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91.最終決戦その3

☆☆☆


煙がはれ、あたりが静まり返る。ブールの体に開いた大きな穴から、人間の色ではない血が流れ、地面に染みを作る。ブールはばたりと倒れ、声にならないうめき声を上げた。


「や、やった...!」


「...ぅう、ん?あれ...?あっ!あいつ倒れてる...!」


セルクさんと、いま目を覚ましたシエルさんが、顔を見合わせて喜んでいた。俺とユイナ...唯は、2人してブールに近づく。そして...


「「消え失せろ」」


地面にできた染みを思いきりぶん殴った。地面の染みは叫び声をあげ、煙を上げて消え去った。


「意地汚い奴め、この期に及んで逃げようとするとはな。」


「でもこれで、ほんとに全部終わったね...おにぃ。」


「あぁ...」


俺はちらりと唯を見る。ユイナの姿ではあるが、中身は完全に唯だった。


「なあ、いったいどういうことなんだ。なんで唯がここに...」


「...私、怒ってるんだよ」


唯がうつむいていう。


「おにぃが逮捕されてから、ずっと一人ぼっちだった。お友達も離れて、家には張り紙がいっぱいはられて...」


「...ごめん、俺は...」


「ううん、怒ってるのはそこじゃないよ。おにぃはお父さんとお母さんの仇を打てくれたんだもん。...怒ってるのはね、あの最後の手紙。」


「手紙...ああ、あの時書いたやつか」


そういわれて、俺は拘置所の教誨室(きょうかいしつ)で書いた、妹宛ての遺書のことを思い出した。


「ようやく死刑執行後に遺書があるって持ってきてくれて。中になんて書いたか、おにぃ覚えてる?」


「いや...」


その場の思い付きで書いたものだったし、あまり覚えていないのが実際のところだ。すると、唯はため息をついた。


「『...いろいろ迷惑かけたな、こんな兄でごめん。父さんと母さんに会って、叱られてくるわ。俺のことはキレイすっぱり忘れて、幸せになってくれ。』...これが、遺書の内容。」


「よく覚えてるな。」


「これまで何度も手紙を書いたのに、一回も返事はくれなかった。そんなおにぃからの手紙だよ?覚えてるに決まってるじゃん。」


そういった後に、妹は俺の胸ぐらをつかんだ。


「ふざけてるの?忘れられるわけないじゃん。おにぃはずっと、私のためにいろいろやってくれたし、やさしくしてくれた。守ってくれた。命を懸けてくれた。...私はね、おにぃのことが好きなの。兄としてじゃなくて、異性として。そんな人のことを忘れろって?ふざけないでよ!!!」


唯は叫んで、俺の胸元に顔をうずめる。


「...忘れられるわけ、ないじゃない。あなたがいない世界なんかで生きたくない。」


「...お前、まさか。」


「最初のうちは頑張ったよ?おにぃの頼みだもん、一生懸命やったよ。...でもダメだった。おにぃのいない世界は、耐えられなかった。...おにぃが死んでから3回目の命日、私は自分で命を断った。お父さん、お母さん...何よりおにぃに会いたかったから。」


「...っ」


「で、目覚めたらこの世界にいた。違うお父さんと違うお母さん、違う私...そして、おにぃがいた。」


「...え、まさか気づいて...?」


「すぐわかったよ、昔のおにぃのまんまだったもん。ユイナとして過ごしている間、ずっとおにぃのことを見てた。おにぃがユイナを通して私のことを考えてるのも、お見通しだよ?」


そういわれて、顔が急激に赤くなるのがわかった。は、恥ずかしい...!全部バレてた!!


「だから...」


そういうと、妹は俺の手をつかんだ。


「だからおにぃ、これからは私とずっと一緒にいよ?兄妹じゃなくて、夫婦として。」


☆☆☆


「「「...はぁ!?」」」


俺だけかと思ったその言葉は、別の方向からも聞こえてきた。それは、セルクさんとシエルさんだった。


「ちょっとそこ!あなた妹なんでしょ!?ダメに決まってるじゃない!」


シエルさんが妹に近づきながらそういう。


「き、近親相○はだめなんだぞ!!」


セルクさんも近づきながらそういう。


「ふふん、そんなの私の愛の前では意味が...いっ!?」


唯がつかんでいた俺の手を放し、手を引っ込める。ひっこめた手をよく見てみると、見たことある形のやけどを負っていた。...そう、龍の紋章の、やけどを。


妹も、ブールの攻撃をその身に受けていた。その時の傷が、手のひらにできていたのだ。血のつながりがあるから、多少抵抗はあるようだが...それでもやはり、魔族の呪いは妹にも牙をむいていた。


☆☆☆

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