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51.力の代償

☆☆☆


魔王軍四天王との戦いは、イグニくんの勝利で終わった。本当にあっさりと、すぐに決着が着いた。これがイグニくんの本当の力.....。


けれど、イグニくんは先程からずっと固まったままだ。勝利の余韻に浸っている感じもしない。


「や、やったじゃないかイグニくん!君の勝利だぞ!これでまた魔王軍討伐に1歩近づい……」


「ーーーー」


セルクさんの言葉にも反応せず、ただ低い唸り声をあげるだけ。それが、とても不気味で、そして悲しそうだった。


「どうしましょう、イグニくん……」


「うーん……まぁ、とりあえず本人が正常に戻るまで、声をかけ続けるしかないだろう。」


「そうですね……」


セルクさんはイグニくんに近づき、また声をかけようとする。


……けれど


「……があぁぁぁっ!!」


「ひゃっ!?」


突然雄叫びを上げ、近くの岩に向けて攻撃を仕掛けた。攻撃の対象となった岩は、粉々に砕け散る。そのあとも、周りに見境なく攻撃を続けている。


「ど、どうしたんだ突然.....!?」


「セルク先生!」


私はセルク先生に駆け寄る。


「なんか可愛い声出ましたね?」


「注目すべきはそこじゃないだろう!?というかさっきのは忘れてくれ!」


「はいはい。それで、イグニくんは.....」


「暴走、だろうな。さすがのイグニくんも耐えきれなかったようだ。力に飲まれてしまったんだろう。」


「そんな.....止める方法は!?」


「あったらもう試している!とにかく今は攻撃を避けて、隙を見つけるんだ!」


セルク先生がそう叫ぶと、声に反応したのか、また近くに攻撃が当たる。当たった先にあった木は、跡形もなく消え去る。セルク先生は顔が青くなり、ゆっくりとその場を離れる。


「隙を見つけるっていっても.....あんな瞬間的に動かれると、対処のしょうがないんじゃ?」


「う.....それは、その」


疑問点を投げかけたところ、セルク先生は言葉に詰まって止まってしまった。苦笑いしていた、その時。


「.....ぁ」


イグニくんの目が、こちらを捉えている。なんだか、嫌な予感がした。


「あ、が.....うごあぁぁぁっ!!」


「あがっ.....!!」


「っあ.....!!」


その予感は意外性もなく的中し、私とセルク先生は頭を掴まれて、木に叩きつけられた。グワングワンと視界が歪む。


意識を手放しそうになってしまうけれど、根性でぐっと持ちこたえた。ここで意識を手放せば、イグニくんはきっと私たちを殺してしまう。そう、直感したからだ。イグニくんに、そんなことはさせたくなかった。


そしてそれはセルク先生も同じようで、必死に抗っていた。


「グ、ガ.....ッ、ゴァァァァ!!」


イグニくんは、今度は私たちの首を掴む。このまま締め上げる気だろうか。


「ダメ、だ.....正気に、戻ってくれっ.....!!」


「イグ、ニ、くん.....!!」


必死に抵抗するけれど、一向に手が離れない。さらに強く締めあげられる。


私は徐々に体の力が抜けていく感覚に陥る。嫌だ、死にたくない、イグニくん.....!


私は無意識に、涙を流すのだった。


☆☆☆

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