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61.更なる戦いへ

☆☆☆


拭いても拭いても、涙が目からこぼれてくる。自分のような人間でも、生きてていいんだと、認められた気がして。


久しぶり……いや、初めて大声を上げて泣いた。昔の記憶があるからか、普段泣くことなんてなかった分、1度溢れ出したら止まらなかった。そんな俺を、2人は優しく撫でて介抱してくれた。


「……もう、大丈夫。」


「ん、そうか。人間、泣きたい時は泣いた方がいいぞ。」


「そうそう。すっきりしたでしょ?」


「おかげさまで……」


俺は涙をふいて、立ち上がる。


「いつでも頼ってくれよ?私たちは仲間なんだからさ。」


「そうそう、どんどん頼って!」


その言葉を聞いて、また涙が出そうになる。慌てて下を向く。


「仲間……あの話を聞いても、まだ仲間って思ってくれるのか……?」


「当たり前だろう?君は決して心のない殺人鬼なんかじゃない。だって、ちゃんと心を痛めて、そして変わろうとしているじゃないか。」


「それにね。イグニくんみたいな優しい人は、なんでも背負い込みすぎて壊れやすいって相場が決まってるの。私たちがそばにいてあげなきゃ、ね?」


俺は2人の話を聞いて、もっと早く言っておけばよかったと後悔した。この人たちなら、大丈夫だと思えた。


俺は涙をふいて、顔を上げる。


「ありがとう、シエルさんにセルクさん。」


「お、いつものイグニくんに戻ったみたいだね。」


「だな!よし、そろそろ行くぞ!」


「ふふ、あぁ、行こう!」


こうして俺たちは、次の町へと歩を進めるのだった。


☆☆☆


「……ふん、まぁいいだろう。そのうちお前は、必然的に俺の力を必要とするだろう。その時を楽しみに待っていようじゃないか……。」


俺の内側から、そんな声が聞こえたような気がした。


ふざけるな。俺はもう、こいつには頼らない。何もかもを壊すような、そんな力欲しくない。


俺は街に向かう道中、心の中でそう決意するのだった。


☆☆☆


「な……あ?」


数日後、俺達は最後の最後の町のある場所へと辿り着いた。着いた、のだけれど……。


火の手が上がる家屋、崩れ落ちる壁、叫び逃げ惑う人々の声、金属がぶつかる音……この町は、既に戦場と化していた。


兵と魔物が戦っているが、もはや戦いとは言えないほどの一方的な虐殺だ。兵側の装備はボロボロで、武器すら持ってない者もいる。もはや肉壁と言い換えてもいい。


「あそこで戦ってる……あれは元王国の兵たちか!?いったいなんだあの戦い方は、剣がまともに振るえてないじゃないか!しかもあれ、模擬戦用のやつじゃ……!」


「大方、まともに武器もないんだろうよ。あの感じ、食べ物もギリギリだな。あれで勝てる方がおかしい。」


「酷い……命懸けで戦ってるのに、そんなのあんまりじゃない……!」


「あぁ。王国が亡びて、なけなしの金と武具でやりくりしてたんだろうよ。これじゃ、俺に復讐なんざ出来やしないだろうな。」


隠れて様子を伺っていると、近くで戦っている兵がいた。兵は剣を手放して地面に転がり、今にもやられそうな状態だ。


「えぇい、我慢ならん!」


「あちょ、セルクさん!」


「くそ、仕方ない……!」


なし崩し的に、俺達もこの戦いに参加する羽目になるのだった。


☆☆☆

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