59.忌むべき過去
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俺はそれから、全てのことを話した。俺が前世で命を落として、今世で生まれ変わった転生者であること、勇者も元日本人で、あちらは召喚された人間であること。
そして、俺が命を落としたきっかけ……前世でのいじめと、俺の惨殺劇。黒い感情に支配され、多くの者を殺めた歴史を。
「……」
「……その」
2人して、困惑と悲哀、そして恐怖が入り交じった目をしている。キョロキョロと忙しなく動いていた。
「これでわかったろ、俺がどれだけ酷い人間なのかってことが。俺は人殺しだ、魔王軍と同じくらい、人を沢山殺めている。」
「……でも、それは」
「いじめられてたからだって?馬鹿言え、いじめられてたからって、人殺しが許されるわけないだろ。そのいじめっ子だけならまだしも、関係ない人まで大勢巻き込んだんだ。情状酌量の余地はねぇよ。」
実際、俺は異例の速さで死刑が確定、刑が執行された。色々都合が悪かったんだろう。
「っ……で、でも!君はこうして生まれ変わって、命の大切さを知った!そうでしょ!?買われたんだよイグニくんは!じゃなきゃ見ず知らずの私を助けたりなんか……!」
「……今だから言うが、最初に君を助けたのも、これが原因なんだよ、シエルさん。」
「……どういう、こと?」
俺は今、最低なことを言おうとしている。それがわかっているから、口の中が嫌な感じがした。
「さっき話した中で、最後に殺した女の子の話をしただろう。見学に来てて、たまたま居合わせたあの子。それが、君にそっくりだったんだ。」
「え……」
「あの時、君とあの子が重なってね。君を助けたのは、命の大切さを学んだからでも、人類のためでもない。ただの罪悪感、罪滅ぼしだ。俺のエゴでしかない。」
「......そ、そのあとだって何度も助けて」
「ああ、それも全部含めてだ。いいか、この際はっきり言っておくが、今までもこれからも、俺は誰かのために行動することはない。全部、俺のために行動する。俺が助けたいと思ったやつは助けるし、見捨てると判断した奴は助けない。」
シエルさんは固まっている。きっと俺に失望したんだろう。そりゃそうだ、今まで優しさで助けてくれていたと思い込んでいたのだから。
セルクさんも、何を言えばいいかわからないようで、淡淡としていた。
「だから話したくなかったんだ。こんなこと、べらべら話すことじゃない。」
「......まあ、想像を絶するないようではあったが......」
「だろ?いいぞ別に、俺を見限ってくれて。何も俺のような犯罪者と無理にかかわる必要はない。自分の命を顧みず、人類のために行動して、みんなから感謝されて......自ら平和の象徴になった挙句、目をつけられて死ぬような、そんなもっともらしい勇者なんて、ごまんといるさ。」
俺はわざと小バカにするようにそういった。まあ本心でもあるがな。例の勇者のような犬死には、俺はごめんだ。
俺がそういうと、何も言えなくなったのか、二人とも黙ってしまった。俺は心の中で、自分の嫌な奴感に失笑するのだった。
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