「地味で冴えない婚約者」と公開処刑された私ですが、実は祝福の魔力を持つ唯一の存在でした。今さら戻ってきてと言われても、もう遅いですわ
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この作品は生成aiを用いて執筆を行なっています
あらかじめご了承の上、お楽しみください
「お前との婚約は、本日をもって破棄する」
王太子殿下の婚礼式場──黄金の燭台が幾重にも連なる大広間に、ヴィクターの冷たい声が響き渡った。
数百人の貴族たちが一斉にこちらを振り返る。絹のドレスが擦れる音、押し殺した囁き声。それらすべてが、私──リリアナ・フォーレストに向けられている。
(ああ、やはりこうなったのね)
三年間、尽くしてきた。彼の出世のために自分の手柄を譲り、影で支え続けた。その結果がこれだ。
「お前のような地味で冴えない女より──」
ヴィクターは隣に立つ蜂蜜色の髪の女性、セレナ・ヴァルモンの腰を引き寄せた。
「華やかなセレナの方が、侯爵家に相応しい」
セレナが翠の瞳を潤ませ、申し訳なさそうに私を見る。
「ヴィクター様……私、こんなつもりでは……リリアナ様、本当に申し訳ございませんわ」
その演技の完璧さには、同僚として三年見てきた私でさえ感心する。
(あなたが盗んだのは、私のアイデアだけじゃなかったのね)
周囲から嘲笑が漏れる。「やはり」「身の程知らず」「侯爵家には不釣り合いだった」──聞き慣れた陰口が、今日は堂々と耳に届く。
ヴィクターの母、クラリス侯爵夫人が扇で口元を隠しながら、満足げに頷いた。
「ふふ……ようやくですわね。最初から、あの娘では釣り合わないと申し上げていましたのに」
(三年間、あなた方のために何をしてきたか、本当に覚えていないのね)
私は静かに左手の婚約指輪を外した。
細い銀の輪。ヴィクターが「これで十分だろう」と言って寄越した、装飾もない安価な品。私の価値を、彼は最初から見ていなかった。
「承知いたしました」
私は指輪を彼の手に押し付けた。
「……は? それだけか? 泣いて縋りつくとでも思っていたが」
ヴィクターが眉を顰める。私は彼を真っ直ぐに見つめ返した。
「どうぞお幸せに」
それだけ告げて、踵を返す。
背後でセレナが囁くのが聞こえた。
「まあ、なんて冷たい方……三年もお傍にいながら、涙のひとつも見せないなんて」
ヴィクターが吐き捨てる声も。
「あれが本性だ。三年も騙されていた。やはりセレナ、お前を選んで正解だった」
(騙していたのは、どちらかしら)
黄金の大扉を押し開け、私は振り返らずに歩き出した。
三年間の献身が、たった一言で否定された。
けれど不思議と、涙は出なかった。
心の奥底で、何かが静かに、しかし完全に閉じる音がした。
(もう、二度と振り返らない)
◇◇◇
王都の片隅にある小さな宿屋。私は荷物をまとめながら、この三年間を思い返していた。
(結局、私は何だったのだろう)
最初の出会いは、ヴィクターが私の実家に出入りするようになった頃だった。フォーレスト家は爵位こそ低いが、宮廷との太いコネクションを持つ。彼の目的は最初から、私ではなく私の家だった。
「君は控えめで良い。余計なことを言わない女は好ましい」
それが彼の褒め言葉だった。
私は王都随一のウエディングプランナー事務所で働いていた。師であるマーガレット・オールダム女史のもと、数々の婚礼を成功に導いてきた。
けれどヴィクターは、私の仕事を「裏方の雑務」としか見なかった。
「今日も遅くまで式場の飾りつけか? 侯爵家の婚約者が、使用人のような仕事をするものではない」
彼は私の企画書を見ようともしなかった。私が徹夜で考えた演出を、私が心を込めて選んだ花の意味を。
思い出すのは、半年前のこと。
大貴族ウィンターソン伯爵家の婚礼を任された時だった。新婦の希望は「亡き母が好きだった、もう手に入らない幻の青薔薇を式場に飾りたい」という難題。
私は三週間かけて国中を探し、最後の一株を見つけ出した。魔法で増殖させ、式場を青い薔薇で埋め尽くした。新婦は涙を流して喜び、「一生忘れません」と私の手を握った。
しかし報告書には、セレナの名前だけが記されていた。
「リリアナ様、私が代わりにご報告しておきましたわ。あなた様はお忙しいでしょうから」
彼女はそう言って微笑んだ。純粋に善意だと、あの頃の私は信じていた。
(馬鹿だった)
今なら分かる。彼女は最初から、私のアイデアを盗み、手柄を横取りするつもりだった。そしてヴィクターには「リリアナ様に意地悪されている」と涙ながらに訴えていたのだ。
「祝福の魔力」──母から受け継いだ、この力のことを知る者は少ない。
私が心から祝福した婚礼には、永遠の幸福が約束される。それは噂として囁かれていたが、誰もその力が私自身に宿っていることを知らなかった。
マーガレット師匠だけが真実を知り、私を守るためにあえて秘密にしてくれていた。
「お前の力は、お前自身を幸せにするために使いなさい」
師匠はそう言った。
けれど私は、その力をヴィクターの出世のために使い続けた。彼の関わる社交の場を祝福し、彼の評判が上がるよう陰で支えた。
(愛していると、思っていた)
窓の外で、夕陽が王都の尖塔を赤く染めている。
明日、私はこの街を去る。マーガレット師匠には既に辞表を出した。師匠は何も言わず、ただ「どこへ行っても、お前は大丈夫だ」とだけ告げてくれた。
(さようなら、私の三年間)
荷物を閉じる音が、やけに大きく響いた。
◇◇◇
それから二週間が過ぎた。
私がいなくなった王都で、異変が起き始めていた。
「どういうことだ、セレナ!」
ヴィクターの怒声が、侯爵家の応接間に響き渡った。
「ウィンターソン伯爵家の令嬢が婚約破棄された! お前が手掛けた婚礼だったはずだ!」
セレナは青ざめた顔で首を振る。
「わ、私のせいではありませんわ! あの式は完璧だったはず──」
「完璧? 三組だぞ! お前が担当した婚礼のうち、三組が既に破談している!」
侯爵夫人クラリスが扇を握りしめる。
「それだけではありません。王太子殿下の婚礼も……延期になるとの噂が」
「馬鹿な」
ヴィクターは信じられないという顔で呟いた。
しかし噂は事実だった。
王太子の婚礼準備を引き継いだセレナは、何一つ上手くいかせることができなかった。花は枯れ、装飾は崩れ、招待状には誤字が並ぶ。彼女が持っていたのは、盗んだアイデアの断片だけ。それを形にする力も、祝福を与える魔力も、彼女にはなかった。
───
王城の謁見の間。
マーガレット・オールダム女史が、銀髪を高く結い上げた厳格な姿で王太子の前に立っていた。
「過去十年分の記録を洗い出しました。成功した婚礼のすべてに、リリアナが関わっています。セレナ嬢が単独で担当したものは──すべて失敗に終わっている」
「……すべて、だと?」
アーサー王太子が息を呑む。
「私が十年かけて育てた才能を、あなた方は三年で潰した。いいえ──追い出したのです。隣国に」
「馬鹿な! リリアナの功績だと? あれはセレナの──」
傍らで聞いていたヴィクターが叫ぶ。しかしマーガレット女史は冷たく遮った。
「祝福の魔力を持つ唯一の人材を、あなた方は自ら手放した。この国の婚礼は、もう二度と祝福されることはないでしょう」
ヴィクターの顔が、蒼白に染まった。
◇◇◇
同じ頃、私は隣国アルヴィーン王国の国境にいた。
「リリアナ・フォーレスト嬢ですね」
馬車を降りた私を出迎えたのは、赤毛にそばかすの若い従者だった。
「ようこそアルヴィーンへ! 僕はフィン・ベケット、エドワード様の従者です。長旅でお疲れでしょう、さあどうぞこちらへ」
屈託のない笑顔に、張り詰めていた心が少しだけ緩む。
「ありがとうございます。エドワード公爵には、お招きいただき感謝しております」
「公爵は今か今かとお待ちでしたよ。『王都の愚か者どもは、宝石を石ころと間違えた』って、珍しく怒っていらして」
(怒って?)
私は首を傾げた。まだ一度もお会いしたことのない公爵が、なぜ私のために怒るのだろう。
公爵邸の謁見の間。
深い紫紺の瞳が、まっすぐに私を見つめていた。
「よく来てくれた、リリアナ嬢」
エドワード・クレイトン公爵。「氷の公爵」と呼ばれる無表情な顔には、しかし冷たさは感じられなかった。むしろ──温かな何かが、その奥に潜んでいる気がした。
「突然のお招き、驚きました。私に何のご用でしょうか」
「単刀直入に言おう」
公爵は立ち上がり、窓辺に歩み寄った。
「二年前、この国で行われたある婚礼に、貴女は関わっていた。私はその場に居合わせ、貴女の仕事を見た」
「覚えていらっしゃるのですか」
「忘れられるはずがない」
振り返った公爵の瞳に、確信の光があった。
「祝福の魔力。貴女の一挙手一投足に、それが宿っていた。あの婚礼が今も幸福に満ちているのは、貴女のおかげだ」
──気づいていた。
この人は、最初から気づいていたのだ。
「貴女の価値を知らぬ愚か者に、貴女の時間を費やす必要はない」
公爵は静かに、しかし揺るぎない声で言った。
「私の専属プランナーになってほしい。貴女の力を、貴女自身のために使える場所を用意する」
胸の奥で、閉じたはずの扉が軋む音がした。
「……なぜ、私なのですか」
「なぜ?」
公爵は──いいえ、エドワード様は、初めて微かに口元を緩めた。
「貴女が、貴女だからだ。それ以外に理由がいるだろうか」
涙が、頬を伝った。
三年間、誰にも認められなかった。
三年間、価値がないと言われ続けた。
けれどこの人は、たった一度見ただけで、私のすべてを理解してくれていた。
「──お受けいたします」
私は深く頭を下げた。
「リリアナ・フォーレスト、エドワード様に仕えます」
「ああ」
公爵は頷いた。その無表情の奥に、確かな喜びが灯るのを、私は見逃さなかった。
◇◇◇
三ヶ月後、アルヴィーン王国。
私は公爵邸の執務室で、次の婚礼の企画書を仕上げていた。
「リリアナ様、お茶をお持ちしました」
フィンが銀のトレイを運んでくる。彼は私がこの国に来てから、ずっと親身に世話を焼いてくれていた。
「ありがとう、フィン」
「エドワード様から伝言です。今夜の晩餐、ぜひご一緒にと」
(また、ですか)
この三ヶ月、エドワード様は毎晩のように私を食事に誘った。仕事の話をすることもあれば、ただ静かに同じ時間を過ごすこともある。
決して急かさない。私が傷を癒すのを、辛抱強く待ってくれている。
「リリアナ様」
フィンが少し真剣な顔で言った。
「エドワード様は、本当にあなた様のことを──」
「フィン」
低い声が響き、フィンが飛び上がった。
「余計なことを言うな」
「も、申し訳ございません公爵!」
エドワード様が執務室の入口に立っていた。普段と変わらない無表情、けれど耳の先がわずかに赤い。
(この方も、不器用な人)
思わず笑みがこぼれた。
穏やかな日々は、突然の来訪者によって破られた。
「リリアナ! 会いに来た!」
公爵邸の玄関で、ヴィクターが叫んでいた。
三ヶ月見ない間に、彼は別人のようにやつれていた。かつての自信に満ちた金髪の貴公子は、もういない。目の下には濃い隈が刻まれ、服装も乱れている。
「リリアナ様を傷つけた方をお通しするわけにはまいりません」
フィンが入口で毅然と立ちはだかっている。普段の軽さが嘘のような、鋭い眼差しだった。
「どけ! 私はローゼンハイム侯爵家の──」
「『元』、でしょう」
冷たい声に、ヴィクターが凍りついた。
エドワード様が階段を降りてくる。
「ローゼンハイム侯爵家は先週、爵位を剥奪された。セレナ・ヴァルモン嬢の詐欺と盗作を庇った罪で」
「そ、それは──」
「リリアナ」
エドワード様が私を見た。
「会うか?」
一瞬、迷った。
けれど──
「ええ。最後に、きちんとお別れを言いたいので」
応接間で、私は三ヶ月ぶりにヴィクターと向かい合った。
エドワード様は少し離れた場所に立ち、静かに見守っている。その存在が、私に勇気をくれた。
「リリアナ、頼む。戻ってきてくれ」
ヴィクターは椅子から滑り落ち、床に膝をついた。
「セレナは嘘つきだった。全部あいつに騙されていたんだ。お前の価値を分からなかった私が愚かだった。だから──」
「だから、何ですか?」
私の声に、ヴィクターが顔を上げる。
「私に戻れと? すべてを許して、また三年前のように尽くせと?」
「それは──誤解だったんだ! お前は優しい女だろう? 私のことを──」
「ヴィクター様」
私は静かに、しかし明確に遮った。
「あなたは三年間、私を見ていなかった。私の仕事を『雑務』と呼び、私の存在を『恥』と言った。私が差し出した愛を、足蹴にし続けた」
「それは──」
「今さら『分からなかった』と言われても」
立ち上がり、私はヴィクターを見下ろした。
「もう遅いのです」
その言葉に、ヴィクターの顔が絶望に染まる。
「私の幸せは、私が決めます。あなたに委ねる気は、もうありません」
「リリアナ……!」
「お引き取りください」
エドワード様が一歩前に出た。私の隣に並び、さりげなく私の手を取る。その手は温かく、力強い。
「彼女は私のものだ。──いや」
珍しく言い直した。
「彼女は、彼女自身のものだ。貴様に返す義理も理由もない」
ヴィクターは呆然と私たちを見上げた。
かつて自分が捨てた女が、自分より遥かに格上の公爵の隣で微笑んでいる。その事実が、ようやく彼の中で像を結んだのだろう。
「嘘だ……こんな、こんなはずでは──」
崩れ落ちるヴィクターを、私はもう見なかった。
「フィン、お客様をお見送りして」
「かしこまりました」
フィンが慇懃に、しかし容赦なくヴィクターを引きずっていく。
二人きりになった応接間で、エドワード様が小さく息を吐いた。
「大丈夫か」
「ええ。思ったより、何も感じませんでした」
本当だった。かつてあれほど苦しんだ相手なのに、今はただ──哀れだと思うだけ。
「リリアナ」
エドワード様が真剣な目で私を見た。
「一つ、頼みがある」
「何でしょう」
「──私の婚礼を、企画してほしい」
心臓が跳ねた。
「婚礼……ですか」
「ああ」
公爵は──いいえ、エドワードは、無骨に言葉を紡いだ。
「相手は、貴女だ」
世界が、止まった気がした。
「貴女がいれば、それでいい。──私と、生きてくれないか」
涙が、溢れた。
この三ヶ月、彼が見せてくれた誠実さ。私を急かさず、傷が癒えるのを待ち、ただ隣にいてくれた温かさ。
「……はい」
声が震えた。
「喜んで」
エドワードの腕が、そっと私を包んだ。
◇◇◇
半年後、アルヴィーン王国。
「本日は誠におめでとうございます!」
フィンが目を輝かせながら、式場を駆け回っている。
公爵邸の大聖堂は、白と淡い紫の花で埋め尽くされていた。エドワードの瞳の色をイメージした、私自身が選んだ装飾。
「リリアナ様、お美しいです」
侍女が涙ぐみながら、ヴェールを整えてくれる。
鏡の中の自分を見た。純白のドレスに身を包み、亜麻色の髪を美しく結い上げた女性。かつて「地味で冴えない」と言われた姿は、もうどこにもない。
(いいえ、変わったのは外見じゃない)
私を見る目が、変わったのだ。
「隣国からの来賓です」
フィンの声に、私は振り返った。
アーサー王太子が、穏やかな笑みを浮かべて立っていた。
「おめでとう、リリアナ嬢。いや──リリアナ公爵夫人」
「殿下……」
「我が国は、真の才能を正当に評価できなかった。恥ずべきことだ」
王太子は深々と頭を下げた。
「公式に謝罪する。そして──エドワードに感謝を。彼が貴女を見出してくれなければ、我々は取り返しのつかない過ちを犯し続けていた」
「殿下、頭をお上げください」
私は微笑んだ。もう、恨みはない。
「今日は、祝いの席です。どうか楽しんでいってください」
聖堂の扉が開き、オルガンの音色が響き渡った。
バージンロードの向こうで、エドワードが待っている。
普段は無表情な彼が、今日は──ほんの少しだけ、微笑んでいた。
(ああ)
一歩一歩、彼のもとへ歩み寄る。
周囲から祝福の声が上がる。アルヴィーン王国の貴族たち、隣国からの来賓、そして──
「お前の力は、お前自身を幸せにするために使いなさい」
マーガレット師匠が、客席から静かに頷いていた。
「汝、リリアナ・フォーレストは、エドワード・クレイトンを夫とし──」
司祭の言葉を聞きながら、私は胸の奥で祈った。
どうか、この人と永遠に。
その瞬間──
聖堂全体が、淡い光に包まれた。
「これは……」
「祝福の魔力だ」
エドワードが静かに言った。
「貴女の力が、貴女自身の婚礼を祝福している」
温かい光が、二人を包み込む。
参列者たちから感嘆の声が上がった。これほど強く、美しい祝福を見たことがないと。
「永遠の幸福が、お二人に訪れるでしょう」
司祭が厳かに宣言した。
「誓いの口づけを」
エドワードが、私のヴェールを上げた。
「愛している、リリアナ」
不器用な彼が、初めて口にした言葉。
「私も──愛しています、エドワード」
唇が重なった瞬間、祝福の光が一層強く輝いた。
◇◇◇
同じ頃、遠い王都では──
「嫌あああ! 私のせいじゃない! あんな地味女のせいよ!」
セレナが、護送される馬車の中で喚いていた。詐欺と盗作の罪で、辺境の修道院送りが決まったのだ。
かつての可憐な令嬢の面影は、もうどこにもない。
荒れ果てたローゼンハイム邸で、ヴィクターは一人、窓の外を見つめていた。
爵位を剥奪され、財産を没収され、社交界から完全に追放された。母は実家に逃げ帰り、使用人たちも去った。
噂で聞いた。リリアナの婚礼が、史上最も美しいものだったと。
「どうして……どうして気づかなかった」
三年間、隣にいたのに。
三年間、その価値を見ようともしなかった。
「リリアナ……」
呼んでも、もう誰も答えない。
手に入らなかった幸福を、ヴィクターは生涯悔やみ続けることになる。
◇◇◇
アルヴィーン王国、公爵邸。
「幸せか?」
エドワードが、傍らで眠る私の髪を撫でながら尋ねた。
「ええ、とても」
窓から差し込む月明かりが、二人を照らしている。
「ねえ、エドワード」
「なんだ」
「私を見つけてくれて、ありがとう」
エドワードは答える代わりに、私の額にそっと唇を落とした。
「こちらこそ──私のもとへ来てくれて、ありがとう」
祝福の魔力が約束した、永遠の幸福。
それは確かに、ここにあった。
私の幸せは、私が決める。
そして私は──最高の幸せを、手に入れた。
【完】




