65.油断は禁物
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「う、ぐっ…このやろう!」
敵は怒りながら、雷撃を飛ばしてくる。だが、その怒りが邪魔をして、コントロールを鈍らせ、避けずともひとつも当たらなかった。
「そら、もう1発!」
そうしている間にまた氷の弾を蹴り、またまた敵にクリーンヒット。敵はブルブルと震え出した。
「ぐぐぐ…があぁぁぁぉっ!!」
敵は怒り狂い、今度は帯電しながら突進してきた。当たったらひとたまりもない…が、当たらなければ無意味だ。実際、攻撃は直線的なので、簡単に避けることが出来ている。
「これなら、龍神化しなくても何とかなりそうだ!シエルさん、引き続き氷の弾を頼む!」
「了解!」
俺とシエルさんは、その後も氷の弾を作り出して蹴り飛ばし、敵にぶち当てていく。敵を徐々に追い詰め、相手の動きが鈍くなってきていた。
…だが。
「っ、調子に…乗るなぁっ!!」
「んなっ…!?」
敵は自分の周りにバリアのようなものを張って、俺たちの攻撃を防ぎ出した。ここからが本領発揮か。もうなりふり構っていられなくなったらしい。
「くそ、さすがにそう上手くは行かないか…」
「そういうことだ。これでお前らのちっぽけな攻撃など、一切効かんぞ!」
「くそ、よわったなこりゃ...」
「どうにかして、あのバリアを無効化しないと...」
そう言って、バリアを注意深く観察する。強く練られた魔力によって作られており、敵を囲むように球体上に拡がっている。やつの言う通り、並大抵の攻撃では相手にダメージを与えることができないだろう。
けれど、こういうものは消して万能ではないはずだ。どこかしらにほころびが...。
「「...ん?」」
バリアを観察した結果、ある違和感に気づく。シエルさんも気づいているようだ。俺とシエルさんはお互い顔を見合わせて、にやりと笑って構えを解いた。
「ほらほらどうした!?アッハハハハ!所詮は人間、怖気付いたか!」
高笑いする敵。どうやらこの敵は、このバリアの弱点に気づいていないらしい。おそらく、こんなに長時間バリアを継続して張り続けたことがないのだろう。敵からおちょくられたが、その手には乗らない。決して動こうとはしなかった。
「…おいおい、まじで今更怖気づいたのかよ?さっきまでみたいに、いい加減攻撃してきたらどうだ?」
不審に思ったのか、敵はそういってこっちを睨んでくる。
「いやいや、そうじゃないさ。ただ、ちょっと準備があってね。」
「準備だと?」
そのお強いバリア相手に、俺の最大攻撃を食らわせてやりたいと思ってさ。ご自慢のバリアと俺の攻撃、どっちが強いか勝負しようぜ?」
さて、敵はどう出る?
「...ふふふ、面白い!やってみろ!俺の勝ちなのは間違いないがな!」
キタコレ!ちょうどいい時間になったし、やったりますか!俺はシエルさんに目配せし、シエルさんは頷いて数歩下がった。
「オーケー...龍神化、30%」
俺は自分の理性が保てる最大火力の龍神化を使い、手に力を込める。
「さあこい!あはははは!」
もう少し、もう少し...3、2、1!
「よっしゃ行くぜおらぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺は身嵐を同時使用して、瞬時に突っ込み―
思い切りぶん殴った。つっこむ直前にバリアは解除されたため、俺の攻撃はもろに敵の顔面に直撃した。
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