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58.覚悟を決める時

☆☆☆


「……イグニ、くん?」


「っ……」


俺は膝を抱えて、その場に座り込む。無意識だったとはいえ、優しくしてくれた彼女を、俺ははねのけてしまったのだ。シエルさんの顔が見れない。見るのが、怖かった。


「どうしたんだ、いったい。君らしくないぞ?」


セルクさんがそういって、俺の頭に手を置いて、わしゃわしゃと撫でてくる。その不器用な優しさが、前世の両親を彷彿とさせ、俺は反射的に、セルクさんの手まではねのけてしまった。


「え……?」


その声に、俺はさらに恐怖し、身体を震わせる。


「やめてくれ……俺は、そんな立派な人間じゃないんだ。畏怖されるべき、憎まれるべき人間なんだ。本当は、こんなノウノウと生きていいような人間じゃないんだよ……。」


震えが止まらない。気持ちの吐露が止まらない。今まで感じていた不安が、恐怖が、そして罪悪感が、一気に襲ってきた。


決して後悔はしていない。あのときの判断が、間違っていたとしても、あのとき行動する意味はあった。けれどそれは、言ってしまえばただのやり返しだ。


彼らが俺の家族を殺したように、俺も彼らの家族に手をかけた。いや、家族以上に、彼らに関係する人間に手をかけたのだ。


この2度目の命は、神様がくれたご褒美なんかじゃない。これは、閻魔からの罰だ。命を粗末にしたものに対する、命の大切さを説く説法だ。


俺はそれを、ここに来て思い知らされた。


「「……イグニくん」」


シエルさんとセルクさんが、そういってもう一度俺の頭に手を置く。はねのけようとするが、2人に阻止された。


「教えて、君が何を抱えているのかを。ちゃんと、全部教えて欲しい。」


「それは……」


できない、と言おうとしたとき、セルクさんがそれを遮った。


「言っておくが、これはお願いじゃないからな。あえて厳しく言おう、強制だ。君に話さないという選択肢はない。」


「なっ……!?」


俺は目を見開く。


「私は国に仕える騎士だったが、同時に君たちの先生でもあり、そして悪人を捕まえ懲罰を与える断罪人でもあったんだ。」


「なんちゅうマルチタスク。これがブラック国家……」


「ブラック?よくわからんが、とりあえずそういうわけでな。君が悪を為したというのであれば、私は断罪人として君と話をする。さぁ、罪を話せ。」


セルクさんが両肩を掴み、目をじっと見てそう言う。なぜだか、目をそらすことが出来なかった。


「……イグニくん、私たちは君の仲間で、私は半ば家族のようなものだと思ってる。家族が苦しんでるのに、その心配をしちゃいけないのかな。」


酷い言い方だ。話さないことで罪悪感が生まれてくる。


……腹を括るしか、ないか。そうだ、俺は犯罪者なんだから。昔とっくに括った腹だ、別になんてことない。


「……分かった、話すよ。俺が何者で、何があったのか。」


俺は、冷静にそう言った。声が震えていたのは、きっと気のせいだ。


☆☆☆

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