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80.1人で1人

☆☆☆


「で?お前のいうあのバリアを破る案って何なんだよ。」


『...本当にいいのだな?たとえ成功したとしても、その後どうなるかはわからない。最悪死に―』


「くどい。さっさと説明しろ。」


『お前の身を案じてやっているってのに、全く...』


龍は、ため息をつきながら言った。


『俺やお前では無理でも、俺()()ならどうだ?ということだ。有り体な話ではあるがな。』


それを聞いて、俺はあっけにとられた。そして、笑いがこみあげてきた。


『...何がおかしい?』


「いや、すまんすまん。あんまりにも突拍子もない話だったから...」


『...ふん、柄でないことは承知している。だが...』


「わかってるよ、今は緊急事態だからな。それにしても、俺たち...つまり、俺とお前が力を合わせるってことがだ、どうやってそんなことをするつもりだ?お前が出てくるには、俺が意識を失っている状態じゃないと...」


そう、そこがネックなはずだ。こいつが出てくるには、俺が倒れていないといけない。俺が出てくるには、こいつが引っ込んでいないといけない。つまり、普通は力を合わせることなどできないはずなのだ。


『そう、普通では無理だ。だから、普通じゃない方法...人道的にあり得ない方法を使う。それが、お前が最悪死に至る理由だ。』


「...へえ、そうかい。でも、その方法ならあいつを倒せるんだろ?ならやる価値はある。」


そういって、俺はアブソーを睨みつける。やつは体育座りで、おとなしく待っていた。


『倒せる”かもしれない”方法だ。だからこれは、分の悪い賭けといえる。それでも...』


「おい、もう何度目だ。やるといっているんだから、さっさと方法を言えよ。」


『......』


龍は少しの沈黙の後、言った。


『手順は、たったひとつだけ。シンプルかつ、これ以上ない非人道的な方法だ。...俺とお前の思考を融合する。』


思考の融合。俺とあいつが、一つの存在として混ざりあうということ。


『俺はおおよそお前によって作られた。つまり、もう一人のお前...第2人格といっても差し支えないだろう。そこで、お前と俺の思考を合体させることにより、その体は2人で1人...いや、元の一人に戻るのだから、「1人で1人」の、俺でもお前でもない生命体になるだろう。』


「俺でも、お前でもない...」


『そうだ。どちらかがベースになるだろうから、記憶は共有されるだろうが...「イグニ」としての人生は、ここで潰えることになる。』


「...」


それはつまり、もうイグニとして、家族や2人に会うことはできない、ということか。


『だから、別の―』


「いや、それでいい。それでみんな無事なら、それで。」


『...そのみんなの中に、お前自身が入っていないようだが』


俺は、何も答えることができなかった。


☆☆☆

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