75.心境の変化
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「...ん...?」
俺はゆっくりと目を開ける。敵にやられて、そのあとあいつに後を任せて...そのあとの記憶がない。あれからどうなったのだろうか?
「「イグニくん!!」」
「がはっ!?」
思考を巡らせていると、シエルさんとセルクさんが俺に突撃...もとい抱きついてきた。二人とも俺の服の顔をうずめている。
「ちょ、2人と...も...」
引きはがそうと思ったが、途中で手を止めた。二人分の嗚咽が聞こえたためだ。俺は手を二人の頭にのせる。
「...ごめん、心配かけたな。」
「ばか、ばか...!!また無茶をしてっ...!!」
「死にかけ、というかほぼ死んでいたんだろう!?バカ野郎がっ...!!」
「面目ない、事実だからなんも言えねえや。」
そういいつつ、あたりを見渡す。あたりに敵がいないことを確認する。
「二人が倒した...わけじゃなさそうだな。ということは、やっぱりあいつが...。」
「...ああ。君の姿をした別人、フリートというやつが、敵を一瞬で倒した。」
「...そうか。こうして戻れてるあたり、あいつも俺と同じく変わってきているのかもしれないな。」
俺は過去のことを思いだしながら、思いにふけっていた。
「ねえ、イグニくん。その、あいつが言っていたことは本当なの?イグニくんが、あいつを生み出したっていう...」
「あいつどこまで喋ったんだ...まあ、そうだな。大体はあってるよ。」
俺ではなく俺の前世の話だが、間違いではないだろう。
「俺もあいつもお互いを利用した。俺はあいつの力を使って復讐を完遂し、あいつも俺を利用して好き勝手暴れ倒した。最初は消えたと思っていたんだがな...まだ俺の中に潜んでいたらしい。」
「...」
「人でなしだよ、俺はな。怒りに身を任せて復讐に走り、多くの命を亡き者にした。本当は俺こそが魔王なのかもしれないな。」
俺は乾いた笑みを浮かべながらそういった。
「...後悔してるの?」
「後悔はしていない。後悔してしまえば、俺がしたことの意味がなくなってしまう。...そう、思っていたんだけどな。」
俺は下を向く。
「本当は、後悔してるのかもな。最初から、俺がしたことに意味なんてなかったんだ。復讐しても、大切な人たちは帰ってこない。ただの憂さ晴らしに過ぎない行為だって、わかってたはずなんだけどな。」
「イグニくん...」
「それに、残った家族を、妹をひとりぼっちにしちまった。恨まれてるだろうな、相当。」
「...そんなことないよ、きっと。妹さんも、元気にやってるよ。」
「...それなら、いいんだけどな。」
俺は遠くの空を見つめながら、そういった。
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とある森の中、一人の少女がたたずむ。
その少女は、暗闇の中、兄に思いをはせていた。
「...」
少女は一人、暗闇の中で目を光らせ、ある決心をするのだった。
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