第8話 真実より力
目を閉じているのか、開いているのか、分からないほどの漆黒の闇の中······。
闇の中で、ランカシャーという意識は、自分の存在を認識した。
「また、闇かよ」
闇の中にランカシャーの低い声が響いた。
「ランカシャー」
ランカシャーの名前を呼ぶ女性の声が響いた。
「また、お前か」
「ランカシャー、悔い改めなさい」
「悔い改める、だと? 何を、だ! どうして、だ!」
「せっかく過去に戻してあげたのに、いきなり剣技に優れるアルケニスの返り討ちにあって命を落とすとは、どれだけお前は愚かなんでしょう」
「ふん! アルケニスは俺様を暗殺した裏切り者だ。裏切り者を真っ先に殺せば、俺様は皇帝を続けられるだろ?」
「それはまだ起きていない未来の話でしょう。アルケニスは、お前がミリアスを用無しだからと殺害したから、仕方なくあのような暴挙に出たのですよ」
ランカシャーは黙り込んだ。その後、しばらく沈黙が流れた。
「ランカシャー、悔い改めるのです。そうすれば運命を変えられます」
「そうは言ってもな。ミリアスが悪いのだ。あやつが俺様を批判するから悪いのだ。それに······」
「それに?」
「ミリアスは調子に乗っていた。あやつは、僕のおかげでランカシャーが大陸を統一できた、と周りの者たちに言っていたのだ」
「それは事実なのですか?」
「それは分からないが、大臣の一人からそう聞かされた」
「悔い改めなさい。真実を見極めるのです」
「真実など、どうでもいい。俺様は皇帝なのだ!
帝国を維持するためには真実なんかより力が必要なのだ! 」
ランカシャーは語気を強めた。しかし、そこには少しばかりの弱音が含まれていた。
ランカシャーは意識を失った。