63.打算ありきの行動
☆☆☆
「な...あっちは騎士団長様のいる方角...!」
「へえ、そうか。おい二人とも、今のきいたな?」
「ええ、副校長のところに行くのね?」
「ああ。ある意味移籍二兆あおいそこの兵士、爆発のあったところまで行くんだろ?俺らもついていくから、案内してくれ。」
「え、あ、ああ...こっちだ」
兵士はあわただしく走り始め、俺たちはそれに続く。走りながら、セルクさんがちょんちょんと肩を叩いてきた。
「なあイグニくん。人助けは賛成だが、先ほどまでの話と副校長を助けることが、いったいどう結びつくんだ?」
「ん?ああ。いやな、ここで副校長に借りを作っておけば、今後俺たちの根も葉もないうわさを垂れ流すような、そんなバカなことはしないだろうと思ってな。」
「ああ、そういう...」
「俺が打算なしに動くわけないだろう?それに、なんでこんなうわさを流したのかも気になるしな。本人に直接問いただすいい機会じゃねえか。今の騎士団長様は大ウソつきってばらしてやりたいって気持ちもあるが。」
にやりと笑いながらそういった。
「いい趣味してるよね、ほんと。」
「まあな。あと単純に、セルクさんのことを貶めるようなことを言いやがったのが気に食わない。俺のことはまだしも、なんでセルクさんが言われなきゃいけないんだ。セルクさんがかわいそうだろ。」
「へっ?え、あ、その...あ、ありがとう。」
「俺のわがままだ、気にするな。...って、おい、何立ち止まってんだ?」
走っている途中、俺たちの前を走っていたはずの兵士に追いついてしまった。みると、兵士はぴたりと足を止めていた。よく見ると、足や手が小刻みに震えている。
「おい、いったい何が―」
兵士の横を通り抜け、その先の景色をみた俺たちは、その場所で地獄を見た。
その先に広がっていたのは、死体の山と血の海だった。地べたに転がる兵士たちと、それを震えながら見ている副校長がいた。騎士団長殿は生きていたか。
そしてそこには、大勢の魔物と、明らかボスであろう高笑いをしているやつがいた。
「ふはははは、もろいもろい!人間とは、こうももろい生き物なのだな!これなら私一人でも壊滅できたではないか!ふはははは!!」
俺はうるささにため息をつき、久しぶりに身嵐を使って、副校長に接近する。
「おい、とりあえず行くぞ。」
「...」
副校長は目線が定まっておらず、ぼーっとしている。ある意味変に抵抗されるよりありがたい。
無返事を了承とみなし、俺は再度身嵐を使って、その場を離脱した。
☆☆☆




