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紙飛行機で恋文を

作者: 竹内 紗良

大好きだったナオエばあちゃんが亡くなり、私は遺品整理をしていた。


仏壇入れの下に、古びているが上品な和紙が貼ってある箱を見つけた。

蓋を開けるとほんのりといい香りがした。


便箋が10枚以上はあるだろうか。

その上に香り袋が乗っている。

まだわずかに香りが残っており、この箱の中身を大事にしていたのだとわかる。



「これは…手紙?」


手紙のようだが封筒はない。

便箋には縦横斜めと左右対象の折り目がついている。

一番上の便箋はまだ新しさが残っているが、それ以外はとても古く紙は黄ばみ、インクも薄くなっている。


私は一番上の便箋を手に取り読みはじめた。


それは10年前に亡くなった祖父からの手紙だった。



『ナオエへ

お前に手紙を書くのは何十年ぶりかな。

一緒になってからは書いていなかったかもしれない。


思えば高嶺の花だったナオエに振り向いてもらいたくて、野郎共からの手紙に埋もれないよう手紙に想いをしたため、紙飛行機にしたのが始まりだった。


通学路で待ち伏せして紙飛行機を飛ばして、ビックリしてアンコ玉のように真ん丸な目をして拾ってくれたのを見て恥ずかしくて逃げて。


それから何回も同じように紙飛行機を飛ばし、振り向いてくれたときは嬉しかった。

そしてこうして一緒になれたことは今でも一番の自慢。


一緒になってからは照れくさくて手紙を書くことはなくなってしまったが、もう一度書いてみようと思い書いています。


あの時と同じように紙飛行機にして、いつ飛ばそうかなと考えるとあの頃の自分を思い出し、ドキドキしてしまった。


そろそろ終わりにします。

やっぱりこういうのは照れくさいね。


3人の子供達が産まれてからも、子供達が結婚して私達がじいちゃんばあちゃんになっても、今も変わらずナオエのことを一番大事に思っています。

これからもずっとね。


2014年11月10日

ジュウゾウより』



ジュウゾウじいちゃんが亡くなる1ヶ月前の日付だった。


それ以外の手紙は、この手紙より更に50年も前のものだった。


自分の死期を悟り、大好きなナオエばあちゃんに最後に恋文を書いたんだね。



私は最後のじいちゃんからの手紙をついている折り目通りに折ってみた。


紙飛行機にしてどうやってばあちゃんに届けたのかな?


私は窓を開け、その紙飛行機の恋文をじいちゃん、ばあちゃんのいるお空に向かって高くかざした。

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― 新着の感想 ―
紙飛行機の恋文というネタ自体は陳腐なテンプレですが、本作は「遺品」からの回想と想像という面白い処理をしていて、なるほどテンプレも馬鹿に出来ないと感心しました。 (死に際の爺のロマン臭さには、ちょっと呆…
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