表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完全版】モブ女の私がイケメン後輩にストーキングされてます!  作者: 城山リツ
♡♡ ダーリンとクリスマス 編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/58

第55話 彼ピと私のクリスマス⑤〜初めての夜

 私の名前は、花寄(はなより)さち子。

 市役所勤務八年目、会計課主任の三十歳。

 今日は嬉し恥ずかし、クリスマスイブ in 真夜中……




 ♡ ♡ ♡


 


 さち子さんの最強に天使な彼氏の鷲見(すみ)君は、さち子さんに食品サンプルのイクラ軍艦をプレゼント。それをさち子さんは大層気に入り、いつまでも手の中を見て笑っている。

 そんな幸せな空気が流れていく中で、鷲見君は少しもじもじしながら言った。

 

「毎年、誕生日とクリスマスに、寿司サンプルをひとつずつ贈ります」

 

 今日イチ良い顔をしている彼ピと、そんな嬉しい申し出に、さち子さんの胸はハッピーに輝く。

 

「ほんとに? 嬉しい! じゃあ、私はでっかい寿司桶買っておくよ!」

 

 さち子さんは寿司盛りだくさんの桶を妄想した。

 そこに敷き詰められる、綺麗で可愛い寿司サンプル達。鷲見君からの贈り物。

 毎年二個ずつ、桶が一杯になる頃にはもっと沢山の思い出が増えているだろう。


 うん? それって……

 つまりさ……


「あ、はい。是非、お願いします……」

 

 鷲見君は赤くなって嬉しそうに笑っていた。

 

「りょ、了解であります……」

 

 さち子さんも自分の発言を振り返って赤くなる。



 

 つまりは、末永く……って、いうことよね?






 

「さち子さん、ありがとうございます」

 

「うん?」

 

 頬が熱いままのさち子さん。鷲見君もまた紅い頬のまま、はにかんでいる。

 彼は、今までで一番甘やかな笑顔で切り出した。

 

鴨川(かもがわ)先輩の方に行かないでくれて、ありがとうございました」


「え? いや、それは、ねえ? そりゃ、ねえ?」

 

 改めてその事を言われるとは思わなかった。

 さち子さんは少々面食らう。だって鷲見君は……

 

「僕は、正直、ちょっと厳しいと思ってました」

 

「ええ? あんなに自信満々だったのに?」

 

 さち子さんは鴨川の件に対して、鷲見君が終始毅然な態度だったので安心していた。

 だが、鷲見君は少し罰が悪そうに言う。


「自信満々だなんて、そんな。あの人はずっとさち子さんと一緒にいたでしょう? 敵わないかもって思いましたよ」

 

「そうだったの?」

 

「僕は所詮さち子さんのアレでしたから。それよりは明るい場所にいるあの人の方が……と一瞬だけ思ったりもしたんです」

 

 その言葉にさち子さんは少し淋しくなる。

 鷲見君はすぐに顔を上げて続けた。


「それでも。こんな僕だけど、さち子さんが受け入れてくれたから。絶対にさち子さんを渡したくなくて、虚勢をはりました」

 

「虚勢?」

 

「はい。さち子さんは僕の方が好きであるという自己暗示をかけて、鴨川先輩にあんな感じで立ち向かったんです」


 そんな事までしていたなんて。鷲見君をそんな風に不安にさせていたなんて。

 さち子さんは鴨川への対処にいっぱいいっぱいで、肝心の鷲見君を思いやれなかったことを後悔した。



 

 そっか。そうだったんだ。

 それなら……


「鷲見君、それ、虚勢じゃないよ」

 

「はい?」


 キョトンとしている鷲見君を、さち子さんは真っ直ぐ見つめた。



 

 そういえば、私、言ってなかったね。


「鷲見君の自信は、本当のことだもん」


 ずっと、私を見ててくれてありがとう。

 勇気を出して、会いに来てくれてありがとう。



 

 もっと想像するべきだった。

 二十年も遠くから見ているだけで、何も出来なかった彼がやっと行動した事を。

 それには、きっと大変な覚悟と勇気が必要だった事を。


 同じ職場に通って、顔見知りになって、アプローチして。

 結果として上手くいったから、さち子さんは鷲見君の二十年越しの勇気に気づけなかった。

 告白された日を思い出す。彼は、ほぼ失敗すると見做してあんなに悲壮な覚悟もしていた。


 それを思ったら、自分はなんて怠惰。彼の愛情の上でふんぞり返って、甘えていた。

 さち子さんはそんな自分と、今、ここで決別する。



 

「私は、鷲見君が、誰よりも大好きだよ」


 ちゃんと言わないと、ダメだよね。

 ああいう事はもうないと思うけど、その度に彼が不安にならないように。


 伝えていかないと、ダメだよね。




 私の愛は、ちゃんと伝わっただろうか?

 彼の心に届いただろうか。さち子さんは目の前の恋人(こいびと)の様子をドキドキしながら窺った。


 さち子さんの愛しい彼、鷲見(すみ)恋人(れんと)君は瞳をパッチリ開けてしばし固まっていた。

 しかしすぐに、さち子さんを愛おしむ眼差しで見つめる。



 

「さち子さん」

 

「はいっ」


 彼の熱を帯びた視線が、私を射抜いていた。


「あなたに、触れても……いいでしょうか」

 

「はい……」


 彼の大きな手が、私の指先に伸びる。




 温かい。

 彼の心が温かい。

 彼の全てが、温かい。






 それから私達は、とっても熱い夜を過ごした……



お読みいただきありがとうございます

感想などいただけたら嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
鷲見くんもこれから毎年誕生日とクリスマスに寿司サンプルをひとつずつプレゼントするってやりますねぇ。鷲見くんはやるやつだと思ってたよ! 寿司サンプルのひとつひとつが思い出になっていくんですねぇ。素敵!!…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ