90.最終決戦その2
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...その時、自分の前に別の魔力壁が展開され、すんでのところで攻撃を防いだ。それどころか、徐々に敵の攻撃を押し返している。
「なっ!?」
「これは...?」
2人して驚愕する。そりゃそうだ、あの攻撃を防ぎ、そして押し返すほどの力を持つものが、俺たち以外にいるとは思わなかった。というか、一体だれが...?なぜ、俺の手助けを...?
その答えは、後ろから聞こえた声にあった。
「ここにいたんだね、お兄ちゃん。」
その声は、聴いたことがある声で。
「ユイナ...?」
その姿は、イグニの妹であるユイナで。
「...ううん、違うよ」
そして...
「...ユイナじゃなくて、唯だよ、おにぃ」
俺の...沢渡文哉の妹だった。
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「え、あ、え...?」
間抜けな声が出てしまった。だって、俺の目に前にいるのは、絶対にここにいるはずのない人物だったから。それは、イグニの妹としても、文哉の妹としても。
「急に言われても呑み込めないよね...私もそうだったし。でも、本当のことなんだよ。」
にっこりとほほ笑む妹。信じがたいけど、その目はあいつに似ていた。そして、あいつは冗談が嫌いだた。だから、これはきっと本当で。
「...っく、さすがにきついね...こんなのとずっと戦ってたんだね、おにぃは...!」
片膝をつき、苦しそうな声を上げる妹。押し返していた攻撃は、ちょうど真ん中あたりで拮抗していた。俺は妹のそばへ行こうとするが、ついさっきの光景がフラッシュバックする。俺が近づいた瞬間、シエルさんとセルクさんが傷ついた、あの光景が。
近づいたら、妹まで傷つけてしまうんじゃないか...そう思い、躊躇してしまう。
「...く、ぅ..!」
じりじりと押されていく。このままじゃジリ貧だ...くそっ!!
「唯!」
俺は近づいて、右手で妹の手を支え、もう片方の手を妹の背中につける。なりふり構ってなどいられなかった。俺の全力の魔力を、妹へ送る。幸い、妹が傷つく様子はなかった。
「おにぃ、無理しちゃ...!!」
「無理してんのはお前もだろ!?一緒に無理して、あいつを倒そう!そうすれば、みんなまた平和に暮らせる!今度はもう一人にしない、ずっと一緒だから...!!」
「...!!」
妹はハッとし、目に涙を浮かべる。けれど、泣くことはせず、キッと敵を睨みつけた。
「はっ、たかが一人増えたところで...!」
「一人増えた?何を勘違いしてる...!」
「私たちは2人じゃない!」
「イグニの思いを!フリートの覚悟を!」
「ユイナの心を!両方の世界の両親の愛を!」
「「この世界に住まうみんなのこれまでを、背負ってるんだよぉぉぉぉぉ!!!!」」
魔力壁は、いつの間にか槍へと姿を変え、敵の攻撃を真正面から貫いていく。押されていたところから、一気に突き進んでいく。槍からこぼれた敵の攻撃が、2人の身をかすった。
「こんな、馬鹿な...!!」
「「いっけぇぇぇぇぇぇ!!!!!」」
俺たちは心から叫ぶ。...そして
「が...はあっ...!!!」
俺たちの攻撃は、ついにブールを貫いた。
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