ゲームとかまぢ無理www
昼の2時頃、雫、夢弍羅は、互い自分の部屋で、ヘッドセットを着けマウスを右手に、キーボードを左手に、パソコンと向かい合っている。
「アゼンドか~……しーちゃん何ピックする~?」
アゼンド、ステージの名前。
ピック、キャラを選択することの略称。
「ストリーム。」
ストリーム、環境最強と言われているキャラ。
高い機動力やスモークなどがシンプルに強い。
「じゃあグローヴ使おっかな~!」
2人がやっているゲームはバロランド、基本プレイ無料の大人気FPSだ。
そして今のは何気ないキャラピックの会話だが、一緒にたくさんゲームをしてきたからこそ、
雫にちょっとした疑問が浮かぶ。
「むには私がストリーム使う時いっつもグローヴ使うよね。」
「えっ…!まっ…まぁねぇ~!」
夢弍羅はあからさまに焦る。
これが何故かというと、
(今更言えない……!しーちゃんのストリームが、野良のストリームむ過ぎて、味方さん禿げちゃうからなんて今更言えないよ……!)
こういうことである。
このバロランドは5人1チームとして戦うゲームで、チームの協調性があればあるほど強いというゲームデザインになっており、夢弍羅が雫に対して思っている、野良のストリームというのは、
言わば地雷……
野良マッチという、知らない人とランクマッチをするときに現れる、協調性皆無の自分勝手突っ込み野郎のことである。
対して夢弍羅がピックしたグローヴは、補助、妨害、エントリー、設置、解除、とにかく1人でなんでもできるキャラである。
つまり夢弍羅の考えていることはというと、協調性のない雫のストリームを、相方として見過ごすわけにもいかず、なんとか自分のPSで誤魔化そうということである。
「まぁいいや、とにかく今日は絶対プラチナ上がるからね!」
雫は細かいことを無視してとりあえず気合いを入れる。
「うん!頑張ろうぜ!!」
(うんうん、気づかないでね~!)
なんとかやり過ごし、試合が始まる。
「しーちゃんどっち行く~?」
バロランドの基本ルールは、爆弾をマップにある指定エリアへ設置して爆発させるか、敵を殲滅したら攻め側の勝利。
設置された爆弾の解除、もしくは、爆弾を設置させずに敵を殲滅させたら守り側の勝ち。
そしてその攻防を繰り返し、先に13ラウンド取ったら最終的な勝ちというルールで、二人は今攻め側である。
「A!」
雫はやる気満々で、Aメインに続く道の前に待機している。
それを見た夢弍羅は、少しでも味方が剥げてしまわないように、補助をいれる。
「よろしくお願いしま~す。
最初A行きませんか~?」
これは野良ボイチャで、コミュニケーションを取っている。
あくまでチーム戦ゆえに、こういうコミュニケーションが大事だったりする。
そして、可愛い声の女の子が、Aに行きたいと言えばAに行くのが野良である。
そんなこんなでラウンドが始まる。
雫は特になんの躊躇いもなくAメインを直行する。
(はぁ~しーちゃんそこまだクリアリングできてないよ~!
とりあえずモク炊くからね~!)
モクとはスモークの略であり、炊いた範囲内を隠すことができるスキルだが、
「あぁっ!!メイン見てるぅ!!」
雫は夢弍羅がモクを炊く前に撃ち負ける。
「どんまい!」
(最初のラウンドだし、大体見てるよ~……)
こう思いはするが口には出さない。
これは夢弍羅のポリシーみたいなものなので、
自分からはアドバイスせずに、聞かれたら答えるというスタンスを徹底している。
そして、こういう感じで試合は進んでいく。
「よォしッ!!撃ち勝った!!」
「ナイス!」
(フィジカルは強いんだよね~)
「あぁ!!ブリンク失敗したぁっ!!」
「あるあるだよ、どんまい!」
(可愛いぃ~!)
「はぁ?らぐっ!絶対無線だわ!!」
「……」
(いつもこれになんて返せばいいか分かんないんだよね~……)
「むに強すぎじゃん!!」
「まぁね~!」
(はぁ……最高……!!)
「もう夢弍羅1人で良くないですか?」
「シズミン!?」
「よっし!まず1勝!!あと2回勝てばランク上がる!」
「頑張ろ~!」
「はぁ無理なんだけど!!」
「どんまい!」
「はぁ!!今のヘッショじゃないマ!?」
「ふふっw」
「ちょっと待って敵強すぎ、絶対フルパ。」
「いや~強いね~……」
「あぁ!負けたっ!!次!!」
「どんどん行こ~!」
「はぁぁぁ!!150ダメ当ててるんですけどぉ!?」
「いや回復強いね~!」
「カイソくん!!タイマンなら負けないから私~!ふぅ~!」
「しーちゃんまぢさいきょ~!」
「はぁ!!!カイソ攻めなのにオーディソ抱えてきたんですけどぉ!?」
「あはwやばぁww」
「それなら私もオーディソ持つし!!」
「頑張れ~ww」
「ツギハオペダァァァァァァッ!!!」
「アハッwww」
「オペオペオペオペオペオペオペオペ!!!!
あぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」
「んふふふふwww」
「カイソにタイマン狙い撃ちされてるってぇ!!」
「確実に狙われてるね~www」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
カイソうざすぎぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!
あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「負けたね~w」
「もうバロやめる!!
ポリクラ!!ポリクラする!!!」
「今日は調子悪かったかもね~w」
(あ~!しーちゃんとするゲーム楽し~w)
夢弍羅は雫の発狂をこれが見たかったんだと言わんばかりに楽しんでいる。
ポリクラ、ポリゴンクラフトの略称。
世界で一番有名なゲームと言っても過言ではない、自由度の高いポリゴン世界が舞台のサバイバルゲーム。
二人は前からこのゲームをやっており、それなりに発展した世界を持っている。
「もうそろそろファイナルドラゴン行けるでしょ?」
「そだね~。あと、ファイパが3個あれば行けるかな~。」
「早く翼欲しい!
移動が大変すぎる!」
「じゃあ今日中にファイドラ倒して翼ゲットしちゃおっか!」
「うん!やる!!」
「じゃあとりあえずファイパ手に入れたいし、藍森行こ!」
ファイナルドラゴン、一応このゲームのラスボス的な存在だが、自由度が高過ぎてラスボス感はあまりない。
ファイパ、ファイナルパールの略。ファイナルマンという敵が落とすドロップアイテムで。投げると落ちた場所にワープできる。ファイパはもう1つの使い道があり、フレイブロットと組み合わせることで、ファイナルドラゴンがいる場所へ繋がるポータルを開く、鍵のようなアイテムになる。今回の目的はそれ。
藍森、ファイナルマンが出現しやすい、地獄世界の環境、藍色の森の略。
「よし!じゃあ鉄装備と金装備持ってくる!!
地獄にダイヤは全ロスが怖くて着ていけないからね!」
全ロス、アイテムを全て失うこと。
「私のもよろしく~!」
「うん!」
(しーちゃん可愛いな~。
何してても可愛いもん。
あんなポリポリしたアバターですら可愛いぃ……なんならエッチまである……!
いや流石にきついか。
いいや、いけるね。)
夢弍羅は思春期真っ盛りである。
そして、何だかんだで雫が多少死に、無事ファイパを集めファイナルの世界へ行く準備が整う。
「ようやくここまで来た!」
ムフンッ…!と達成感を感じる様に雫が言う。
「ファイパ3個集めて、ポータル探すだけだったのに3時間くらいかかっちゃったね!」
夢弍羅は相変わらず楽しそうだ。
「うん、きつい……道のりだったよ……!」
雫はこの3時間を振り返りながら深々言う。
「じゃあ行こっか、ファイナル!!」
「うん!」
いざ!ファイナルへ!!
っとその前に、夢弍羅が思い出す。
「あっ、ちゃんとテント触った?
アイテムはツルハシとブロックと水バケツだけにしてる?」
「テント触ってない!!」
テント、死んで生き返る場所を固定するアイテム。夜を朝にすることもできる。
「あぶね~!
ちゃんとスポーン固定しなきゃ!
しーちゃん死んでここまで来るのに多分30分くらいかかっちゃうよ!!」
「そんなかかんないよ!!」
「あははww。」
そんなやり取りの後、改めて二人はファイナルの世界に足を踏み入れる……
シュワ~~ン……!
「狭!」
周りがファイナルストーンで埋まった四角い空洞に出る。
「よし!初手埋まってるタイプだね!
掘って外出てクリスタル壊すよ!!」
「うん!」
雫が上に階段彫りしていくと、すぐに地上へ繋がる。
「出た!」
「よし!じゃあクリスタル破壊だ~!」
夢弍羅と雫はポリゴンを積み上げて黒石の塔をせっせこ登る。
バァンッ!
夢弍羅はクリスタルを殴って壊し、
チャポンッ…!
高い塔から水バケツを片手に飛び降り、着地するタイミングで地面に水を敷く。
これはポリクラで使えると便利でちょっとかっこいい、落下ダメージを受けない小技である。
バァンッ!
雫もクリスタルを壊し、水バケツを片手に飛び降りて、
ベシッ!
死ぬ。
「あぁ!失敗した!!」
「あはっww」
(しーちゃんこういう小技好きだからな~!)
バァンッ!
チャポンッ…!
バァンッ!
チャポンッ…!
バァンッ!
ベシッ!
バァンッ!
チャポンッ…!
バァンッ!
チャポンッ…!
バァンッ!
ベシッ!
バァンッ!
「あと1個だよ~!」
クリスタルを9個破壊し、残り1つになる。
「待って!最後のやつ私にやらせて!!
水バケツのやつ1回も成功してない!!」
雫は最後の塔に向かってせっせこ走りながらそんなことを言う。
それを見て聞いた夢弍羅は、
「ふふwじゃあ任せて先にリス戻っとくね~!」
ベシッ!
死んでリスポーン地点へ戻るため、わざとなにもせず飛び降りる。
バァンッ!
そして雫は塔を登りきって最後のクリスタルを壊す。
「よし……!」
「おぉ!頑張れ~!!」
夢弍羅は荷物を整理しながらに、雫の気合いを感じとって、応援する。
「うん!絶対成功させるから!!」
雫……緊張の一瞬である……
ヒュンッ…
今までと同じく落下する……
「こ こ!!」
チャポンッ…!
「よぉぉぉしっ!!!!できたぁっ!!
ねぇ!!むに!!成功したよ!!」
成功したことに喜び、ウッキウキで夢弍羅に報告する。
「おぉぉ!!おめでとう!!やればできる子だと思ってたよ~!
じゃあ帰っておいで~!」
(しーちゃん絶対今にっこにこじゃん…!可愛い~……)
夢弍羅は微笑ましいな~可愛いな~という気持ちで雫の帰りを待つ。
「うん!」
雫はリスに帰るためファイナルマンを殴り、ボコボコにされて死ぬ。
どうせ次の準備のため死に戻りをする都合、今の水バケツチャレンジは全くの無駄だが、雫は夢弍羅の想像通りにっこにこである。
リスに雫が戻ってくると夢弍羅が言う。
「よし!じゃあ装備整えて!!
いざ!ファイドラをボコボコだぜ!!」
「だぜ!!」
こうしてファイドラは死ぬ。
雑に殺されたファイドラの声……
「えっ、私の扱い雑じゃないですか?一応ラスボ……」
ファイドラが空中で霧散していき、経験値の雨が降ってくる。
「経験値いっぱいだ~!」
雫は経験値を拾うため駆け回るが、
夢弍羅は立ち止まって話す。
「エンチャントし放題だね!
で!
どうする!!」
「え?」
どうする?の意味が全く分からない雫である。
「いや、結構時間経っちゃったし、このまま翼取り行くのか、一旦区切るか。」
昼の2時頃からゲームを始めて、現在時刻は夜の7時半、タイミング的にも時間的にもやめるのに都合がよさそうなタイミングだが、
「もちろん行く!」
雫は昨日の股の間に座るやり取りの時とは違い、本当に当たり前という感じで即答する。
「だよね~!」
(しーちゃん集中力すごいからな~!)
「じゃあこままの装備で行く?
ことと次第じゃロスっちゃうかもしんないし、家から鉄装備とか一旦持ってきてもいいと思うけど。」
二人は今、ガチガチの一軍装備でここにきている。
ファイドラ戦はともかく、翼を取りに行くとなると全ロスの可能性が高くなる。
「いや!いい!このまま行く!!」
しかし、雫的にそれはめんどくさいし、なにより速く翼を手にいれたいのでこのまま行くことにする。
「だよね~!」
(しーちゃんは集中力すごいけど、目先の欲に弱いっからな~w
とりあえずロスらないように気を付けなきゃ。
いろんな意味で。)
こうして二人はファイナル本島へ足を進める。
2人の目的である翼を手に入れるためには、このファイナル本島でランダムに生成される、ファイナルシティを見つけ、尚且つそこからまたランダムで生成されるファイナルシップを見つけなくてはいけない。
そしてこのファイナル本島はとても広く、島が転々としており、翼無しで渡るにはポリゴンを伸ばして進まなければならない。
「よし!どこ行く!!しーちゃん!君はどこから波動を感じる!?」
「う~ん……こっち!!」
雫はとりあえず地続きの方へ進む。
20分後……
雫の進んだ方へ、時に走り、時にポリゴンで橋を作り、時に方向転換してみたりして、ようやく目当ての建物を見つける。
「あったぁ!!!」
前を走る雫が大きく元気に言う。
「おぉぉぉぉ!!いや~~やっとあったね~!!
くぅ~~脳汁きた~!!!!
あっ!てかシップある!?」
それを聞いた夢弍羅は達成感を感じ、目的のものがあるか聞く。
「あるある!!」
雫は夢弍羅のそんな問いに、またまた元気に嬉しそうに反応する。
「よしよしよし!!!
じゃあさくっと気をつけて探索ししちゃおう!
意外と死ぬからマジで気をつけて!」
夢弍羅は終わりが見え、改めて気合いを入れる。
「うん!!」
シティ攻略はとても順調に進み、二人はとうとう念願の翼を手に入れる。
デデ~ン!!
雫のアバターが、翼とファイナルドラゴンの頭を付けた下半身ダイヤマンになる。
「おぉぉぉ!!!!かっこいいよ~!しーちゃ~ん!!」
夢弍羅は、全然かっこ良くはないその風貌を嘘偽り無くかっこいいと言う。
「ふんっ!!」
そして雫はそれを受けすごく自慢げである。
「早速飛んできなよ!!
はいこれ、加速爆弾!
これで私の分の翼もさくっと見つけてきて~!」
そう言って、この時のために用意しておいた加速爆弾20個を雫へ渡す。
加速爆弾、翼で飛行中に使用すると加速できるアイテム。
「任せて!
むにの分も予備の分もたくさん集めて来るから!!」
雫は気合い満々である。
「任せた~。」
「ビュ~ン!!」
雫が適当な方向へ飛んでいく。
「ふぅ~……いやぁ長かったね~……
うぅっ…!んっ…!んぁ~……」
夢弍羅はシップの中でふぅ~……と一息ついて、椅子に背中を倒して背伸びする。
「ビュ~ン!」
雫はウキウキで空を飛んでいる。
(しーちゃん楽しそ~良かった~…………
……あっ、そうだ一応万が一もあるし、上飛ぶように言っとこうかな。
描画が追い付かなくて、シティやシップにぶつかっちゃうかもしんないし。)
「ビューン!」
描画、景色やポリゴンなどが描かれること。
速く移動したりするとたまにこの描画処理が追い付かず、あるはずのものが透明になってしまう。
そして、翼で高速移動中にポリゴンと衝突すると運動エネルギーによって死ぬ。
だから夢弍羅は注意するよう言おうとするが……
ベシッ!
uminosizukuは運動エネルギーを体験した
画面左下にこんな文字が出る。
「ぶはッwwwしーちゃん?w」
言おうと思ってた矢先にログが出てきて、夢弍羅は思わず笑う。
「アアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!」
そして雫は今日一番の発狂をする。
「大丈夫!大丈夫!多分まだそんなに遠くじゃないし、あたし今から走る走るww!」
そう言って夢弍羅はすぐシップから水バケツを片手に飛び降りる。
ベシッ。
「あっはwごめん死んだww」
長時間のゲームによる疲労で、着地に失敗する。
「ァァァァァァ……!」
雫は声にもならないような、か細い発狂をする。
「大丈夫!大丈夫!アイテムは人がファイナルにいない限りデスポーン時間削れないし、一応シップ出る前に座標スクショしたから、ファイパと回復ポーションたくさん持ってけば間に合うよ。」
雫はなにも反応しない。
(あは~wしーちゃんロスッちゃうとこうなるからな~w
凸るか~)
夢弍羅はとりあえずワルードを閉じて、雫の部屋に行く。
時刻はもう8時を回っている。
コンコンッ…
「しーちゃ~ん……入るよ~?」
雫の部屋のドアを優しくノックし聞くが、返事がないので、そのまま入る。
「あはは~w……」
雫はベッドでうつ伏せになって枕に顔を埋めている。
「しーちゃ~ん…!大怪獣むにらが来たぜ~…!
がお~……!」
そんなことを言いながら夢弍羅は雫へ近づいていく。
するとかすかに、鼻をすするような音が聞こえる。
「あは~w……よしよし~……元気出して~……」
夢弍羅は長時間ヘッドセットを着けて、型のついた雫の髪を頭と一緒に優しく撫でる。
「全部なくなった……」
雫が顔を埋めたまま、もごもごと言う。
それに対し夢弍羅は優しく、期待感が出るような感じで言う。
「まだまだ諦めるには時期尚早だぜ…!」
「なんで…?
近くにいたむにも死んじゃったじゃん………………」
「ふふ~ん…!ポリクラの仕様でね、ファイナルとか地獄とか現世とかは別の世界って感じなのだ…!」
「それってどういうこと…?」
雫はまだうつ向いている。
「ファイナルに入って5分間が勝負ってこと…!」
「5分じゃ間に合わないじゃん…」
「ちっちっち…!
探してる時は、島を渡るために橋とか作ったり、ちょっと右往左往してたりしたし、シティに行くだけなら結構速くのと、更に!
取り行く時はファイパと回復ポーションがん積みしたら、めっちゃ速く行けるから!!
まぁ……でも、しーちゃんの方は間に合うかどうか、しーちゃん次第だけどね…
まず道を覚えてないといけないのと、
加速爆弾ぶんぶんで進んでたら間違いなく間に合わないけど、加速爆弾自体がそんなにたくさんあった訳じゃないし、なによりしーちゃんが定期的にビューンって言ってたから、その時に多分加速爆弾使ってるよね!だからそのくらいの距離だったらファイパ無双できると思う!!」
「シップからなら一直線に進んだし分かる……」
「はは~ん…!!なんとむに氐!シップ降りる前に、感じていた疲労感を無視せず、座標をスクショしているのです!!
まさかほんとに死ぬとは思わなかったけどね!ははっ…!」
雫が泣き顔を上げる。
「好き…!」
そして夢弍羅へ抱きつく。
「まぁまぁまぁ、ゲーマーですから!
肩書きで言えばプロゲーマーの妹ですから!!
こんなのはピンチでもなんでもないのだよ!
ガッハッハッハッ八!!」
(抱きついて、好き…!頂きました~!)
夢弍羅は今日の中で今が一番楽しそうだ。
「じゃあ集めよ!ファイパ!」
雫はいきなりサッと離れてすぐに気を取り直す。
「え?今から?」
楽しそうな夢弍羅は一転し、おっ…?という顔をして問う。
「うん!」
それに雫は満面の笑みで返事をするが、
「今からは無理!」
夢弍羅はそんな笑顔をもろともせず、一瞬で断る。
「なんで!」
しかし雫もこの程度の否定では引かない、
ので、
「ご飯食べたいし!お風呂入りたい!!」
夢弍羅は切実な思いをぶつける。
「むぅっ…」
それはもっともな意見なので雫も強く出れない、ゆえに、
「じゃあそれ終わったらやろ!」
その意見を取り入れ新たに提案する、が、
「明日は学校でしょ!」
「むぅっ…!!」
またまたまともな意見に負ける、がしかしまだいく、
「じゃあ明日の放課後!」
「よかろう……!」
こうして話は落ち着いた。
「じゃ!明日の朝ね~!
おやすみ~。」
そう言って夢弍羅は雫の部屋を去ろうとするが、
「あのっ…!」
雫が呼び止める。
「どうした~?」
「ありがとう……わざわざ部屋まで来てくれて……」
雫は面と向かって少し恥ずかしそうにお礼を言う。
夢弍羅は喜びを噛みしめ飲み込み、爽やかに返す。
「お安いご用さ!
何てったってあたしは、しーちゃんの最強幼馴染みだからね!(力こぶ強調ポーズ)」
「うん!」
雫はそんな夢弍羅の全てが嬉しくて楽しくて愛おしかったので、ただ満面の笑みで、うん!と一言だけ言う。
夢弍羅は雫の部屋を出て、階段を降り、玄関へ向かう。
(今日のしーちゃんはなんか、ずば抜けて可愛かったしエロかったなぁ……
これがかわいそうは可愛いってやつか……)
「お邪魔しました~!」
そんなことを考えながら雫の家を出る。
「はぁ~やっぱしーちゃんとゲームするの楽し~!
しーちゃんが本気でやってくれるから楽しいんだよね~!
ゲームをするしーちゃんからしか得られない栄養があります!」
夢弍羅は今日を振り返って、雫の良さを改めて実感する。
一方その頃雫は、
「抱き付いて好きって言ったのに……
幼馴染みを越えられない……」
また枕に埋まっていた。