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クエスト2・異邦人と女学生(前編)

 「レッサーワイバーンの討伐依頼?」



 俺がはじめて依頼を達成したあの日から、もう2週間になる。

その間、さながら刑事の如くレッドリザード目撃情報をかき集め片っ端から依頼を受けて来た。

全部の依頼でレッドリザードと遭遇できたわけではないが、計4体と交戦し経験を積む事ができた。 

今なら『魔術』や『スキル』に頼らずとも、強化したナイフだけでレッドリザードを倒せる筈。


 そんな中、依頼を確認しにギルドによると翼竜モンスターの討伐依頼が出されていた。

まあ、翼竜とは言ってもレッサーワイバーンは翼や牙等がかなり退化している種らしいが。

レッドリザードの討伐は慣れてきて、ナイフのみで戦えばまだしも『魔術』も使えば、

完全な「作業」になるくらいなので、そろそろ違うモンスターと戦ってみる方がいいかもしれない。

内容を詳しく確認しようと依頼書に近付く。



 「契約金銀貨4枚、報酬金金貨2枚、ランク制限は・・・・・・無し、俺も受けれるな」


 「邪魔、どいて」


 「って! おい、俺が受けようとした依頼だぞ、それ!」



 なんと、俺を押して割り込んできた少女はレッサーワイバーン討伐の依頼書を、

受付に持っていこうとしているではないか。



 「へぇ、体が細くて武器もナイフしか無いようなあんたが? てっきり薬草採取の依頼でも

  探しているのかと思ってた」


 「くそう、俺は細マッチョなんだ! 

  と、とにかく、それは先に俺が受けようとしていた依頼だ。返してくれ」


 「あたしが先に依頼書を取ったんだから、あんたに渡す必要なんて無いじゃない」



 面倒な事になったな・・・・・・本音を言えば、もうこいつと関わりたくないんだが、

そうすると、次にまた依頼がくるまでレッサーワイバーンと遭遇できないかもしれない。

俺は、妥協案を出すことにした。 



 「なら、あんたと俺で契約金を払い、パーティとして依頼を受けるというのはどうだ?

  冒険の最中で俺を足手纏いだと思ったなら、報酬金の分配はあんたが決めていい」


 「その条件を本当に守るっていうなら、あたしはそれでもいいけど?」


 「わかった。もし何事もなく依頼を達成したら、報酬金は山分けでいいよな?」


 「何事もなく達成したら、ね」


 「よし、成立したな。一応はパーティを組むことになるし、名乗っておくよ。

  俺はタツキ・アンドーだ。あんたの名前は?」


 「ファディア国立魔術学校、高等教育課程2年、リリア・カラードよ。それなりによろしく」



 魔術学校の学生か、通りで魔力量が多いわけだ。

でも、高等教育課程を終了していないなら、俺の方が知識は上だよな?


 それにしても、さっき会ったばかりの男の冒険者とこんな簡単にパーティを組んでいいんだろうか。

たとえ、襲われてもなんとかできると思っているんだろうか。

・・・・・・思ってるぽいな、あいつプライド高そうだし。

まあ、みる限り魔術師としての実力は駆け出し冒険者にしてはかなりのものだし、

最悪の場合でも相性の良くない相手とパーティを組む時の注意点くらいは分かるだろう。

いくらか投げやりな思考になりつつ、受付へ依頼書を持っていくリリアについていった。


 

 








 今回の依頼書に示されていたのは最近通い詰めていた森ではなく、薄暗い洞窟だった。

洞窟の入り口手前で馬車から降りて、足下に注意して入っていった。

依頼の達成期限は4日後だという事で、なかなか見付けられない可能性を考慮し、

携帯食糧や寝袋等を持ってきていた。しかし、魔術で明かりを灯せるとはいえ、

光源を確保する手段は準備していなかったため、 松明たいまつが必要だったか、

と後悔したがリリアはポーチからランタンのようなものを取り出し、明かりをつけた。

どうやらマジックアイテムの類いらしい。



 「あんたは視界を確保する手段、用意してないの?」


 「ある程度は気配で分かるし、明かりを灯す魔術も使えるさ」


 「・・・・・・そう言われれば、確かに魔力を感じるわね」



 俺が魔術を使えるという事にようやく気付いたらしい。

まあ、強力な魔術を少ない消費で使用できるとはいえ、俺自身の魔力量は多くないしな。

分からなかったのも無理はないか。 

そんな会話をしたりしなかったりしつつ、洞窟の奥へと進んでいった。



 




 



 「近くに、モンスターがいる」


 「・・・・・・何でわかんのよ」



 何で、と言われると説明に困る。そういうスキルだから、としか返しようがない。


 一般に『スキル』とは、

神に祈って一時的にすさまじい身体能力を得たり傷や病気を治す、というようなものだ。

しかし俺のもつ『スキル』は応用のきく範囲が広く扱いきれていない今の状況でも多くの利用法がある。器用貧乏とも言えるが。

『スキル』は分かりやすく特化していると思いこんでいるだろうリリアに上手く説明できる気はしない。頭、固そうだし。

グレイアさん達に説明するのであれば根気強く頑張れる気もするが、

相性の良くない相手にそこまで出来るほど、俺は人間できてない。


 

 「勘でしかないが、警戒するに越したことはないだろう?」


 「警戒なら常にしてるわよ」


 「・・・・・・そうかい」



 やっぱり、説明しなくて良かった。

こんな調子でそんな『スキル』はありえない、とぐちぐち言われただろう。

目の前で使えばイヤでも信じざるをえなくなるだろうし、そのときが来るまで適当に誤魔化しておこう。


 そして、俺の予想通りモンスターが3匹現れた。

リリアの魔術はレッサーワイバーンに対する切り札になるかもしれない。

魔力を雑魚相手に消費させる事は得策ではないと判断した俺はリリアを制し、

ナイフに闇を纏わせつつ身体強化の恩恵を存分に活かし跳びかかった。

幸い同種のモンスターを何度も討伐していたこともあり、危なげなく1体にナイフを突き刺す。

残る2体も瞬間的に超強化されたパンチとキックで頭蓋骨を砕かれ、即死した。

突き刺したナイフを回収し一息ついていると、リリアが驚いた表情で近づいてくる。



 「・・・・・・あんた、本当に人間? 今の跳躍力も、モンスターを直接攻撃した腕力と脚力も、

  いくら冒険者とはいえ、とても人間の出せる力じゃないわよ・・・・・・」


 「失礼だな、俺はれっきとした人間だ。身体能力を強化するスキルを使ってるだけだ」


 「冗談いわないでよ。

  事前の儀式も、軽く祈りを捧げる事すらせず発動するスキルなんてある訳ないでしょ」


 「だったら今のは何だ? 

  それに冗談と言うが、お前はスキルや神の全てを知っていて、そう言うのか?」



 こう返してやると、リリアは沈黙した。心なしか、俺に怯えているようにも見える。

今まで細身の駆け出し冒険者だと思っていた男が化け物のような身体能力を持っていたのだから、

無理もない気がするが。

気まずい雰囲気ではあるが、リリアがつっかかってこなくなったのでとりあえず気にしない事にした。

・・・・・・結構、気になる・・・・・・










 何事も無くレッサーワイバーンを探しつつ洞窟を冒険する俺達だったが、途中で問題に直面した。

この洞窟はある程度整備されているらしくこれまでも橋やハシゴ等があったのだが、

ここに来て、大きな縦穴に架かっている橋が壊れている場所を発見してしまった。

この橋の先に進めないと行き止まりになってしまうのだが、どうすればいいだろうか。



 「俺だったら、向こうまで飛び移るのも可能だよな」


 「ここを飛び移るつもりなの!? あんたバカじゃ・・・・・・いえ、何でもありません」


 「さっきまでの元気が戻ったかと思ったのに。そんな怯えなくていいよ、何もしないからさ」



 リリアはリリアで、さっきからこんな調子だし。

静かになったとか喜んだ俺が言えた事じゃないが、こいつがしおらしくしてると違和感しか感じない。


 そんな異常に見えるかなあ、このスキル・・・・・・ 

軽くチートだとは思うけどあくまで駆け出し冒険者だからそう感じるのであって、

中堅冒険者と戦闘能力を比較したら、全然強くないと思うんだが。 


 そりゃ、力だけなら瞬間的に雑魚モンスターを殴り殺せるぐらいになるけど、

戦闘技術は素人に毛が生えたようなものだし。

与えられた『スキル』をフルに活用すればレッドリザードを一瞬で倒す事もできるけど、

それは中堅以上の冒険者も『スキル』を使わずにできる事だ。

まあ、いつまでも悩んでいるわけにもいかない。こうしている間にも期限は近づいているのだ。



 「リリア、どうにかして俺につかまれ。飛び移る」


 「つかまれって言ったって・・・・・・できないわよ、そんな事」


 「なら俺ひとりで行こう」


 「あ、ちょっと待って! わかったわよ、まったくもう・・・・・・」


 

 迷う素振りを見せたので、時間も惜しいしひとりで行こうとするとあせって引き止めてきた。

なにやら、体がぶつかるだの、まだ男に触られた事がないのにだの、ブツクサ言っている。

そんな事を気にしてたのか。いや、女の気持ちなんて分かんないし、重要な事なのかもしれないが。

でもはっきり言って、俺は意識していなかったので問題無いと思う。

それを言うのは流石に失礼だろうから、黙っていたが。



 「仕方ないからあんたに任せるけど、変なとこ触ったら承知しないからね!」


 「安心しろ、そんな気は全くない」


 「うー、少しくらい気にしなさいよ!」


 「どうしろってんだよ・・・・・・」



 意識すればいいのか、しなければいいのかどちらかでハッキリしてくれよ。

そう思いつつリリアを背負い、橋の直前でおもいっきり踏み込み、強化した脚力で宙に舞った。

飛び越せると判断し実行したわけだが、下に何もない所を改めて見ると、少し恐い。

背負われているリリアの恐怖は俺以上らしく、必死にしがみついてくる。


 ・・・・・・そんな抱きつかれると、柔らかい感触とかが背中に伝わってくるんだが。

いくら相性が悪いとは言っても、女に抱きつかれた事なんてないため、ドキドキする。

長いようで短い時間も終わり、橋の向こう側へと無事着地に成功する。

ほっと一安心し、リリアを降ろそうとすると、しがみついたまま離れない。



 「おい、リリア。もうついたぞ」


 「・・・・・・」



 何やら頬を赤く染め、惚けている。はっ、まさかこれがフラグがたったという状況か!?

・・・・・・いや冷静になれ、クールに行こうぜ俺。そういうモテない高校生特有の思考は止めよう。

なにかしらの理由があってこうなっているんだろうが、見当もつかない。

今日会ったばかりで、リリアの事なんてほとんど知らないしな。

このまま先に進むわけにもいかないので、リリアが再起動するのを待つことにした。


 



 「ふぇ? ここ、どこ?」


 「ふぇ、じゃないよまったく・・・・・・」



 気の抜けた声を出して、ようやく辺りを見回しはじめたリリア。

身体能力は強化されているから、背負っていても疲れはしないが動きづらい感じがして嫌だった。

じゃあ降ろせばいいじゃないか、と言われるかもしれないが一言で答えよう。

俺はモテない高校生。後は分かるな?  もらったチャンスは逃さないのさ!



 「な、何であんたがくっついてるのよ!」


 「どちらかと言うとお前がくっついてる方なんだが」



 あわてて俺から離れるリリア。そこまで嫌だったか?



 「変なとこ、触ってないでしょうね・・・・・・」


 「別に? お前がぼーっとしてたから抱えてただけだ」



 嘘は言ってないな、うん。そういうことする度胸がなかったとも言えるが。



 「いったい、さっきは何でボケッとーーーーーーっ!?」



 2週間ぐらいの訓練で半径20メートル程に広くなった探索領域が巨大な飛行物体を捉えた。

形状や害意の有無から判断するに、おそらくレッサーワイバーンだろう。

しかし、体勢が整っていない今の状況では、即座に戦闘へ移行するのは困難だ。



 「リリア! レッサーワイバーンが来る、今すぐに準備しろ!」


 「え? 何でわか・・・・・・」


 「いいから、速く!」



 有無を言わせない強い語調で聞かせ、俺自身もナイフに闇を纏わせた時、

洞窟の壁に空いていた横穴から青い表皮と赤い翼膜のレッサーワイバーンが飛び出してきた。

レッドリザードもたいがいだったが、地球上ではおよそお目にかかれない、ファンタジーな生物だ。

ワイバーンの中では退化している種らしいが4メートル程の巨体は俺を恐怖させるには十分だった。

それでも怯まず行動できたのは近くに人が、それも自分と同じか年下の少女がいたからだろう。


 レッサーワイバーンに注意を向けつつリリアの様子を確認すると、

多少震えているようだったがしっかり杖を構え敵を見据えている。あれなら大丈夫だろう。

リリアが攻撃対象にならないように、ワイバーンとの間に入りつつ声を出し、軽く注意をひく。


 

 「リリア、俺が前に出て攻撃するから魔術で援護してくれ。大技を出せそうなら合図するんだ」


 「わかったわ!」



 事前にリリアの使える魔術については聞いている。

初級の魔術はほぼ全て、中級魔術も最もポピュラーな攻撃魔術は使用できるらしい。

もう完全に恐怖は振り切った様子のリリアが魔術の詠唱に入るのを確認し、ワイバーンに突進した。


 本当なら俺も魔術で先に奴の動きを止めたかったのだが、簡単な物しか使えない、

とリリアに言っているので基本的には使わないで戦うことにする。

まあ、俺とリリアのどちらかに危険が迫れば躊躇する気はないが。



 「ダークショット!」



 闇の力は既に見せているので、こっちを牽制に使うことにする。

『ン・カイの闇』は切り札に使うタメが長く威力が高いもの、というイメージで固まってしまい、

気軽に使える物で無くなってしまったので、新しく牽制用の攻撃方法をあみだしたのだ。

発動も弾速も速い小さな闇が数発向かっていき、炸裂する。

威力は高くないものの、炸裂する時の衝撃は強いのと見た目が派手なので怯ませる事には成功した。

そして、接近しつつナイフで足の間接部を貫く。

だが、流石に一撃で間接を破壊する事はできず、ワイバーンはそのまま足を動かし、

俺を弾きとばそうとする。とっさに飛び退こうとするが、そこへリリアの魔術が発動する。



 「『強襲する冷気』! あんた、準備しなさい! そろそろ中級魔術を使えるわ!」


 「了解!」

 


 リリアの魔術によって、ワイバーンの表皮の一部が凍りつき、動揺させる。

その隙に俺はもう一度だけ足の間接部を攻撃し、リリアの邪魔にならないように移動する。



 「喰らいなさい! 『強襲する烈火』!」



 リリアの杖からレッサーワイバーンすら覆うほどの巨大な炎が放たれ、直撃する。

全身に火がつき、甲高い叫びをあげながら苦しげにのたうち回っている。



 「やった!?」


 「! まだだ、まだ明確な害意が残っている! 気を付けろ!」 



 俺の探索領域に、攻撃する意志の残っているワイバーンが体勢を整えているのが感知された。

大技を使った事により、隙のできたリリアに注意を促す。

だが、少し遅かったようで、ワイバーンは力ずくで炎を振り切り、

全身が焼け爛れた状態のまま低空飛行でリリアに突っ込んでいく。



 「ひっ!?」


 「畜生、間に合え! 『加速する五体』!」



 領域を脚力強化に設定し、更に全身を加速させる魔術も使い全力でワイバーンへ追走する。

ギリギリでワイバーンを追い越し、リリアを抱える事に成功する。

しかし、もう寸前までワイバーンが迫っており回避が出来ない。

このままでは2人揃ってお陀仏だ。そう判断した俺は闇を鎧に注ぎ込み、背中で攻撃を受けた。



 「がっ、はぁ!」


 「タツキ!?」



 闇で強化されて、やたらとゴツくなった鎧は砕けなかったものの、

衝撃を殺す事は流石に出来ず、俺と、俺に抱えられたリリアは凄まじい勢いで弾きとばされる。

って、ちょっと待て。この方向はさっきの崖がある方向!?


 

 「くっ!?」


 「きゃあああ!?」



 ーーーーーーそして、俺達は大きな縦穴の上に投げ出された。 



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