは脇に置いて(相手にすると時間が掛かりそうだから)、黙っている長老に向き直る。

「俺は、普通の人間です。喋れもするし、皆さんの会話も何となく解かります」

「ほぅ。それは良かった。坊の名前は?」

楠居 朔一(くすい しゅういち)です」

「ふぅん。珍しい字を持っているのね」

「え、字?」

「そう。(ついたち)に一でシュウイチなんて、字が重なっているんだもの」

「俺、自分の字なんて……」

「ああ、まだ話しとらんのか。澄羽子の特殊能力でな、その人物の実名を聞くとその名が本人の体に刻まれて()えるんじゃ」

「えぇ?!」

「昨夜は見えなかったけど……人間は姓も持っているから、それでかしらね」

 澄羽子はのほほんと笑って言った。

(んな事って……いや、そんな能力がどうとか言うのは、この際置いておこう)

 折角風向きが自分の方に流れているのだから、余計なことで曲がらない内に聞きたいことを聞いておこうと考え直す。本名が体に刻まれて見えるなんて、そんな些細な事……でもないが、他に重要なことがあるのだ。今は。

「えっと、それで貴方たちは…――」

「私は澄羽子。一度で覚えて欲しいわ、ご主人様の名前なんだから」

「あたしは由翬子だ」

「儂は烏樟(うしょう)の長老と呼ばれておる」

「ご丁寧にどうもありがとうございます」

「いやいや。挨拶と名乗りは礼儀のひとつだからな」

 長老はからからと明るく笑いを付けた。

(だがちょっと待て。今、俺の眼がおかしかった……)

「澄羽子はともかく、何で由翬子さんの名前まで分かるんだ?」

「「えぇ!?」」

 ぽつりと零れた疑問に、澄羽子が声を上げ、重なるように意外にも長老も眉を顰めた。

「今、何と言った?」

「何で私は呼び捨てで、由翬子はさん付けなのよ?」

 毎度のことだが、澄羽子の言葉は放っておく。

 長老も同じ様に澄羽子を押し退けて、身を乗り出しながらこちらの眼を覗き込んだ。

「見えたのか、由翬子の名が?」

「はい。体の前辺りに、ぼぅっと浮かび上がる感じで…」

「そりゃあ…――」

「澄羽子の力と似ているわね。同じと言っても良いくらい」

「まさか普通の人間が、そんな能力を持っとるなど聞いたことがないぞ」

「多分、澄羽子の感化に因るものかと思いますよ」

「私の?」

「そう。さっき呪布を解いた時に光の中で感じたの。アレは間違いなくアンタの氣よ」

「アナタ、私の『清廉の氣』だけじゃなく私の氣まで奪ったの?」

 見に覚えのないことで、澄羽子に睨まれた。

 ここでも澄羽子のことは横に置いておこうと心に決める。話を進ませるための必然だ。

「どういう事ですか、由翬子さん」

「そのままの意味よ。アンタの体内には澄羽子の氣……能力も混ざってる。ほんの少しだろうし、澄羽子の見鬼(けんき)とは比べ物にはならないだろうけど」

「ケンキって何ですか?」

「鬼を見抜く能力の総称。その一部が、実名を見ること。これは、人間が鬼を見たりする霊視とも少し違って、対象の本質を見抜くことができる珍しい能力」

「そ、それで、その『見鬼』能力の一部が俺の中にも入っているんですか?」

「飲み込みが早くて良い。その通りよ」

 教師のような言い方で、由翬子は肯定した。

(相手の本質、実名が見えるなんて……まぁ日常に差し(さわ)りは少なそうだけど、邪魔っぽい)

 名前を忘れた相手には助かるかもしれないが、他に何の役に立つのかイマイチな能力だ。

 救いとしては、今見ている限りで言えば、その文字も時間が経つと消えるものらしい点だ。見る度に字がチラつくというのは、正直ウザイ。

「だが、一番の問題は外見じゃな」

 取り込んでしまったものは仕方がないと、納得し始めた頭にさらに衝撃的な言葉が届いた。

「そうですね。普通の人間には到底見えませんから」

「……私だって、こんな姿じゃなきゃわざわざ連れてきたりしませんよ~だ」

 これまで放って置かれたため、完全に拗ね始めた澄羽子が由翬子の言葉に補足する。

 要は、夜中に羽扇に乗せて、布でぐるぐる巻きにして、口まで封じて(思い返すと結構散々な待遇だ)まで連れ出さなければならないほど、外見が常人離れしているらしい。

 思いも掛けない流れから自分で立てた予測に、頭が真っ白になる。

 これまで澄羽子も由翬子も長老も、僅かな驚きこそ見せたものの普通の人に接する様子だったから気にも留めなかったのだが、そんなに変わってしまっているのだろうか。

 見たくない気持ちを押し込めて、声を絞り出した。

「か、鏡か何か貸してください」

「はい。乙女の必需品、手鏡を貸してあげる」

 澄羽子が合わせの間から取り出した手鏡を差し出した。

 紫の縮緬地(ちりめんじ)(ふた)を開けてもらい、いざ自分と御対面。

 ………。

 暫し絶句。

 次いで――

「ナンじゃこりゃぁあぁぁぁ―――っ!」

 食い入るようとは正にこのことだ。

 瞬きを繰り返し、何度も何度も鏡に映る姿を見返す。

 当然、中身が変わることはない。

「な、なななななななななn…――」

「なんじゃ、姿の事も教えとらんかったのか?」

「私、何度か言いましたよ。真っ白になっちゃったって」

 眩暈を覚えるその向こうで、澄羽子が「何を今更」と平然と呟いている。

 消え掛けた意識がその一言で復活した。

「ちょっと待て。俺は一言もそんな事を言われた覚えが無いぞ!」

「あら、そうだったかしら。でも、皆知っていることよ?」

「そりゃ見れば直ぐ分かる外見的特徴だからだ!」

「人間の外郭(がいかく)は無事なんだから良いじゃない。別に妖魔(ようま)になっている訳じゃないんだし」

「こんな真っ白な頭で、眉も(まつげ)も肌も白くてそんな事言えるか。十分人間離れしてんだろ!」

 今にも胸ぐらを掴む勢いで澄羽子に詰め寄るが、微かに眉根を寄せただけで彼女は平然と応えた。

 油を注がれた気分で血管の浮き出るこめかみを震わせて、もっと言ってやろうと口を開き掛けたのだが、それよりも先に澄羽子が言った。

「肌はもともと白かったわよ。それに今の姿、とってもステキよ☆」

 満面の笑みを目の前に浮かべられて、その上褒められたとあれば……怒りは一気に(しぼ)んだ。

 思い返しても、これまでの一七年でこうまではっきりと言われたことは無い。モヤシっ子とまで言われた人間が、面と向かって外見賛辞の言葉を受けるなんて、隕石(いんせき)にぶちあたるよりも衝撃的な事件だ。何よりも、(きらめ)くその瞳は本人の感情を裏付けて、言葉を嘘とは思えない。

 出掛かっていた言葉が、勢いを失って胸の中に消えた。



 いつものように目が覚めて、いつものように起き上がる。

 そんな日常。そんな毎日。そんな退屈。

 全てをぶち破り、俺は初めて脳天を突き刺された。空を飛んだ。妖怪に遭った。

 そして初めて女の子に「ステキ☆」と言われた。

 でも俺、体が真っ白になりました(マル)。


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