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「地味で冴えない婚約者」と公開処刑された私ですが、実は祝福の魔力を持つ唯一の存在でした。今さら戻ってきてと言われても、もう遅いですわ

作者: uta
掲載日:2026/03/18

【お知らせ】

この作品は生成aiを用いて執筆を行なっています

あらかじめご了承の上、お楽しみください

「お前との婚約は、本日をもって破棄する」


王太子殿下の婚礼式場──黄金の燭台が幾重にも連なる大広間に、ヴィクターの冷たい声が響き渡った。


数百人の貴族たちが一斉にこちらを振り返る。絹のドレスが擦れる音、押し殺した囁き声。それらすべてが、私──リリアナ・フォーレストに向けられている。


(ああ、やはりこうなったのね)


三年間、尽くしてきた。彼の出世のために自分の手柄を譲り、影で支え続けた。その結果がこれだ。


「お前のような地味で冴えない女より──」


ヴィクターは隣に立つ蜂蜜色の髪の女性、セレナ・ヴァルモンの腰を引き寄せた。


「華やかなセレナの方が、侯爵家に相応しい」


セレナが翠の瞳を潤ませ、申し訳なさそうに私を見る。


「ヴィクター様……私、こんなつもりでは……リリアナ様、本当に申し訳ございませんわ」


その演技の完璧さには、同僚として三年見てきた私でさえ感心する。


(あなたが盗んだのは、私のアイデアだけじゃなかったのね)


周囲から嘲笑が漏れる。「やはり」「身の程知らず」「侯爵家には不釣り合いだった」──聞き慣れた陰口が、今日は堂々と耳に届く。


ヴィクターの母、クラリス侯爵夫人が扇で口元を隠しながら、満足げに頷いた。


「ふふ……ようやくですわね。最初から、あの娘では釣り合わないと申し上げていましたのに」


(三年間、あなた方のために何をしてきたか、本当に覚えていないのね)


私は静かに左手の婚約指輪を外した。


細い銀の輪。ヴィクターが「これで十分だろう」と言って寄越した、装飾もない安価な品。私の価値を、彼は最初から見ていなかった。


「承知いたしました」


私は指輪を彼の手に押し付けた。


「……は? それだけか? 泣いて縋りつくとでも思っていたが」


ヴィクターが眉を顰める。私は彼を真っ直ぐに見つめ返した。


「どうぞお幸せに」


それだけ告げて、踵を返す。


背後でセレナが囁くのが聞こえた。


「まあ、なんて冷たい方……三年もお傍にいながら、涙のひとつも見せないなんて」


ヴィクターが吐き捨てる声も。


「あれが本性だ。三年も騙されていた。やはりセレナ、お前を選んで正解だった」


(騙していたのは、どちらかしら)


黄金の大扉を押し開け、私は振り返らずに歩き出した。


三年間の献身が、たった一言で否定された。


けれど不思議と、涙は出なかった。


心の奥底で、何かが静かに、しかし完全に閉じる音がした。


(もう、二度と振り返らない)


◇◇◇


王都の片隅にある小さな宿屋。私は荷物をまとめながら、この三年間を思い返していた。


(結局、私は何だったのだろう)


最初の出会いは、ヴィクターが私の実家に出入りするようになった頃だった。フォーレスト家は爵位こそ低いが、宮廷との太いコネクションを持つ。彼の目的は最初から、私ではなく私の家だった。


「君は控えめで良い。余計なことを言わない女は好ましい」


それが彼の褒め言葉だった。


私は王都随一のウエディングプランナー事務所で働いていた。師であるマーガレット・オールダム女史のもと、数々の婚礼を成功に導いてきた。


けれどヴィクターは、私の仕事を「裏方の雑務」としか見なかった。


「今日も遅くまで式場の飾りつけか? 侯爵家の婚約者が、使用人のような仕事をするものではない」


彼は私の企画書を見ようともしなかった。私が徹夜で考えた演出を、私が心を込めて選んだ花の意味を。


思い出すのは、半年前のこと。


大貴族ウィンターソン伯爵家の婚礼を任された時だった。新婦の希望は「亡き母が好きだった、もう手に入らない幻の青薔薇を式場に飾りたい」という難題。


私は三週間かけて国中を探し、最後の一株を見つけ出した。魔法で増殖させ、式場を青い薔薇で埋め尽くした。新婦は涙を流して喜び、「一生忘れません」と私の手を握った。


しかし報告書には、セレナの名前だけが記されていた。


「リリアナ様、私が代わりにご報告しておきましたわ。あなた様はお忙しいでしょうから」


彼女はそう言って微笑んだ。純粋に善意だと、あの頃の私は信じていた。


(馬鹿だった)


今なら分かる。彼女は最初から、私のアイデアを盗み、手柄を横取りするつもりだった。そしてヴィクターには「リリアナ様に意地悪されている」と涙ながらに訴えていたのだ。


「祝福の魔力」──母から受け継いだ、この力のことを知る者は少ない。


私が心から祝福した婚礼には、永遠の幸福が約束される。それは噂として囁かれていたが、誰もその力が私自身に宿っていることを知らなかった。


マーガレット師匠だけが真実を知り、私を守るためにあえて秘密にしてくれていた。


「お前の力は、お前自身を幸せにするために使いなさい」


師匠はそう言った。


けれど私は、その力をヴィクターの出世のために使い続けた。彼の関わる社交の場を祝福し、彼の評判が上がるよう陰で支えた。


(愛していると、思っていた)


窓の外で、夕陽が王都の尖塔を赤く染めている。


明日、私はこの街を去る。マーガレット師匠には既に辞表を出した。師匠は何も言わず、ただ「どこへ行っても、お前は大丈夫だ」とだけ告げてくれた。


(さようなら、私の三年間)


荷物を閉じる音が、やけに大きく響いた。


◇◇◇


それから二週間が過ぎた。


私がいなくなった王都で、異変が起き始めていた。


「どういうことだ、セレナ!」


ヴィクターの怒声が、侯爵家の応接間に響き渡った。


「ウィンターソン伯爵家の令嬢が婚約破棄された! お前が手掛けた婚礼だったはずだ!」


セレナは青ざめた顔で首を振る。


「わ、私のせいではありませんわ! あの式は完璧だったはず──」


「完璧? 三組だぞ! お前が担当した婚礼のうち、三組が既に破談している!」


侯爵夫人クラリスが扇を握りしめる。


「それだけではありません。王太子殿下の婚礼も……延期になるとの噂が」


「馬鹿な」


ヴィクターは信じられないという顔で呟いた。


しかし噂は事実だった。


王太子の婚礼準備を引き継いだセレナは、何一つ上手くいかせることができなかった。花は枯れ、装飾は崩れ、招待状には誤字が並ぶ。彼女が持っていたのは、盗んだアイデアの断片だけ。それを形にする力も、祝福を与える魔力も、彼女にはなかった。


───


王城の謁見の間。


マーガレット・オールダム女史が、銀髪を高く結い上げた厳格な姿で王太子の前に立っていた。


「過去十年分の記録を洗い出しました。成功した婚礼のすべてに、リリアナが関わっています。セレナ嬢が単独で担当したものは──すべて失敗に終わっている」


「……すべて、だと?」


アーサー王太子が息を呑む。


「私が十年かけて育てた才能を、あなた方は三年で潰した。いいえ──追い出したのです。隣国に」


「馬鹿な! リリアナの功績だと? あれはセレナの──」


傍らで聞いていたヴィクターが叫ぶ。しかしマーガレット女史は冷たく遮った。


「祝福の魔力を持つ唯一の人材を、あなた方は自ら手放した。この国の婚礼は、もう二度と祝福されることはないでしょう」


ヴィクターの顔が、蒼白に染まった。


◇◇◇


同じ頃、私は隣国アルヴィーン王国の国境にいた。


「リリアナ・フォーレスト嬢ですね」


馬車を降りた私を出迎えたのは、赤毛にそばかすの若い従者だった。


「ようこそアルヴィーンへ! 僕はフィン・ベケット、エドワード様の従者です。長旅でお疲れでしょう、さあどうぞこちらへ」


屈託のない笑顔に、張り詰めていた心が少しだけ緩む。


「ありがとうございます。エドワード公爵には、お招きいただき感謝しております」


「公爵は今か今かとお待ちでしたよ。『王都の愚か者どもは、宝石を石ころと間違えた』って、珍しく怒っていらして」


(怒って?)


私は首を傾げた。まだ一度もお会いしたことのない公爵が、なぜ私のために怒るのだろう。


公爵邸の謁見の間。


深い紫紺の瞳が、まっすぐに私を見つめていた。


「よく来てくれた、リリアナ嬢」


エドワード・クレイトン公爵。「氷の公爵」と呼ばれる無表情な顔には、しかし冷たさは感じられなかった。むしろ──温かな何かが、その奥に潜んでいる気がした。


「突然のお招き、驚きました。私に何のご用でしょうか」


「単刀直入に言おう」


公爵は立ち上がり、窓辺に歩み寄った。


「二年前、この国で行われたある婚礼に、貴女は関わっていた。私はその場に居合わせ、貴女の仕事を見た」


「覚えていらっしゃるのですか」


「忘れられるはずがない」


振り返った公爵の瞳に、確信の光があった。


「祝福の魔力。貴女の一挙手一投足に、それが宿っていた。あの婚礼が今も幸福に満ちているのは、貴女のおかげだ」


──気づいていた。


この人は、最初から気づいていたのだ。


「貴女の価値を知らぬ愚か者に、貴女の時間を費やす必要はない」


公爵は静かに、しかし揺るぎない声で言った。


「私の専属プランナーになってほしい。貴女の力を、貴女自身のために使える場所を用意する」


胸の奥で、閉じたはずの扉が軋む音がした。


「……なぜ、私なのですか」


「なぜ?」


公爵は──いいえ、エドワード様は、初めて微かに口元を緩めた。


「貴女が、貴女だからだ。それ以外に理由がいるだろうか」


涙が、頬を伝った。


三年間、誰にも認められなかった。


三年間、価値がないと言われ続けた。


けれどこの人は、たった一度見ただけで、私のすべてを理解してくれていた。


「──お受けいたします」


私は深く頭を下げた。


「リリアナ・フォーレスト、エドワード様に仕えます」


「ああ」


公爵は頷いた。その無表情の奥に、確かな喜びが灯るのを、私は見逃さなかった。


◇◇◇


三ヶ月後、アルヴィーン王国。


私は公爵邸の執務室で、次の婚礼の企画書を仕上げていた。


「リリアナ様、お茶をお持ちしました」


フィンが銀のトレイを運んでくる。彼は私がこの国に来てから、ずっと親身に世話を焼いてくれていた。


「ありがとう、フィン」


「エドワード様から伝言です。今夜の晩餐、ぜひご一緒にと」


(また、ですか)


この三ヶ月、エドワード様は毎晩のように私を食事に誘った。仕事の話をすることもあれば、ただ静かに同じ時間を過ごすこともある。


決して急かさない。私が傷を癒すのを、辛抱強く待ってくれている。


「リリアナ様」


フィンが少し真剣な顔で言った。


「エドワード様は、本当にあなた様のことを──」


「フィン」


低い声が響き、フィンが飛び上がった。


「余計なことを言うな」


「も、申し訳ございません公爵!」


エドワード様が執務室の入口に立っていた。普段と変わらない無表情、けれど耳の先がわずかに赤い。


(この方も、不器用な人)


思わず笑みがこぼれた。


穏やかな日々は、突然の来訪者によって破られた。


「リリアナ! 会いに来た!」


公爵邸の玄関で、ヴィクターが叫んでいた。


三ヶ月見ない間に、彼は別人のようにやつれていた。かつての自信に満ちた金髪の貴公子は、もういない。目の下には濃い隈が刻まれ、服装も乱れている。


「リリアナ様を傷つけた方をお通しするわけにはまいりません」


フィンが入口で毅然と立ちはだかっている。普段の軽さが嘘のような、鋭い眼差しだった。


「どけ! 私はローゼンハイム侯爵家の──」


「『元』、でしょう」


冷たい声に、ヴィクターが凍りついた。


エドワード様が階段を降りてくる。


「ローゼンハイム侯爵家は先週、爵位を剥奪された。セレナ・ヴァルモン嬢の詐欺と盗作を庇った罪で」


「そ、それは──」


「リリアナ」


エドワード様が私を見た。


「会うか?」


一瞬、迷った。


けれど──


「ええ。最後に、きちんとお別れを言いたいので」


応接間で、私は三ヶ月ぶりにヴィクターと向かい合った。


エドワード様は少し離れた場所に立ち、静かに見守っている。その存在が、私に勇気をくれた。


「リリアナ、頼む。戻ってきてくれ」


ヴィクターは椅子から滑り落ち、床に膝をついた。


「セレナは嘘つきだった。全部あいつに騙されていたんだ。お前の価値を分からなかった私が愚かだった。だから──」


「だから、何ですか?」


私の声に、ヴィクターが顔を上げる。


「私に戻れと? すべてを許して、また三年前のように尽くせと?」


「それは──誤解だったんだ! お前は優しい女だろう? 私のことを──」


「ヴィクター様」


私は静かに、しかし明確に遮った。


「あなたは三年間、私を見ていなかった。私の仕事を『雑務』と呼び、私の存在を『恥』と言った。私が差し出した愛を、足蹴にし続けた」


「それは──」


「今さら『分からなかった』と言われても」


立ち上がり、私はヴィクターを見下ろした。


「もう遅いのです」


その言葉に、ヴィクターの顔が絶望に染まる。


「私の幸せは、私が決めます。あなたに委ねる気は、もうありません」


「リリアナ……!」


「お引き取りください」


エドワード様が一歩前に出た。私の隣に並び、さりげなく私の手を取る。その手は温かく、力強い。


「彼女は私のものだ。──いや」


珍しく言い直した。


「彼女は、彼女自身のものだ。貴様に返す義理も理由もない」


ヴィクターは呆然と私たちを見上げた。


かつて自分が捨てた女が、自分より遥かに格上の公爵の隣で微笑んでいる。その事実が、ようやく彼の中で像を結んだのだろう。


「嘘だ……こんな、こんなはずでは──」


崩れ落ちるヴィクターを、私はもう見なかった。


「フィン、お客様をお見送りして」


「かしこまりました」


フィンが慇懃に、しかし容赦なくヴィクターを引きずっていく。


二人きりになった応接間で、エドワード様が小さく息を吐いた。


「大丈夫か」


「ええ。思ったより、何も感じませんでした」


本当だった。かつてあれほど苦しんだ相手なのに、今はただ──哀れだと思うだけ。


「リリアナ」


エドワード様が真剣な目で私を見た。


「一つ、頼みがある」


「何でしょう」


「──私の婚礼を、企画してほしい」


心臓が跳ねた。


「婚礼……ですか」


「ああ」


公爵は──いいえ、エドワードは、無骨に言葉を紡いだ。


「相手は、貴女だ」


世界が、止まった気がした。


「貴女がいれば、それでいい。──私と、生きてくれないか」


涙が、溢れた。


この三ヶ月、彼が見せてくれた誠実さ。私を急かさず、傷が癒えるのを待ち、ただ隣にいてくれた温かさ。


「……はい」


声が震えた。


「喜んで」


エドワードの腕が、そっと私を包んだ。


◇◇◇


半年後、アルヴィーン王国。


「本日は誠におめでとうございます!」


フィンが目を輝かせながら、式場を駆け回っている。


公爵邸の大聖堂は、白と淡い紫の花で埋め尽くされていた。エドワードの瞳の色をイメージした、私自身が選んだ装飾。


「リリアナ様、お美しいです」


侍女が涙ぐみながら、ヴェールを整えてくれる。


鏡の中の自分を見た。純白のドレスに身を包み、亜麻色の髪を美しく結い上げた女性。かつて「地味で冴えない」と言われた姿は、もうどこにもない。


(いいえ、変わったのは外見じゃない)


私を見る目が、変わったのだ。


「隣国からの来賓です」


フィンの声に、私は振り返った。


アーサー王太子が、穏やかな笑みを浮かべて立っていた。


「おめでとう、リリアナ嬢。いや──リリアナ公爵夫人」


「殿下……」


「我が国は、真の才能を正当に評価できなかった。恥ずべきことだ」


王太子は深々と頭を下げた。


「公式に謝罪する。そして──エドワードに感謝を。彼が貴女を見出してくれなければ、我々は取り返しのつかない過ちを犯し続けていた」


「殿下、頭をお上げください」


私は微笑んだ。もう、恨みはない。


「今日は、祝いの席です。どうか楽しんでいってください」


聖堂の扉が開き、オルガンの音色が響き渡った。


バージンロードの向こうで、エドワードが待っている。


普段は無表情な彼が、今日は──ほんの少しだけ、微笑んでいた。


(ああ)


一歩一歩、彼のもとへ歩み寄る。


周囲から祝福の声が上がる。アルヴィーン王国の貴族たち、隣国からの来賓、そして──


「お前の力は、お前自身を幸せにするために使いなさい」


マーガレット師匠が、客席から静かに頷いていた。


「汝、リリアナ・フォーレストは、エドワード・クレイトンを夫とし──」


司祭の言葉を聞きながら、私は胸の奥で祈った。


どうか、この人と永遠に。


その瞬間──


聖堂全体が、淡い光に包まれた。


「これは……」


「祝福の魔力だ」


エドワードが静かに言った。


「貴女の力が、貴女自身の婚礼を祝福している」


温かい光が、二人を包み込む。


参列者たちから感嘆の声が上がった。これほど強く、美しい祝福を見たことがないと。


「永遠の幸福が、お二人に訪れるでしょう」


司祭が厳かに宣言した。


「誓いの口づけを」


エドワードが、私のヴェールを上げた。


「愛している、リリアナ」


不器用な彼が、初めて口にした言葉。


「私も──愛しています、エドワード」


唇が重なった瞬間、祝福の光が一層強く輝いた。


◇◇◇


同じ頃、遠い王都では──


「嫌あああ! 私のせいじゃない! あんな地味女のせいよ!」


セレナが、護送される馬車の中で喚いていた。詐欺と盗作の罪で、辺境の修道院送りが決まったのだ。


かつての可憐な令嬢の面影は、もうどこにもない。


荒れ果てたローゼンハイム邸で、ヴィクターは一人、窓の外を見つめていた。


爵位を剥奪され、財産を没収され、社交界から完全に追放された。母は実家に逃げ帰り、使用人たちも去った。


噂で聞いた。リリアナの婚礼が、史上最も美しいものだったと。


「どうして……どうして気づかなかった」


三年間、隣にいたのに。


三年間、その価値を見ようともしなかった。


「リリアナ……」


呼んでも、もう誰も答えない。


手に入らなかった幸福を、ヴィクターは生涯悔やみ続けることになる。


◇◇◇


アルヴィーン王国、公爵邸。


「幸せか?」


エドワードが、傍らで眠る私の髪を撫でながら尋ねた。


「ええ、とても」


窓から差し込む月明かりが、二人を照らしている。


「ねえ、エドワード」


「なんだ」


「私を見つけてくれて、ありがとう」


エドワードは答える代わりに、私の額にそっと唇を落とした。


「こちらこそ──私のもとへ来てくれて、ありがとう」


祝福の魔力が約束した、永遠の幸福。


それは確かに、ここにあった。


私の幸せは、私が決める。


そして私は──最高の幸せを、手に入れた。



【完】

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