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85.油断も隙も無い敵

☆☆☆


「おや、遅かったではないですか。魔物などもう誰もいないのですから、そんな慎重に進まなくていいんですよ?」


魔王と魔物の亡骸の中心に、貼り付けたような不敵な笑みを浮かべる人物がいた。メガネをかけ、白衣を着た糸目の人物...そいつを見た瞬間、体が身震いを起こす。俺の中の何かが、本能的に危険信号を出している...?


「お前は...確か、魔王の側近の...!」


セルクさんはそういって、腰から剣を抜き、構える。


「おや、私のことを知ってくれている方がまだいたとは...光栄ですよ」


そいつはセルクさんを見据える。すると、そいつはうっすらと目を開けた。


「だが、同時に目障りです。」


「危ないっ!」


本能的に危険を察知したため、思いっきりセルクの手を引く。その瞬間、さっきまでセルクがいた場所に、無数のビーム砲のようなものが降り注いだ。もうコンマ数秒遅れていたら、今頃セルクは消し炭になっていただろう。


「な...」


「容赦ないわね、あいつ...」


セルクは絶句し、シエルは冷や汗をたらしていた。


「ちょっと、邪魔しないでくださいよ。せっかく痛みを伴わずに消してやろうとしてあげているのに。」


「あいにく、こいつらを生かせと、手を出させるなと、俺の中から声がするものでね。」


「...なるほどなるほど。あなたはすでに何者でもないのですね。」


「ちっ。わかったようなことを言いやがって...」


「わかりますよ、私には。きっと、あなたを真に理解できる唯一の理解者でしょうから。」


そんなことを、真面目な顔で言いやがる。俺はあっけにとられたが、首を振ってギロリと睨む。


「理解者?バカぬかせよ。俺とお前は敵同士、誰が分かり合えるか。」


「分かり合えるなんて言ってませんよ、ただ理解できるといっているのです。」


「それの何が違う?俺はお前のことなど理解できない。理解できるはずがないだろう、魔王(上司)をこんなぼろ雑巾のように扱う側近(部下)など。」


「ええ、ええ。理解できないでしょうねえ。だから理解しあうのではなく、私が一方的に理解しているのですよ。あなたという存在を...私に勝てないこともね。」


「ぬかせ、大バカ者め。」


2人して臨戦態勢に入る。先に仕掛けたのは俺のほう。相手に超高速でまっすぐ近づき、直前で死角になる位置へ移動、その位置から俺の攻撃をお見舞い...


「いい動きですが、無駄です。」


「なっ...!?」


いつの間にか、そいつはいなくなっていた。あたりを見渡すが、どこにも姿が見えない。声だけがその場に響く。


「いったいどこ...にっ!?」


後ろから殺気を感知し、振り向きざまに攻撃する...が、そこにはいない。


「単純なバカですね」


「ガッ...!!」


突如背後から頭を殴られる。意識が飛びそうになったが、持ちこたえてその場を離れる。


「ふふふ...」


目線の先には、先ほどと変わらず不敵な笑みを浮かべる敵の姿があった。


☆☆☆

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