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星の解読者  作者: 恒星
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帝都へ

私の誕生日はあっという間にやってきた。


「おはようございます、お父様」

「おはよう、リリィ。そして、十歳の誕生日おめでとう」

「ありがとうございます」


屋敷で誰かとすれ違う度に祝われ、一生分のおめでとうを聞いた気分だ。中には泣き出す使用人もいて慰めるのに苦労した。


朝食を終えると私はメイド五人がかりでお風呂に入れられ、ドレスを着て軽くメイクをして髪を整える。この日のために何度も協議したドレスは輝石の儀のために作られたもので、大聖堂に相応しい清楚な作りだが、生地にはびっしりと細かい刺繍が施されていて見るからに高価だ。


「お嬢様の髪は本当にお綺麗ですね」


メイドのアンナが言った。私は鏡の中の自分を眺める。濃紺の髪と同色の瞳。髪の毛は毛先にいくほど銀色になっていって、十年間見ていても慣れない不思議な髪色だ。中学生なら赤い髪や瞳のザ・悪役令嬢といった見た目にしそうだが、私が見た目を設定しなかったからこうなったのだろうと思う。


濃紺の髪の毛はジェミネール家の特徴だそうで、肖像画を見ると確かにほとんどの人が同じ色だ。私のように銀色が入っている人はいないが、父が言うには私の曾祖母が銀髪だったからその色が入ったのだろうという話だ。曾祖母は皇族で、銀色の髪は皇族の特徴だ。そんなトンデモ先祖返りがあるものか、と思うがこの世界は中学生が作ったファンタジー世界なのだ。


それにしても、血縁関係もそうだが、ジェミネール家は皇族と強い繋がりがある。これから嫌でも関わり合いになることが増えるだろう。


「お嬢様、どうかされましたか?浮かないお顔ですよ」

「そうね、少し緊張してるの」


まさか皇族に会いたくないとは言えず笑って誤魔化す。


「お嬢様が心配されることなんて何もないですよ」

「そうですよ、お嬢様。きっと王都中の男性がお嬢様の美しさに釘付けになります!きっと皇子様だって…」

「ローラ、あんたは黙ってなさい」


そんなこんなで磨き上げられた私は先程のローラの言葉もあながち間違いではないと言えるくらいの美少女だった。前世の私がリリアネヴィラの見た目を設定していなくてよかったと心から思う。一歩間違えれば私は社交界で伝説の醜女と噂されていただろう。


「お父様、どうやって王都に行くのですか?」


両親とカシエルに散々褒めそやされた後私は尋ねた。ジェミネールの直轄領自体は王都の隣にあるが、領地はとても広大で今いる屋敷はその中心近くにある。馬車で行ってもとても間に合わないだろう。


「リリィは行ったことがないけれど、ゲートで王都のタウンハウスに行くんだよ」

「ゲート...」

「ちょっと気持ち悪くなるかもしれないけれど、一瞬だから大丈夫よ」


そんな話をしながら父の書斎に入る。ゲートというと、きっと瞬間移動ができる転移魔法なのだろう。初めて体験する魔法にワクワクしている私に苦笑しつつ、父は控えていた執事長のヴァルモンに部屋から出ていくよう言った。


「ゲートを使えるのは皇家に認められた貴族だけで、それ以外の人にはゲートの場所を知られてもいけないんだ。犯罪に利用されれば大変なことになるからね」


そう言って父は衣装室に続く扉を開けた。しかし、そこは小部屋になっていた。


「どうして?これも魔法なの?」

「アカデミーに入学すればリリィも習うよ」


小部屋といってもそれは公爵家基準で、前世で私が一人暮らししていた部屋よりも大きい。四人で入っても余裕があった。床にはアニメで見たような青く光る魔法陣が浮いていて、それを見た私の不安や憂鬱が全て吹き飛んだ。前世の十一歳の誕生日、どれだけ手紙を運んでくるフクロウを待ちわびたことか。私は昔から魔法やファンタジーが大好きだった。


「リリィったら大興奮ね。カシが初めて剣技を見た時もそんな顔をしていたわ」

「母上、僕はこんな間抜けな顔しません」

「兄様はいつも間抜けな顔だものね」

「ほら、そろそろ行くから喧嘩しない。アルカ・ヴォカ」


次の瞬間、父の手にはステッキが握られていた。


「す、凄いわ!お父様すごい!」

「リリィ、これはアカデミーに入って一番に習う魔法だからそんなに褒められると恥ずかしいよ」

「そうよ、お母様もできるわ」

「お母様もすごい!」


私が興奮して言う間、カシエルは呆れ顔だった。


「これしきの魔法でそんなにはしゃぐなんて…」

「あら、でも兄様はまだ使えないのではなくて?」

「僕だって来年の今頃にはとっくに使えるようになってるさ」


魔法陣が輝きを増しているのに気づいた私は口を閉じてじっとそれを見つめた。青かった光がどんどん金色になっていく。とても幻想的だ。


「ポルタ・ルクス」


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