35.力の制御
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「そういう訳にもいかないんだ、これはまだ不完全でな。それに、さっき言ったとおり、この力は人でありながら魔物に近い存在となる・・・そんなトンデモ能力が、ノーリスクとでも?」
「えっと、具体的にはどういうことなの?」
シエルさんがそう尋ねる。俺は少し考え、話を続けた。
「人体錬成魔法って、シエルさんなら聞いたことあるよな。」
「えぇ。魔物の肉やら魔石やらを使って、人の欠損した部分を生み出したりする魔法よね。今では禁忌とされている、いわゆる禁呪法ってやつ。」
「あぁ、それだ。龍人化は、言ってしまえば禁呪法に近いものなんだ。下手に扱えば体がボロボロになるし、寿命を縮めかねない。最悪、廃人にもなりうる。」
「そ、そうだったのね・・・え、じゃあもしかして、さっき変身した時も、なにか体に異変が!?」
「あぁ。といっても、解除した瞬間にちょっと立ちくらみがする程度だけどな。これでも力を制限してるから、この程度で済んではいるんだ。体のことを考えると、普通に使える限度は10%ってところだな。」
俺は手をグッパーしながら、そう答える。
「10%・・・それであの力ってのが末恐ろしいな。ちなみに、それを超えて力を引き出すと、どうなるんだ?」
「自我を失って、暴走する。力を使い果たすまで、見境なく破壊の限りを尽くすだろう。」
淡々とそう答えると、2人は目を見開いた。
「ぼ、暴走!?」
「あぁ。昔、特訓中に30%を使おうとしたことがあってな。その結果、意識を失いかけた。自分が自分でなくなっていく感覚ってこういうことを言うのかって、身をもって学んだよ。ぎりぎり踏みとどまって、すぐ解除できたから、事なきを得たけどさ。」
「む、無茶なことするね、君」
「限界を知っておきたかったんだ、若気の至りって考えてくれ。」
「いや、今も十分若いと思うが」
そういわれて、ハッとする。どうも俺は、集中すると年相応でなくなってしまうようだ。前世で18年間生きたために、言動が大人びているといわれたことが何度もあった。
「ま、まぁその話はいいだろう。それより、ちゃんと話したんだから、今度が魔法を教える番だ。」
適当に誤魔化して、話を変える。
「えぇ、いいわよ。風魔法が得意なのよね?」
「得意というか、それ以外習っていないというか・・・」
「そう。私が教えられそうなのは、水魔法と雷魔法の2種類よ。じゃあ、早速始めましょうか!」
シエルさんは杖を取りだし、親指を立ててそういうのだった。
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