70.仇か恩か
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煙が晴れ、イグニくんの姿が見える。龍神化は解けて傷だらけ、周りに血の海ができていた。
「「イグニくん!!」」
私とセルクさんが近づき、イグニくんに触れる。目を開ける気配がない。セルクさんは、震える手で首元に手を当てる。生きてることを信じたいという一心から、何度も何度も手を当てなおす。
「......っ!!」
何度かそうして、セルクさんはすっと顔を下に向けた。地面に何個も雫の跡ができる。その姿を見て、私は彼の安否を察した。私は敵を睨みつける。
「ふっ、ようやくくたばったな。弱いくせに手間かけさせやがって...」
「っ!!きさまぁぁぁぁぁぁあ!!」
「セルクさん!!」
怒りに任せて突撃しようとするセルクさんを、必死に止める。
「離せ!イグニくんの仇をとらなきゃ...!!」
「ダメです!私たちだけじゃ敵いません!ここは逃げないと!」
「やってみないと分からないだろう!!それに逃げるだと!?バカいえ、イグニくんを置いて離れられるか!!ここでこいつをぶっ倒して、イグニくんに報いないとダメだろうが!!そうでもしないと...イグニくんに顔向けできない...!」
「イグニくんに報いるなら、逃げるべきです!イグニ君は、私たちを守るために戦ってくれたんですよ!?それで全員死んじゃったら、それこそイグニくんに顔向けできません!!」
「君は悔しくないのか!?悲しくないのか!?イグニくんが殺されたんだぞ!!私たちの目の前で!!」
「わかってます!!」
私はセルクさんを思いっきり後ろに押す。セルクさんはバランスを崩して倒れた。
「悔しいに、悲しいに決まってるじゃないですか!!イグニくんに何度も助けられたのに、たった一度も報いることができなかった!!できることなら、私だってイグニくんの仇を打ちたいですよ!!」
「それなら...!」
「でも、もうこれ以上、目の前で誰かが死ぬのは嫌なんです!!誰も失いたくないんです!!」
私はそう叫んで、セルクさんの服の首元をつかむ。
「だから...お願い、無茶なことはしないで...」
ボロボロと涙をこぼしながら、そうつぶやいた。セルクさんは困惑しながらも、頭をなでてくれた。
「さて、喧嘩は済んだかな?じゃあ、そろそろ君たちにも死んでもらおう。死ねばこいつの元に行けるんだ、いいことだろう?ああ、俺はなんて優しいんだろうなあ?」
そんなことを言いながら、敵はこちらに近づいてくる。武器を構える手が震える。
「なんとか隙をついて、二人で逃げましょう。いいですね!?」
「あ、ああ...!」
「はっ、逃がすわけないだろう!?」
そういって、敵は先ほどよりも大きな火球を出現させる。助かるには相殺させないと...でも...!
「仲良くあいつの元へいくんだな!!ひゃはははは!!」
「悪いが、あの世にあいつはいないぜ?」
そんな声が聞こえた瞬間、敵の腹から手が飛びだしてきた。
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