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30.力の解放

☆☆☆


「あ?んだよその目は。さてはよほど死にたいらしいな。」


奴は殺気をこちらに向ける。それだけでも、一般人なら気絶するほどの威圧感を放っていた。俺は負けじと睨み返す。


「いやなに、ちょっと気が変わってな。今まではどうにか時間を稼ぐか、上手くいってお前を追い払うくらいに考えてたんだが・・・それはやめだ。」


俺はやつに向け、拳をつきだす。


「俺の力をもって、てめぇはここで殺す。跡形もなく消してやるよ。放っておいたら、いつ家族に手ぇ出されるか分からないからな。」


「殺すだァ?はっ、冗談はよせよ。さっきまでボコボコにやられてたうえ、時間を稼ぐだの言ってるやつが何をほざいてんだか。やれるものならやってみろよ。最も、そんな実力じゃあ到底無理だがな!」


奴は笑いながらそう言う。


「あぁそうだな、このままじゃ無理だ。・・・この力を抑えた状態では、な。」


「・・・なに?」


「だから、俺の本当の力で戦ってやろうじゃないか。俺の真の力でな。それじゃあ、覚悟しろよ?」


俺はニヤリと笑いながら、全身に魔力をめぐらせる。身嵐とは違い、表面に纏うのではなく、血に魔力を混ぜ合わせるように。


地面が揺れ、体が熱くなっていく。皮膚が固くなり、顔の一部に亀裂が走る。固くなった皮膚は、龍の鱗のようになっていた。


爪は伸び、龍の鉤爪のようになる。そして、背中からは龍の翼が生えた。身体中に巡った魔力が熱を発し、赤いオーラのような形となり、可視化される。


龍神化(ドラグラス)10%(テンス)・・・さぁ、やろうか。」

☆☆☆


「―――」


突然の変化に、声が出ない。イグニくんが何か力を込めたかと思うと、だんだんと姿形を変えていった。


腕、背中、顔、オーラ・・・それから、髪と目の色も。先程まで緑色の髪、青色の目をしていた彼が、今では髪は赤く、目は黄色く染まっていた。もはや、今までのイグニくんとは似ても似つかない姿だかった。


姿だけじゃない。声も低くなっているような・・・。彼が彼でなくなってしまったような気がして、思わず巻いてくれた包帯に手を触れる。


「・・・」


私はただ、離れたところで無事を祈ることしか出来ないのだった。


☆☆☆


「なんだ、その姿は!?一体何をした!?」


「さぁて、何をしたでしょうか。言っておくが、今の俺はさっきほど優しくないぞ。楽に死ねると思うな。」


俺は煽るようにそういった。


「ふん、まぁいい。所詮虚仮威し(こけおどし)だそんな力!俺の本気を見せてやる!!」


敵はこれまでより遥かに早いスピードで、これまで以上の威力を持つ剣技を放ってきた。先程まで本気を出していなかったらしい。この力を使ってなかったら、まず勝てなかったろうな。


だが、今の俺を前にして、それは意味をなさなかった。振るわれた剣は、俺の手に掴まれ止まる。そのまま、敵の剣を片手で破壊した。


「んなっ!?なんだと!?」


「どうした、この程度か。じゃあ次は俺の番かな?」


魔力を放出し、体に纏う。体の熱がさらに高まった。


「ぐっ、この魔力は我ら魔族に近い・・・そんな馬鹿なことが・・・」


「俺は半分は人間じゃないんでな。それに、この力は・・・いや、お前に言っても仕方ないか。とにかく、これが俺の本当の力だ。」


「なんなのだ・・・なんなのだお前は!?」


「喧嘩を売る相手を間違えたな。お前はもう終わりだ。力の差に絶望して、潔く死ね。」


「くそ・・・くそがっ!!これならどうだ!!」


奴は巨大な火球を作り出し、上に飛び上がった。俺はそれを目で追う。


「これが地面にぶつかれば、この国など木っ端微塵だ!それが嫌なら受け返すしかないぞ!そんなこと、お前にできるはずが─」


「そういうのはいい、しらける。」


俺は身嵐で瞬時に動き、火球を蹴り1発で吹き飛ばす。そして、やつの土手っ腹に爪の一撃を叩き込んだ。俺の腕は、やつの体を簡単に貫通する。


「っあ・・・っ」


敵は目を見開き、こちらを睨んでくる。俺は瞬時に腕を引き抜いた。やつは力なく項垂れ、地面へと落下していく。


「そんな・・・こんな・・・」


このまま放っておいても死にそうだが、万が一ということもある。徹底的にやってしまおう。俺は身嵐で一足先に地面へ降り立った。


短剣をやつめがけて構える。魔力を手に集中させると、透明だった剣身が赤く光り輝き、炎を纏った。


「あの短剣・・・そうか、魔法石・・・!!」


セルクさんがそんなことを叫ぶ。魔法石とやらは、確かセルクさんの剣に埋められているやつだ。あの人も最初に戦った時、剣に炎を纏わせていた。あれとこの剣の刃は、どうやら同じ素材らしい。


まぁ、そんなこと今はどうでもいい。この力をこいつにぶつけることにしよう。全身全霊を持って・・・こいつを殺すために。


「終わりの時だ・・・龍の血は炎となりて(ドラゴナイズフレイア)!!」


短剣を投げ、そこに炎を纏わせたグーパンを合わせる。これにより、短剣が相手に突き刺さると同時に、打撃による追加攻撃ができるという技だ。昔、修行していた時に編み出した技のひとつだった。


「―――」


やつは俺の攻撃をまともに受け、声も挙げずに跡形もなく消え去った。


☆☆☆

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