61.更なる戦いへ
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拭いても拭いても、涙が目からこぼれてくる。自分のような人間でも、生きてていいんだと、認められた気がして。
久しぶり……いや、初めて大声を上げて泣いた。昔の記憶があるからか、普段泣くことなんてなかった分、1度溢れ出したら止まらなかった。そんな俺を、2人は優しく撫でて介抱してくれた。
「……もう、大丈夫。」
「ん、そうか。人間、泣きたい時は泣いた方がいいぞ。」
「そうそう。すっきりしたでしょ?」
「おかげさまで……」
俺は涙をふいて、立ち上がる。
「いつでも頼ってくれよ?私たちは仲間なんだからさ。」
「そうそう、どんどん頼って!」
その言葉を聞いて、また涙が出そうになる。慌てて下を向く。
「仲間……あの話を聞いても、まだ仲間って思ってくれるのか……?」
「当たり前だろう?君は決して心のない殺人鬼なんかじゃない。だって、ちゃんと心を痛めて、そして変わろうとしているじゃないか。」
「それにね。イグニくんみたいな優しい人は、なんでも背負い込みすぎて壊れやすいって相場が決まってるの。私たちがそばにいてあげなきゃ、ね?」
俺は2人の話を聞いて、もっと早く言っておけばよかったと後悔した。この人たちなら、大丈夫だと思えた。
俺は涙をふいて、顔を上げる。
「ありがとう、シエルさんにセルクさん。」
「お、いつものイグニくんに戻ったみたいだね。」
「だな!よし、そろそろ行くぞ!」
「ふふ、あぁ、行こう!」
こうして俺たちは、次の町へと歩を進めるのだった。
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「……ふん、まぁいいだろう。そのうちお前は、必然的に俺の力を必要とするだろう。その時を楽しみに待っていようじゃないか……。」
俺の内側から、そんな声が聞こえたような気がした。
ふざけるな。俺はもう、こいつには頼らない。何もかもを壊すような、そんな力欲しくない。
俺は街に向かう道中、心の中でそう決意するのだった。
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「な……あ?」
数日後、俺達は最後の最後の町のある場所へと辿り着いた。着いた、のだけれど……。
火の手が上がる家屋、崩れ落ちる壁、叫び逃げ惑う人々の声、金属がぶつかる音……この町は、既に戦場と化していた。
兵と魔物が戦っているが、もはや戦いとは言えないほどの一方的な虐殺だ。兵側の装備はボロボロで、武器すら持ってない者もいる。もはや肉壁と言い換えてもいい。
「あそこで戦ってる……あれは元王国の兵たちか!?いったいなんだあの戦い方は、剣がまともに振るえてないじゃないか!しかもあれ、模擬戦用のやつじゃ……!」
「大方、まともに武器もないんだろうよ。あの感じ、食べ物もギリギリだな。あれで勝てる方がおかしい。」
「酷い……命懸けで戦ってるのに、そんなのあんまりじゃない……!」
「あぁ。王国が亡びて、なけなしの金と武具でやりくりしてたんだろうよ。これじゃ、俺に復讐なんざ出来やしないだろうな。」
隠れて様子を伺っていると、近くで戦っている兵がいた。兵は剣を手放して地面に転がり、今にもやられそうな状態だ。
「えぇい、我慢ならん!」
「あちょ、セルクさん!」
「くそ、仕方ない……!」
なし崩し的に、俺達もこの戦いに参加する羽目になるのだった。
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