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【完全版】モブ女の私がイケメン後輩にストーキングされてます!  作者: 城山リツ
♡ 鷲見君の真実 編

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※第24話 追いついた僕

※印のある話は鷲見君語りで彼の過去話です。





 僕の名前は、鷲見(すみ)恋人(れんと)

 五年間必死に勉強して、とうとう市役所の試験に受かった。

 明日から、さち子さんと同じ職場だ。

 緊張で吐きそう。



 

 さち子さんが市役所に就職したのを知ったのは、さち子さんの住む市の広報誌からだった。

 何故僕が隣の市の広報誌を読んでいるかというと、催し物のスナップ写真をチェックするためだ。

 いつ、何時、さち子さんが映り込むかわからない。

 合法にさち子さんの写真を手に入れるチャンスはこれしかない。


 中学生のさち子ちゃんを、電柱の影で見ていた時も。

 高校生のさち子ちゃんを、バス停の向かい道で見ていた時も。

 大学生のさち子さんを、駅前のファストフード店から見ていた時も。


 何度、携帯カメラのシャッターを押そうとしたことか。

 その度に僕は血反吐を吐く思いで欲望と闘った。

 それをすれば、僕は激ヤバストーカーの仲間入りだ。

 一枚撮るも、千枚撮るも同じこと。一度負けたら僕のことだ、あっという間に転落してしまう。



 

 さち子さんの市の広報誌を駅まで取りに行くこと、十年以上。

 その間、さち子さんが広報誌に映り込むことはなかった。住民七万超えの壁は厚い。


 どうせ今月も載ってない。ほぼ惰性で読んでいた広報誌に、突然その瞬間がやってきた。

 新規採用職員の欄に、さち子さんの姿!

 ついに僕は真っ当な手段でさち子さんの写真をゲットした!

 長かった冬がついに明けるような気分だった。


 さち子さんが女子大だったため、なんの張り合いもない僕の大学生活は一変。

 ひたすら公務員試験の勉強と、大学で取れる資格課程は全て取った。

 

 いざ臨んだ採用試験。あえなく一次筆記試験で不採用。

 何故だ。一般教養は完璧だったはず。ならば良くなかったのは小論文。

 良い子に書き過ぎたのかもしれない。


 次の年、一般教養試験を難なくクリアした僕が挑んだ、午後の小論文。

 もっと市に寄り添う内容でなければ。

 僕は、閃いた。

 僕は十何年もかかさず広報誌を読んできたじゃないか! これだ!



 

 二度目の試験で無事に採用された僕。福祉課に配属された。

 さち子さんがいるのは会計課。同じ一階フロアだった。運命か!?


 喜んだのも束の間。渡された辞令をよく読むと。

『児童センター出向を命ずる』と付け足すように書かれている。

 

 じ、児童センター……?

 庁舎一階の福祉課ではなく、その関連施設の児童センターに行けって?


 新入職員の研修期間を終えた直後、僕は庁用車で迎えに来た児童センター長に拉致られた。

 そのまま離れ小島の児童センターに監禁。

 言葉が悪くて申し訳ない。だけど、そんな雰囲気を感じるくらいに僕の心情は最悪だった。


 灰色の社会人生活。

 何が悲しくて小学生と、カルチャークラスのおばさまに囲まれなきゃならんのだ。

 放課後の小学生を知ってるか。あいつら、マジ怪獣。

 俳句クラブのおばさまを知ってるか。会話のほとんどが近所のゴシップ。


 それでも僕は一年と半年耐えた。聞くところによると、新人は長くても三年で最初の異動がやってくる。

 あと一年半。そんな時間は、僕にしてみればなんてことない。

 二十年さち子さんを想い続けた僕のキャリアは、福祉部長クラスなのだから。




 ところが思わぬチャンスがやってきた。

 三月議会で児童センターを民間の福祉会社に委託することが決まった。提言してくれた議員、マジ神。

 十月から、センター長(次長級)職員のみを残し、他の職員は本庁舎に戻ることになった。


 僕は、採用から一年半で、他の同期よりも早い異動を経験することになったのだ。

 ドキドキして内示を確認する。


『主事 鷲見恋人  福祉課介護担当(旧児童センター)』


 イエエエエエッス!!

 ついに、ついに念願の一階勤務をゲット!

 僕に運が回って来た!



 

 初めて伝票を起案したことは覚えていない。決裁が下りたら会計課に行けるのだから。

 嗚咽を我慢して僕は会計課に向かう。伝票を持つ手が震えている。


「だからね、チョコミントって魅惑の食べ物なんですよ。青と黒のコントラストがたまらないよねえ」


 さち子さぁああん! いたあぁああ!!

 何の話をしてるかわからないけど、動いて喋ってる!!


 全てが金色に輝く、紅葉の秋。

 僕の運命はそこから大きく動いていく。




お読みいただきありがとうございます

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― 新着の感想 ―
「合法にさち子さんの写真を手に入れるチャンスはこれしかない。」←やばすぎて爆笑ですw でも執念勝ちでしたね。写真も手に入り職場を知って、自分の就職先にする。こわっ(笑) 入社してもさち子さんとすぐ会え…
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