表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/74

59.忌むべき過去

☆☆☆


俺はそれから、全てのことを話した。俺が前世で命を落として、今世で生まれ変わった転生者であること、勇者も元日本人で、あちらは召喚された人間であること。


そして、俺が命を落としたきっかけ……前世でのいじめと、俺の惨殺劇。黒い感情に支配され、多くの者を殺めた歴史を。


「……」


「……その」


2人して、困惑と悲哀、そして恐怖が入り交じった目をしている。キョロキョロと忙しなく動いていた。


「これでわかったろ、俺がどれだけ酷い人間なのかってことが。俺は人殺しだ、魔王軍と同じくらい、人を沢山殺めている。」


「……でも、それは」


「いじめられてたからだって?馬鹿言え、いじめられてたからって、人殺しが許されるわけないだろ。そのいじめっ子だけならまだしも、関係ない人まで大勢巻き込んだんだ。情状酌量の余地はねぇよ。」


実際、俺は異例の速さで死刑が確定、刑が執行された。色々都合が悪かったんだろう。


「っ……で、でも!君はこうして生まれ変わって、命の大切さを知った!そうでしょ!?買われたんだよイグニくんは!じゃなきゃ見ず知らずの私を助けたりなんか……!」


「……今だから言うが、最初に君を助けたのも、これが原因なんだよ、シエルさん。」


「……どういう、こと?」


俺は今、最低なことを言おうとしている。それがわかっているから、口の中が嫌な感じがした。


「さっき話した中で、最後に殺した女の子の話をしただろう。見学に来てて、たまたま居合わせたあの子。それが、君にそっくりだったんだ。」


「え……」


「あの時、君とあの子が重なってね。君を助けたのは、命の大切さを学んだからでも、人類のためでもない。ただの罪悪感、罪滅ぼしだ。俺のエゴでしかない。」


「......そ、そのあとだって何度も助けて」


「ああ、それも全部含めてだ。いいか、この際はっきり言っておくが、今までもこれからも、俺は誰かのために行動することはない。全部、俺のために行動する。俺が助けたいと思ったやつは助けるし、見捨てると判断した奴は助けない。」


シエルさんは固まっている。きっと俺に失望したんだろう。そりゃそうだ、今まで優しさで助けてくれていたと思い込んでいたのだから。


セルクさんも、何を言えばいいかわからないようで、淡淡としていた。


「だから話したくなかったんだ。こんなこと、べらべら話すことじゃない。」


「......まあ、想像を絶するないようではあったが......」


「だろ?いいぞ別に、俺を見限ってくれて。何も俺のような犯罪者と無理にかかわる必要はない。自分の命を顧みず、人類のために行動して、みんなから感謝されて......自ら平和の象徴になった挙句、目をつけられて死ぬような、そんなもっともらしい勇者なんて、ごまんといるさ。」


俺はわざと小バカにするようにそういった。まあ本心でもあるがな。例の勇者のような犬死には、俺はごめんだ。


俺がそういうと、何も言えなくなったのか、二人とも黙ってしまった。俺は心の中で、自分の嫌な奴感に失笑するのだった。


☆☆☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ