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38.行動は最短距離で

☆☆☆


安めの宿屋に泊まり、次の日に旅に必要になる消耗品や食料を買いそろえる。必要最低限だけ買って、最悪自給自足すれば・・・とか考えていたが、2人に却下された。


あと、残りのお金で2人の武具を見繕った。セルクさんは騎士団時代のものがあっため、メンテナンスと一部買い替えで済んだが、問題はシエルさん。杖からローブから、いろいろと買い揃えた。


ここまで全部、俺持ち。2人はまさかの無一文だった。まあシエルさんはわかるけど、なんでセルクさんまで無一文なのか。騎士団時代の給料は・・・と思っていたところ、それを察したのか、理由を話してくれた。なんでも、給料が入ったら使い切るタイプだったようで、手元に残らなかったらしい。俺は落胆した。


消耗品関連といい、武具といい、痛すぎる出費だ。俺のへそくりが少なくなっていく・・・。


ちなみに、俺はスピード重視なので防具は必要ないし、武器も今のやつが使いやすいので、買い替えは考えてない。なんで、出費0。世の中節約が大事だ、うん。


そして今は、腹ごしらえのために、街一番の大衆食堂にきている。テーブル席に案内され、食事を堪能した。値段が安い割に、量があって美味いという、最高の場所だった。グルメ評価サイトがあるなら、星5をつけてやりたい。


「ほんとに要らなかったの?軽めの防具とかもあったけど。」


「ああ、今の状態のほうが戦いやすい。軽いとはいえ、それだけで多少変わるもんだからな。」


「なるほど、今の軽装は理にかなってるわけだ。」


「まぁな。・・・これ以上出費を増やしたくないし。」


「ん、なんかいった?」


「いんや。」


俺の小声のボヤキは、2人には聞こえなかったらしい。聞かれてたらめんどくさい事になった気もするし、好都合だ。


「それで、次はどうするつもりなんだ?ここに長居する気はないんだろう?」


「あぁ、ここには物資補給にきただけだからな。」


そういいながら、俺は地図を広げる。


「魔王城はここ。この街からは、まだまだ遠い。ここから魔王城にいくには、いくつかルートがあるんだが・・・」


俺は父さんに予め聞いていたルートを、地図に書きながら話す。


「山を迂回して、脇から攻めるルート。海を横断して、不規則に進むルート・・・そして」


俺は山の頂上からペンを浮かせて、魔王城の場所に落とした。


「山の頂上から、敵をぶっ叩くルートだ。」


☆☆☆


「・・・待って?今の感じ的に、まさか最後のルートで行くつもり?」


「あぁ、1番近いからな。直線で行けるし、奇襲もかけやすい。」


「いやいやいやいや、ダメだろうそれは。」


セルクさんが立ち上がって反対意見をする。


「いいか、山越えは危険だ。私たちも昔、何度も死にかけてる。魔物は多いし、体力は奪われるし、直線距離とはいえ時間がかかる。」


「そんなのはわかってるよ。でも、この方法が最善で・・・」


「最善なのは迂回ルートだろう。私たちも最終的に、このルートにしたんだ。勇者の一声でな。」


「このルートは集落が多い。より多くの人を助けるために、勇者はこのルートを選んだんだろう。」


「そ、そういうことだったのか。危険がいちばん少ないから、このルートにしようと言っていたのだが・・・」


「むしろ逆だな。集落の周りには魔物が多く出没する。いちばん魔物が少なくて安全なのは、海のルートだよ。」


「そうか・・・いやまて、なら何故山のルートで行こうとしている!?」


「はやいから。海のルートは不規則なうえ、複雑な道が多いんだ。天候によっては船が出せない時もある。だから山で行く。行くったら行く。」


「そ、そんな横暴な・・・」


セルクさんはオロオロとしていた。可愛いなこの人。そんなことを思いながら、荷物を持って立ち上がる。


「嫌ならついてこなければいいんだ。止めたって、俺はこのルートで進むからな。」


「わかってると思うけど、私はどう行こうとついていくからね。」


ひょこっと身を乗り出して、シエルさんはそういった。


「どうぞご勝手に。じゃ、俺は出発するから。」


店長に代金を支払って、店を出る。そのまま街の外へ繋がる道を進もうとしたところで、呼び止められた。


「待てイグニくん!わかった、ついていく!だから置いてかないでくれ、この歳で迷子にはなりたくない!」


必死な顔でそう言うセルクさんに、思わず吹き出しそうになる俺。シエルさんも隣で笑いをこらえていた。だけどシエルさん、あなたはセルクさんを笑えないのでは?そう思ったが、口には出さないでおく。口は災いの元っていうからな、余計なことは言わない方がいい。


こうして俺たちは、この街、フォックスを出発するのだった。


☆☆☆

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