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【完全版】モブ女の私がイケメン後輩にストーキングされてます!  作者: 城山リツ
♡♡ ドキドキ彼ピ 編

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33/58

第33話 お迎え彼ピ

 私の名前は、花寄(はなより)さち子。

 市役所勤務八年目、会計課主任の三十歳。

 なんと最近、彼氏ができてしまった。




 ♡ ♡ ♡




 ピンポロパンポン、ポロポンポーン……


 たい、きーん!

 業務終了の音に釣られて、さち子さんは思わず大きく伸びをした。

 尋問受けまくりの月曜日がやっと終わるからだ。


「花寄さん、鷲見(すみ)くん来てるよ」

 

「なぬ?」

 

 涌井(わくい)の囁きで会計課の入口を見ると、さち子さんの彼氏である鷲見君がそこに立ってチラチラしている。

 

 あらまあ、可愛い。

 さち子さんはは自然と顔がニヤけてしまって、彼を手招きした。


「……お疲れ様です、もう帰りますか?」

 

「うん、片付けたらね。鷲見君こそ、もう帰れるの?」


 さち子さんがそう聞いたのは、彼氏と帰りたくないとかではなく、単純な疑問からだ。

 福祉課はいつも遅くまで残っている印象だ。定時に帰れるなんてレアケースである。


「今日は帰れます。でも明日以降はわからないです」

 

「そっかあ、忙しいんだね」

 

「でもなるべく残らないようにします」

 

「う、うん」


 無理しなくていいよ、と言いそうになってしまって、さち子さんは慌てて言葉を飲み込んだ。

「別に一緒に帰らなくてもいい」という風にはとられたくない。



 

 あれえ? 私は鷲見君と一緒に帰れて嬉しいのか。

 これが色惚けというヤツ? 恥ずい!


 ていうか、付き合ったら一緒に帰るとか、中学生か!

 わしは三十路女であるぞ、恥ずい!!




 さち子さんが己で己の心につっこんでいると、畑野(はたの)がニヤニヤして言う。

 

「ちょっとちょっとぉ、あんまり派手にやると一瞬で庁内にバレますよぉ」


 すると涌井もニヤニヤして付け足した。

 

「すでに一階には知れ渡ってるけどねー」

 

 お前達が派手に騒いだからだろうが。

 さち子さんがそう文句を言おうと思ったら、鷲見君はいつものもっさり淡々な感じで言う。


「まあ、それが目的ではあります」

 

「ナヌ!?」

 

 さち子さんは隣に佇む彼氏を二度見してしまった。


「さち子さんは僕のものであるということを、知らしめておかなければ」


 そして鷲見君は今度は少し眉毛に力を入れて、さらに凄いことをあっさり言ってのけた。

 何のために? とさち子さんは頭がよく回らない。


「あ、ああ、ああ。そうだよねえ、なるほどねえ」


 男同士で通じ合うものがあったのか、涌井が頷くと鷲見君も合わせて細かく頷いた。


「やだあ、鷲見くんて見た目通り重い男なんだあ」


 終業時間になって、畑野のクールナイフが復活。

 

 グッサリ刺してやるなよ、畑野。

「見た目通り」かは知らないが、さち子さんは己の彼氏が「重い男」であることは知っている。


 だが、鷲見君は特に気にしていないようだった。同期はクール耐性があるのかもしれない。



 

「じゃあ帰りましょう、さち子さん」

 

 もっさり淡々と左手を差し出す鷲見くん。

 それはまさか……


「手は繋がないけど!?」

 

「ええっ!?」


 鷲見君は今日イチ驚いていた。


 

 

 驚くんじゃないよ、私の方が驚きだよ。

 市役所には夫婦もたくさんいるけれど、おてて繋いで仲良く退勤するカップルはおらん!


 さち子さんはこの先が思いやられて、ちょっと途方に暮れる。



 

「やだあ! スーパー激重見守り彼氏じゃあん!」

 

 声が大きい! 興奮するな、畑野!


「……」

 

 がっくり肩を落としている鷲見君の背中を押して、さち子さんは早々にこの場を立ち去ることにした。

 

「とりあえず庁舎を出よう、話はそれからだ!」

 

「はい……」


 鷲見君は悲しそうな顔で、不貞腐れている風情のアヒル口。

 不満な顔で見るんじゃないよ。ほんとに距離感がすぐバグるんだから。

 

 さち子さんは鷲見君の腕を引いて出口に向かう。

 結局手を繋いで出るのと、あんまり変わらなかった。




お読みいただきありがとうございます

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― 新着の感想 ―
やだぁ~もう鷲見くんったら「僕のものである」だって!だってよ!! ぐわぁぁ!ラブラブすぎるぅ~のた打ち回っちゃうよ私は! 職場が同じだと一緒に帰れちゃいますよね みんなも興味津々で二人を見てたでしょう…
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