36.次なる街へ
☆☆☆
「ごめんごめん、悪かったって。」
「もうやだ・・・魔法なんて嫌いだ・・・」
俺は項垂れながら、森の外に向かって歩く。ご覧の通り、シエルさんの魔法講座は全く意味がなかった。
シエルさんはユイナと同じく、この手の天才だった。俺への説明は全部感覚で話してくるし、言ってるやり方を真似しても、進歩なしだし。教え損だったよ、ほんと。
少し歩いた先、森が終わりを迎えた。その先には、平野が広がっている。
「ほら、森をぬけたぞ。さっさとどっか行け。」
「まぁ待て。ここから近い街っていうのはどこだい?」
「・・・近くで、ある程度治安のいい街は・・・」
俺は懐から地図を取り出して、広げる。地図で現在地を示しつつ、次の街を指さしていった。
「移民の街、フォックスだ」
☆☆☆
「おい、なぜついてくる?」
「君も物資調達のためにその街に行くんだろ?なら、ついて行ってもいいじゃないか。それに、ここで別れたら、間違いなくまた迷うぞ。」
「ここからでも遠くに見えるんだから、迷うこともないだろ。だからついてくるな。」
「いいや迷うね!自信を持って言える!」
「誇らしげに言うな、そんなこと」
俺はため息を付いた。まぁ、このペースならまだあまりが暗くなる前につけそうだ。野宿の用意はなかったから、とりあえず一安心。
「イグニくん、そのフォックスっていう街は、どういうところなの?」
「・・・俺も父さんから話を聞いたことがあるだけで、行ったことはない。そもそも、この年までほかの国や街に行ったこともないんだ。」
そういいながら、セルクさんのほうを見る。父さんや勇者と旅を共にした彼女なら、何か知っていると思ったからだ。
俺の視線に気づいたセルクさんは、ひとつ咳払いをして言った。
「フォックスは、イグニくんが言っていた通り、移民の街とも呼ばれている。その名の通り、他の国や街から来た外国の方が多い。いい街だぞ、どんな種族にも分け隔てなく接してくれるし。」
「そうかい、なら良かった。お前も街に入れるかもな。」
そういって、頭の上のベルを撫でる。腕にしがみついていたり、背中にしがみついていたりしたのだが、最終的に頭の上に落ち着いたらしい。
「い、いやぁ・・・魔物はどうかな・・・」
「あ?」
「ほ、ほらテイマーの魔物が暴れたこともあるし、人型ならまだしも、完全に魔物な子は難しいんじゃないかなって・・・」
「あぁ・・・そうか、そうだな。可哀想に、お前が悪いことしたわけじゃないのにな。」
ベルを頭からおろし、抱っこする。ベルはよく分からないと言った様子で、首をしかげていた。
「・・・私達のこともそれくらい優しくしてくれたらな。」
「あぁ、本当にな。」
そんな声が聞こえた気がしたが、無視を決め込み、スルーすることにした。
☆☆☆




