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68.最後の瞬間

☆☆☆


「うぐっ...舐めたマネしやがって...!」


敵は苦しそうな声を上げ、その場にうずくまる。不意打ちの一撃はさぞつらかろうて。


「へっ、ざまぁみやがれ...っっ!」


作戦が成功したことに嬉しくなるが、それを喜ぶ前に、俺はその場に崩れ落ちる。自分の周りに、血だまりが出来上がっていた。直前に殴られた箇所を見ると、拳の形に皮膚がえぐれており、そこから血が出ているようだった。


龍神化は解けていない。つまり、龍神化した状態でなお、敵の攻撃は俺の腹をえぐったのだ。普通の人間ではひとたまりもなかっただろう。「肉を切らせて骨を断つ」とはよく言ったものだが、既に満身創痍だった俺ができたのは「骨を断たせて肉を切る」という行為だった。


このままじゃ、全員死ぬ...何とかしてセルクさんとシエルさんは逃がさないと...!!


「セルク、さん...シエル、さん...ここから、離れ...っ!?」


全て言い切る前に、腹に激痛が走る。


「おい、覚悟できてんだろうなあ!?俺にここまで恥かかせたんだ、償いは高くつくぞ!?」


敵に何度も、傷口を蹴られる。


「この、やめろ!」


「イグニ君から離れて!」


セルクさんとシエルさんが必死に引きはがそうとするが...


「邪魔だ小娘どもが!!」


威圧が風圧と化し、二人は遠くまで吹き飛ばされた。


「...ふん、もう虫の息だな、つまらん。所詮は人間、こんなものだったか...まあ、退屈しのぎにはなったか。」


そういって、特大の火球を上空に出現させる。俺は動くどころか、意識を保つだけで精一杯だった。


「「イグニくん!!」」


セルクさんとシエルさんの声が聞こえた気がした。出血多量で、どんどんと意識が遠くなっていく。そろそろ本格的に駄目なようだ。今回ばかりはどんな奇跡が起きようと無理だろう。


ごめん、父さん、母さん。俺では、平和な日常を取り戻すことはできなかった。妹のユイナも泣かせちまうな。まあ何とか悦明してくれや。


...元の世界の父さんと母さんに、今度こそ会えるのかな。ああでも、あの世も異世界かもしれんし...まあ、行きゃあわかることか。


「...消えろ、ゴミめ」


火球が、俺の体へと振り下ろされる。表現できない熱さが、肌に伝わる。


俺はついぞ、ここまで保った意識を失った。


☆☆☆


ガシャン!!


「......!!」


「ユイナ!?大丈夫!?」


「う、うん、大丈夫。コップ落としちゃった...」


「ケガしてないわね?危ないから離れてなさい。」


「うん...お兄ちゃんのコップ...お兄ちゃん大丈夫かな...」


☆☆☆

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