第11話 性急さの結末
ランカシャーは闇の中で目覚めた。
「ふざけやがって! また殺されたのかよ!」
ランカシャーは怒り狂い、あらゆる汚い言葉で己の運命を罵った。
「ランカシャーよ。悔い改めなさい」
闇の中に女性の声が響いた。その声と言葉が、さらにランカシャーの怒りを増幅させた。
「いったい俺様が何をした! ミリアスやアルケニスを殺さなかったし、むしろ、奴らに感謝しただろ! それなのに、どうしてまた殺されてしまったんだ!」
闇の中でランカシャーの怒鳴り声が響き渡った。
「ランカシャー、お前は暗殺者によって命を奪われたのです」
「どこの暗殺者だ! 身内か? 敵か?」
ランカシャーは興奮して声を荒らげている。
「亡国の王一族が、お前に暗殺者を差し向けたのです」
「卑怯な奴らめ! なあ、また俺様を過去に戻してくれるんだろ? あの亡国の王一族を皆殺しにしてやるから早く俺様を皇帝即位させるんだ!」
「ランカシャー、悔い改めなさい。なぜ、お前が亡国の王一族に暗殺されたのか、その理由を考えてみなさい」
「理由など、どうでもいい! 早く、早く皇帝即位まで戻せ!」
「なんて、性急で愚かなんでしょう。分かりました。好きになさい」
ランカシャーは意識を失った。
ふと、気づくと、ランカシャーは宮殿テラスで立っていた。ランカシャーの頭には宝冠が載せられている。
「陛下、演説を······」
皇帝ランカシャーの傍らにいたミリアスが演説開始を促した。ランカシャーは黄金製の手すりに近づくと、広場中央にいる4人の亡国の王たちを指差した。
「今すぐ、亡国の王たちを八つ裂きにせよ! そして、奴らの一族を一人残らず皆殺しにせよ!」
皇帝の命令を受けた兵士たちは、亡国の王たちを肉片と化すまで斬り刻んだ。皇帝による突然の暴挙に群衆ばかりでなく、ミリアスたち側近も恐怖した。
10日後、ランカシャーは死んだ。
皇帝ランカシャーは富裕な商人との会食中に、給仕が隠し持っていた短刀で心臓を一突きされた。その給仕は、かつて亡国の一族に仕えていた義侠心あふれる男だったのだ。




