34.あの力について
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「ねぇ、聞いてる?いい加減教えてよ、あの力はなんなの?」
「だから、なんで教える必要がある。教えたところで、俺にもあんたらにも、メリットはないだろう。」
「言ったでしょ、あなたのこともっとよく知りたいの!ねぇ、あの力は、あの姿はいったいなんなの?」
セルクさんを宥め、いつもの調子を取り戻したところで、森を抜けるべく歩き出そうとしたところを、シエルさんに呼び止められた。セルクさんもウンウンと頷いてるし・・・。
「俺の事なんか知ってどうする。ここの森を抜ければ、俺たちは赤の他人だ。そんなやつのこと、知る必要ないだろうに。何が目的だ。」
「知りたいから、って目的じゃダメ?そういうのはいいから教えてよ。それともなに、対価としてなんか払えっていうの?」
「いらん」
「もう・・・あ、そうだ。じゃあ魔法教えてあげよっか?」
その言葉を聞き、俺の足はピタッと止まった。
「お、やっぱし興味あるのね。魔法実技のとき、みんなが魔法使うところを、羨ましそうに眺めてたから、そうじゃないかと思ったのよ。」
「む・・・そんなことは」
「でも教えて欲しいんでしょ?なら、君のことも教えてよ。そしたら教えたげる。」
「・・・はぁ」
俺は溜息をつき、近くの岩にもたれかかった。
「わかった、降参だ。約束は守れよ?」
「・・・!もちろん!」
「シエルさん、ナイス交渉!」
シエルさんとセルクさんは、その場に座り込む。俺は多少気恥かしい気持ちになりながら、話を始めた。
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「セルクさんは知っているけど、俺は純粋な人間じゃない。人間と魔物のハーフ・・・エルフである父さんと、ドラゴンである母さんの子供なんだ。」
「へぇ、そうなん・・・うぇっ!?ちょ、ちょっと待って、聞き間違いかしら。ドラゴンのお母さんがいるの!?」
シエルさんは目ん玉飛び出そうなほど、心底驚いていた。まぁ、普通の人が聞いたらそうなるわな。
「あぁ、まぁ。話を戻すが、アレは魔物としての力を覚醒させた姿でな。俺はアレを、神の龍と書いて龍神って呼んでいる。人型の龍になるわけだから、本来は人の龍と書いて龍人なんだが・・・人ならざるものになるって意味も込めて、な。」
まぁ、本当はそれだけでは無いのだが、こっちの理由は本当に言っても意味が無いので、伏せておく。全てをさらけ出せるほど、俺は人を信用しちゃいない。
「龍神・・・これまたすごい力ね。」
シエルさんは感心するように、頷いていた。
「あれは、人でありながら魔物の属性を併せ持つ存在になる、そういう力だ。龍神化すると、力が数段上がるだけでなく、耐久面も強くなる。おまけに、普段は点でダメな攻撃魔法も、火属性限定で使えるようになるんだ。」
「あぁ、あの時火魔法が使えたのはそういうこと。」
すると、セルクさんが手を挙げる。
「すまない、1つ確認したいことがある。君があのような力を持っていたことは驚きだが、そんな力があるなら、最初から使っていれば良かったんじゃないか?龍神の状態の方が、数段強いのだろう?」
「あ、確かに。どういうこと?」
俺は目を伏せ、首を横に振った。
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