表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/74

54.怒らせると怖い人

☆☆☆


「.....これでよし、と」


大勢の冒険者の死体を土に埋め、装備を墓標代わりに立てる。とんでもない数の墓標が、出来上がっていた。1体何人の人が犠牲になったのだろうか。


途中で冒険者の分は2人に任せ、俺はゲルべ爺の墓標を立てた。こっちはゲルべ爺が愛用していた、工具を墓標代わりにして立てた。


立て終わったあたりで、ゲルべ爺の最後の光景が脳内にフラッシュバックする。立ちくらみがし、近くの木に寄りかかった。


「くそ、どうして.....なんで俺の周りばかり死んでいくんだよ.....!!」


脇でぎゅっと握った拳を、木に打ち付ける。ギリっと歯ぎしりし、悲痛に顔を歪ませる。


「よくも.....家族同然の人を殺してくれたな.....魔王め.....!!!」


ゲルべ爺の仇は俺が討つ。そう心に決めて、俺は2人の元へと向かうのだった。


☆☆☆


「お待たせ、そっちも終わった?」


「あぁ、今終わったところだ。中には何度か見た事のある、歴戦の戦士もいたよ。.....そんな人たちでさえ、四天王の攻撃をもろに食らってこれだ。」


セルクさんはぎゅっと拳をにぎりしめる。


「復活した魔王軍は、はっきり言って前回の比じゃない。比べることも烏滸(おこ)がましいくらいにな。」


「うん、わかってる。油断したら一気に持ってかれる。気をつけないと。」


「だな。はぁ、前回は最前線で戦えていたんだがな.....体の衰えと、敵の強大化のせいで、このザマだ。なにが勇者パーティだ、泣いて呆れる。」


セルクさんはかわいた笑みを浮かべながら、そういった。


「そりゃあ、10代と30歳じゃあ、体は衰えるよねぇ。」


シエルさんがからかうように、セルクさんの背中に手を置いてそういった。


「んなっ!?まだそんな年増じゃない!」


「へぇ、いくつなんです?」


「.....2、29.....」


「もうすぐじゃないですか」


「違うぞ!!29と30は全然違う!!」


「はいはいそうですね」


「その感じ、全くわかってないな!?いいだろう、先生らしく授業をしてやる!!」


セルクさんが怒りながら、逃げ惑うシエルさんを追いかける。シエルさんは余裕の笑みを浮かべて.....いるように見えたけど、あれ痩せ我慢だ。その証拠に、シエルさんはあっけなくセルクさんに捕まった。


「そ、そうカッカしないでよ先生。ね?」


「ね?じゃないわ!人の歳をイジるのは大概にしろ!」


「別にイジってないですよ?ただ、その歳まで結婚してな浮いた話の一つもないのは......ねえ?」


シエルさんがセルクさんをいじり続けていると、突如セルクさんの顔が怒りから笑顔に変わった。......否、俺でもわかる。これはただの笑顔じゃない、不敵な笑みってやつだ。ニヤニヤとしていたシエルさんの顔が、どんどんと青ざめていく。


「そうかそうか、そんなに君はしごかれたいのか......」


「あ、いや、冗談ですよ冗談......あはは......」


シエルさんがこちらに助けを求める。俺はため息をついていった。


「自分で蒔いた種だろ、自分で摘むんだな。」


「イヤーーーッ!」


その日、セルクさんの特訓を受けたシエルさんは、魂が抜けたようだった。自業自得である。


☆☆☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ