86.圧倒的な力
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「い、いったい何が起きたんだ...?」
俺は理解が追いつかず、目をぱちくりさせる。間違いなく死角からの攻撃だったはずだ。攻撃がよけられるはずがない。力もスピードも、これまでより何倍も上がっているというのに...
「...おかしい」
セルクさんがふとつぶやく。
「以前相まみえたときは、ここまででたらめな強さじゃなかったはずだ。あれから月日がたったとはいえ、ここまで強くなるものなのか...?」
それは、以前に戦ったことがあるからこそ持つ、至極まっとうな疑問だった。それを聞いて、魔王の側近は深くため息をつく。
「だから目障りなんですよ、下手に私を知っている人がいると。まあどうせここで全員殺すんだし、どうでもいいですが。」
ため息を続け、側近は話し出す。
「魔王の側近、というのは仮の姿。私は魔王を生み出し、力を与えたものだ。名をブールという。魔王がとんだ腑抜けに成り下がったのでな、力を元に戻したのだ。」
「なんだって...!?魔王の生みの親...!?」
「もともと魔王などただの偶像、泥人形に魔力の心臓を詰めただけのハリボテだ。前回の戦いで魔王が敗れたため、もっと強固なものを作り出したのだが..やれやれ、これでは最初から私が出ていたほうがよかったな。」
そんなことを言う魔王の側近、もといブール。俺は冷や汗をたらしながら、なお睨みつける。
「はっ...いいのかよ、正体バラしちまって。お前を倒すためのヒントを与えているようなもんだぜ?」
「これで策を思いつくなら、ぜひやってみてください。どうせなら死ぬ気で抗ってみてくださいよ。まあ、どんな作戦を立てようと、あなた方は所詮は人間。どうせ私が勝つでしょうからね。」
「言ったわね...!全力ぶつけてやるから覚悟しなさい!!」
「私もできる限りのことをしよう!勇者たちの恨み、ここで晴らしてやる!」
2人が臨戦態勢になる。
「2人とも...よっしゃ、やってやろう!!お望み通り抗ってやるぞ!!」
俺たちは3人でとびかかる。それぞれがもつ最強技の予備動作を終了させ、奴の顔面めがけて叩きこ―
「うざったいんですよ蠅どもが!!」
瞬間、ブールは俺たちの前から姿を消す。俺は瞬時にブールがどこに行ったか読み取り、その方向へ拳を振りぬいた。
...が、誰の攻撃もあたらず空を切る。俺は瞬時に切り替えて、敵がいるであろう方向に蹴りを繰り出すが、やはり当たることはなかった。
「そこで寝てろ、虫けらが!!」
そんな声がした瞬間、地面が爆発を起こした。訳も分からず、俺たちは直撃してしまう。どこにいるのかわからない、どこから攻撃が飛んでくるかもわからない。まさに絶望的だった。
幸い俺はまだ動ける。...が
「2人とも、大じょ...う!?」
2人は床に突っ伏し、装備は崩れ、背中に大きなやけどができていた。...それは、どこかで見たマークのようなやけど跡だった。
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