37.新しい街と仲間と
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数時間の徒歩移動の末、移民の街「フォックス」へと着くことが出来た。辺り一面、夕焼け色に染っている。
「や、やっとついた・・・結構遠かったわね・・・」
「ここまで歩いたのは久しぶりだよ・・・」
2人はお疲れのようで、ベンチに腰をかけ、休憩していた。俺も、ここまで歩くのは父さんとの特訓以来だった。
「俺が案内するのはここまでだ。そら、あとは勝手にしろよ。頼めば故郷にも連れてってくれるだろうさ。」
俺はそう言って、2人を置いて宿を歩を進めた。・・・直後、後ろから聞こえてくる2つの足音。俺はため息をついて後ろを振り向いた。
「あのさ、ついてこないでもらっていいですかね。」
「え、なんで?」
「別に構わないだろう、何が問題なんだ?」
キョトンとした顔のシエルさんとセルクさん。
「案内はここまで、あとは勝手にしろって言いましたよね。だから、ついてくる必要なんてないんですよ。そこんとこ分かります?」
「うん、わかってるよ?」
「わかってるならなんで・・・」
「わかった上で、勝手にしてるんじゃないか。」
・・・???
「だから、勝手にしていいんでしょ?だから、私たち勝手に君についていくことにしたの。」
シエルさんが、懇切丁寧に、そして簡潔に説明してくれた。なるほど、そういうことね。・・・って
「・・・はぁっ!?いやいや、なんで!?」
「なんでもなにも、言っただろう。私たちは君のことをまだあまり知らないんだ。人への無関心さの理由も、その力のことも。」
「だからこそ、一緒についていきたいの。旅の中で、きっと今よりも深く知れると思うから。」
「・・・」
2人の目を見る。どうやら真剣なようだ。俺は戸惑い、目を逸らす。
「本気ですか。多分、後悔しますよ。」
「それはないね。私の勘では、ついていかないほうが後悔するって言ってるんだよね。」
「私もそう思う。だからついていくぞ。」
「何の勘ですか・・・」
俺はため息をつき、2人を見据える。
「最終通告だ、やめておけ。前に話したろ、この力は危険なんだよ。下手したら暴走の可能性もある。俺のせいで怪我されたりしたら、気分わりいんだ。だから、来るな。」
ドスを利かせて、そういう。この力も深く知られたくなかったし、できればついてきてほしくなかった。
だが、あろうことか2人は、俺の話を聞くや否や笑い出した。
「な、なにがおかしい!?」
「ごめんごめん。それ、脅しのつもり?全然怖くないよ。」
「んなっ!?」
「だってなあ君、目が優しすぎるし。」
「言葉だけ強くしても、ねえ?」
ぐぐ・・・こいつら・・・。
「それにね、怪我するのなんて織り込み済みだよ。魔王を倒す旅路なんだよ?そりゃ死ぬ思いだってかぞえきれないほど体験するでしょ。それが魔物の攻撃か、君の暴走かなんて、変わらないよ。」
「一人きりの状態で暴走するほうが危険だろう。君を止めるのは、私たちの役目だ。」
「おま、えら・・・」
俺は言葉を失う。断らなきゃ、と頭ではわかっていても、言葉が出なかった。悩んだ末、俺は沈黙に耐えかねた。
「・・・ああもう、勝手にしろ勝手に!俺は知らんからな!!」
「!うん、勝手にするよ!」
「ああ、勝手にしよう。」
俺は前を向き直り、ずかずかと歩く。こうしてここに、俺とシエルさん、セルクさんの3人パーティが誕生した。
「あ、ついでにお願いがあるのだが、私に対する言葉遣いを、さっきみたいに荒くしてくれると助かる。なんか・・・そのほうが、その、いい。」
「「ええ・・・」」
素でドン引きする俺とシエルさんなのだった。
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