39.山道を行く
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「ぜぇ、ちょ、ちょっとタンマ・・・」
街を出て、山を登り始めてから数分。シエルさんが、息を切らしながらそういった。
「おい、まだ登り始めてからそんな経ってないぞ。さすがに体力が無さすぎじゃないか?」
「魔法ばかりで、運動をサボったつけが回ってきたな、シエルさん。魔法職とはいえ、走り回ったりはするんだから、ちゃんと体力つけろとあれほど・・・」
岩に座って休むシエルさんに、くどくどとお説教をするセルクさん。
「あーはいはい、分かってますよーだ。」
「はいは1回!絶対わかってないだろう!?」
「わかってますって、そのうちねそのうち。こうして歩いていれば、自ずと体力はつくでしょうし。」
「まぁ、それはそうなんだが・・・なんだかなぁ」
そういって、セルクさんは項垂れる。どうやらセルクさんは、レスバが強くないらしい。これでよくあのクラスを半年保てたな。舐められてたんじゃなかろうか。
「そろそろいくぞ、今日中に山の中腹あたりにはたどり着いておきたい。そこに休める場所があるから、ついてくる気があるなら、そこまでは頑張れ。」
「とのことだ、早くしないと置いていくぞ。」
「あ、ちょっと待ってよ~・・・」
先へ進む俺とセルクさんのあとを、シエルさんはたどたどしく追うのだった。
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「よし、今日はここまでにしよう。夜は夜行性の魔物が徘徊するから、生身では危険だ。」
夕方に差しかかる頃、俺たちはようやく山の中腹にたどり着いた。途中、何度か休憩を挟んだ割には、予定通りに着いた。
「は、はひーっ・・・よ、ようやくかぁ。長かったなぁ・・・。」
岩にもたれ、息を整えながら、シエルさんがそういう。
「ふぅ、久々にいい運動になった。いやはや、勇者たちと冒険していた頃を思い出したよ。やっぱりいいものだな。」
対してセルクさんは、さすがと言うべきか、疲れを見せず、とても爽やかにそういった。
「それはよかった。さて、次は泊まれる場所だな。」
「あ、そうそう。この辺り建物もないし、どうするつもりなの?まさか野宿じゃないでしょうね、この山の中で。」
「違うよ、野宿できる準備もないし。えっと、確かこの辺り・・・」
俺は、後ろにそびえ立つ崖を調べる。そのうち、壁が薄い場所を見つけ、3回ノックした。
「・・・誰だ?」
崖の壁の奥から、くぐもった声が聞こえる。
「お久しぶりです、イグニです。今晩、ココに泊まりたいのですが。」
「・・・入れ。」
岩肌にしか見えなかった場所が開き、中に入れるようになった。
「いい!?イグニくん、これは?」
「詳しいことは中で話すよ、とりあえず入ろう。」
俺は2人を連れて、崖の中へと入っていった。
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