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44.心との争い

☆☆☆


俺はその場に座り込み、膝を抱える。今なお、あの無意識の行動に、自問自答を繰り返していた。


「……名前なんて、聞いても仕方ないのに。どうして聞こうなんて思ったんだ、俺は。あいつに興味が出たとでも言うのか?馬鹿な、人間相手に興味なんて……。」


ブツブツと独り言を繰り返す。


「散々人間の嫌なところを見てきたじゃないか。人間は皆、腹に黒いものを抱えてるって、俺自身が1番知っているはずだ。それなのに……」


独り言を繰り返すうちに、幻聴まで聞こえるようになった。


『簡単な事だよ、君はあの人と友達になりたかったんだ。自分のことを理解してくれる、いい人だったからね。彼に興味がでてきたから、またどこかで会った時に友達として接するために、名前が知りたかったんだ。』


「……違う」


『違うものか、自分に素直になりなよ。お前は心の中で後悔してるんだ。あの時、あんなことをしてしまった自分が許せないんだよ。』


「……違う!!」


俺は勢いよく木を殴る。殴った手の痛みで、正気に戻ることができた。もう幻聴は聞こえない。


俺はその場にうずくまる。宿に戻る気にはなれなかった。敵がいつ現れてもいいように、短剣を手に持ったまま、俺はその場で眠りについた。


☆☆☆


「─くん、イグニくん!」


「ん……」


誰かの声で目が覚める。眠い目をこすり、目を開ける。目の前には、心配そうに俺をのぞき込む、2人の姿があった。


「やぁ、シエルさんにセルクさん。よく眠れたかい?」


「やぁ、じゃないわよ!勝手にいなくなるなんて、どれだけ心配したと思ってるの!」


シエルさんがポカポカと俺の事を叩く。


「イグニくん、どこか行くなら書き置きくらい残してくれ。心配するだろう。」


「ごめん、あの部屋じゃ寝れなくてさ。外の空気を吸おうと思ったら、寝ちゃったみたいだ。」


「へぇ、外の空気をね。」


セルクさんはそういって、チラリと目線をずらす。俺はその仕草に、ビクッと身体を震わせる。セルクさんがみている先は、俺が夜に魔物を倒した場所だ。


「……まぁいい、今回は不問にしよう。」


「そりゃどうも。」


バレたのかバレてないのかわからないが、言及されなかったのは幸いだった。ほっと胸を撫で下ろす。


「あ、そういえばフロントから救急箱が無くなってたらしいんだけど、何か知らない?」


一難去ってまた一難。俺は知らないふりをすることにした。


「救急箱?さあ、見ていないが。」


「ふーん。ま、いっか。とりあえずいったん部屋に戻ろ?」


「そうだな。荷物もおきっぱだし。」


俺たち3人は、また宿屋に戻る……途中で、セルクさんが立ち止まった。


「なあ、救急箱ってあれのことではないのか?」


セルクさんが、ドア付近に置かれたものを指さしてそういう。


「……いや、アレじゃん!イグニくんが持ち出したの!?」


シエルさんが箱に駆け寄る。あいつ、おきっぱにしやがったのか。いっそ箱ごとどっか行ってくれればよかったものを。


「いやまあその、ちょっとわけあって……」


「救急箱が必要になるわけってなに!?」


俺は結局、宿に戻った後で、2人に状況説明をする羽目になったのだった。


☆☆☆

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