第1話 大陸の覇者
短編連載です。
アミュール歴635年。
5つの王国を擁するアミュール大陸は戦火に包まれていた。大陸の至るところで剣と剣が火花を散らし、甲冑に身を包んだ騎兵たちが大陸全土を駆け抜け、青空には無数の矢が飛び交って大地を鮮血に染めていた。
5王国の君主たちは、我こそ大陸を統一せん、とばかりに富国強兵に励み、知謀を巡らせ、1つの城をめぐり一進一退を繰り返す。
戦乱は100年続いていた。
そのような長き戦乱と荒廃の時代に終止符を打ったのは、5王国の1つであるアムリアナの若き王・ランカシャーだった。
若干25歳の若き王・ランカシャーは、その優れた戦術と指揮のもと、敵対する4王国を次々と滅ぼしていき、ついにアミュール大陸を統一。そして、アムリアナの王都を新たな帝都とするアミュール帝国を建国、皇帝に即位することを宣言したのだった。
アミュール大陸の勝利者・ランカシャーは、敵対する4王国を滅ぼしたものの、その君主たちの命を奪うことはなかった。決して慈悲心からそうしたのではない。亡国の君主たちに、皇帝となった自身の姿を見せつけることで、彼らに一層の敗北感と屈辱を味わわせるためである。そして、その機会は、皇帝即位の式典のときこそふさわしい、とランカシャーは考えていた。
アミュール歴636年の吉日。
大陸の覇者ランカシャーは、ついに念願の皇帝即位式典に臨んだ。