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クエスト3・異邦人と魔術学校11

 さて、あれから十日程たち諸々の問題がどうなったかと言うと。

まずシグ・ゴーツらは、違法な魔術と人に向かって不正に攻撃魔術を使用した容疑で逮捕された。

しかし「刷り込み」の魔術はそう簡単に使用出来る物では無いようで、

古い魔術書やマジックアイテムの力を借りなければ覚える事すらままならないらしい。

当然どこでどうやって覚えたのか厳しく追及されたみたいだが、どうもはっきりしないらしく。

裏で違法な魔術を供給した存在がいるのではないかと、捜査は拡大したみたいだ。


 そしてこんな事が起こったが、魔術学校の行事は普通に続行された。

と言うより、そういう事件があったと言う事自体を学校側が広めなかったのだ。

俺達の所にも個別に偉そうな人が来て、口止め料を渡してきた。

この話題が広まり、リリアが好奇の視線で見られてもかわいそうだと判断して受け取ったのだが。

後から聞くと受け取ったのは俺だけだったらしく、皆から凄い微妙な視線を向けられ焦った。

リリアがこの話題で不利益を被らない様に黙っている、と言う意思表示だと弁明したのだが、

それにしたって受け取る事はないだろうとか言われた。

・・・・・・いや、確かに空気読まない行動だったかもしれないけどさ。

 

 とにかく学生や冒険者の試合は何事もなく進み、大盛り上がりの内に終了した。

俺達の試合の結果がどうなったかと言うと。

俺が冒険者の部で第三位、リリアは学生の部で第二位、カレンは同じく学生の部で第三位。


 俺は順調に勝ち進んでいたのだが、準決勝でついに中堅クラスの冒険者に当ってしまい敗れた。

やはり魔術が使えない試合だと、俺の戦闘能力はある程度までしか発揮できない。

セレンさんから教えてもらっている体術も、付け焼刃以上の効果はまだ出ていないようだ。

惜しいところまで追い詰めたとは思うのだが、最後の最後で剣を叩き落されてしまった。


 リリアとカレンは見るからにエリートそうな銀髪の男子にやられていた。

魔術師としてあらゆる点で二人の上をいく相手で、ことごとく魔術の発動を潰されていた。

リリアと同じようなタイプの魔術師なのかと思えば突如中級魔術でラッシュをかけ始めるし。

二人とも最初から最後まで力を出し切れなかったという感じだった。


 全試合が終了し、好成績を残したし何か景品でも出るのかと思っていたが特になにも無かった。

結構ガックリしたのだが、人との模擬戦と言う中々ない事で戦闘経験は積めたかと考え直した。

事実、他人の戦闘方法や魔術の使い方を沢山見れたのは大きかった。

セレンさんから効率のいい動き方を教えてもらえたし。

最初はどうなる事かと思っていたが、終わってみるとかなり良い経験になったな。


 そして、リリアの今現在の状況なんだが・・・・・・

悪化していると言うのかある意味落ち着いてると言うのか、微妙な事になっている。

当初のように突発的におかしくなるような事は無くなったのだが、

逆に普通にべったりくっ付いて来るようになってしまった。

可愛い事に間違いは無いし、俺も悪い気はしないんだけど・・・・・・

カレンやらエルちゃんにからかわれるし、理性がもつか心配と言うのもあり落ち着けない。

リリアはからかわれても満更でも無いといった感じだし、理性うんぬんも肯定されそうで怖い。


 皆と話し合いの結果一回俺一人でルガーラに戻り、リリアはジオの教会に連れて行く事になった。

金さえあれば大体の異常は一瞬で治してくれるそうだし、すぐにリリアも合流できるとの判断だ。

まあ、面倒くさい事になるのを防ぐために俺は遅い時間帯に夜逃げの如く駅に向かう訳だが。



 「それにしても、数ヶ月前森の奥で記憶喪失の君を見つけた時は、

  こんな事になるとは思わなかったね。やけに勘が鋭いとは感じたけど」


 「そうですね。あの時は魔力も何も感じなかったのに、

  今では駆け出しとは言え立派な冒険者の一員ですよ」


 「はは、ありがとうございます。これからも精進していきますよ」



 話し合いが一段落し、ジャックさんとセレンさんが話しかけてきた。

俺がルガーラに戻れば、また暫くは会えなくなる。数日後には冒険者の仕事に復帰するらしいし。



 「もう少し時間があれば、まだ教えられる事もあるのですが・・・・・・」


 「いえいえ、十分に助かっています。何から何まで世話になるのも悪いですし」



 セレンさんには本当に頭が上がらない。

ナイフをくれた事もそうだし、戦い方を教えてくれた事もそうだ。

短めの期間ではあったが基本的な動きはほぼ身に付いた。

後は自分なりに工夫して技術を高めるべきだろうな。



 「さて、そろそろ行きます」



 善は急げ、と言う事でさっさとルガーラに戻る予定になっていた。

リリアに気付かれない内に行動した方が良いだろうと考えたからだ。

話し合いを始めたのがリリアが部屋に戻った夜10時頃からで、今の時刻は夜11時だ。

寝るのが早くないかと最初は思っていたのだが、この世界には携帯電話もゲームもテレビも無い。

せいぜい読書くらいしか夜更かしするような要因は無いのだ。

やる事が無いのにいつまでも起きてるなんて人もあまり居ないだろう。


 ちなみにグレイアさん達はこの遅い時間帯にわざわざホテルから来てくれた。

有り難いが、脱け出してきて大丈夫なのかな? 少し不安だ。


 リリアが熟睡している事をレナさんが確認し、俺は駅に向かう準備をする。

この街で新しく買った剣と防具、そして厚手の黒い外套を身に纏う。

剣と防具は両方とも金属製で、外套は鎧の上からでも着れる冒険者用の物だ。

最初は痛いコスプレみたいで買う気はなかったのだが、ジャックさんに

ある程度以上の実力がついてきたら自分を強く見せるためのカッコつけも必要だと言われ、

色が好みで、更に多少の温度調節もできるらしく実用性があるので買う事に決めた。

決して厨二的なフィーリングに従った訳では無い。決して。



 「また冒険者の試合等で会う事があるかもしれない。 ・・・・・・無理はするなよ」 


 「・・・・・・またね」



 準備を終えた俺に、グレイアさんとエルちゃんが声をかけてきた。

エルちゃんはグレイアさんに寄りかかって半分眠ってるような感じだけど。

それにしても、この二人本当に仲良いな。

演劇部の友達の家に遊びに行ったときの兄妹喧嘩に、俺は素でビビった事があるんだが。



 「グレイアさん、もしカレンに会ったらまたよろしくと伝えてくれませんか?」 


 「分かった。しっかり伝えよう」



 最後に皆に向かって礼をしてから、俺はリリアの家を出た。

色々な意味で疲れる二週間だったが楽しくもあった。

リリアも次会う時は元に戻っていますようにと願いながら、夜の街を駅に向かって歩くのだった。



 「ふっ、お嬢さん。俺に惚れると怪我するぜ」


 「おお、覆面健康法を伝授してくださった冒険者の方でしたか」


 「げえっ、その声はいつぞやのお爺さん! なんで今ここに居るんですか!?」


 「覆面を被って夜に散歩するのが日課になりましてな」



 どうせ誰もいないからと外套を揺らしながらノリノリでハードボイルドを気取っていると。

なんとあの時のお爺さんに遭遇してしまった。信じて本当に実行したのかよ!?

しかも何か自分なりにアレンジしちゃってるし・・・・・・

この所、どうもしまらないなあ。



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