表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/74

28.借りは返す主義

☆☆☆


そろそろ戦いも収まったころと判断し、もう一度門の所へ向かう。俺の読み通り、一連の戦いは収まっていた。


あくまで、魔物vs人間有象無象という戦いは、だが。


「ぐ、う・・・くそ、なぜだ・・・四天王とはいえ、実力的にはそう差はないはずなのに・・・なぜ攻撃が効かない!?」


「ふん、一度は魔王様を下した勇者パーティの一員が、単騎ではこの程度か。期待外れもいいところだな。」


そこには、セルクさんと魔王軍の指揮官もとい四天王の一人がいた。どうやら、一騎打ちの最中らしい。周りに兵隊の死体がころがっているところを見るに、チマチマやってたところにこの四天王が現れて一網打尽にされたのだろう。


魔物の姿がないところを見ると、仲間すら巻き込んで吹き飛ばしたようだ。相当イカれてやがる。


というか、セルクさんもボロボロだ。あの人そこそこ強いはずなんだが・・・それだけあの四天王の1人が強いということなんだろう。魔王軍側の勢力が以前より強大になっているのも間違いないらしい。


それはつまり、まともにやり合ったら、俺が勝てるような相手じゃないということ。戦うだけ無駄・・・だがまぁ、あの人には世話になったし、ここらで恩を返しておくとしよう。


「セルクさん、立てますか。」


身嵐でセルクさんに近づき、手を差し伸べる。


「イグニくん・・・すまない、不甲斐ないところを見せてしまったな。」


「いや、あれ相手にここまで持ちこたえただけでも凄いと思いますよ。お邪魔でなければ、俺も加勢します。」


「・・・本来なら先生として断るべきなのだろうが、すまない。ぜひ力を貸してくれ。」


セルクさんは俺の手を取って、立ち上がった。


「ん?お前、さっきの・・・なんだよ、結局人間側の肩をもつのか。どちらの味方でもない~とか抜かしといてよ。」


「人間なんざどうでもいいがな、この人には恩があんだよ。返す前に死なれちゃ困るんだ。それに、お前の力も気になるし。ここからは俺もやらせてもらうぜ。」


「そうか、まぁいい。手応えが無さすぎて退屈いていたんだ。2対1、受けてやるよ。」


四天王の1人は、そういって高笑いをした。


「イグニくん、やつは厄介な力を使う。魔法を吸収してしまうんだ。私の炎も吸収されたよ。」


「魔法を吸収ですか・・・わかりました。」


こちらは臨戦態勢に入った。それぞれ、剣と短剣を構える。ここに勇者が加われば、さらに楽になったろうに、どこで何をしてるんだか。


そう思った矢先、目の端に恐ろしい光景が映った。近くの家の壁に、大量の血を流しながら倒れている人がいた。その姿は、あの勇者によく似ていた。


「・・・あの、あそこに倒れてるのは、まさか」


「そのまさかだよ。あの魔物が勇者の背後に現れて、一瞬で心臓を貫いた。あの勇者が奇襲で死ぬとはね。すぐ回復薬を使ったけれど、無理だった。」


セルクさんはどこか遠い目をしていた。


「あいつは、あいつだけはここで倒す。勇者の仇は、私がとる!」


そういってセルクさんは、剣を手に突っ込む。止めても無駄だと判断した俺は、身嵐でいっきに敵に近づいて、セルクさんとは別方向から切りかかった。


だが、どちらの剣も奴には届かなかった。手のひらからバリアのようなものを展開され、あっけなく打ち負ける。だが、まだスピードならこちらに部が・・・!


「ふん」


「がっは・・・!?」


また身嵐で近づき、今度は上から切りかかったが、あっさりと止められた。それだけでなく、今度は反撃まで食らってしまった。壁に思い切りたたきつけられる。


「おいおいこんなもんかよ!?」


「っあ・・・!!」


倒れたところに追撃をくらい、壁にめり込んだ。その後、壁が崩れて俺は地面に這いつくばった。


「か、はっ・・・」


身体が思うように動かない。たった2回の攻撃で、それほど深刻なダメージをおってしまった。


ここまで力の差があるってのか、ちくしょうめ!何とか起き上がるが、このままでは体が持たないことは明白だった。


「へへ・・・変に首突っ込まずに逃げとけばよかったぜ、こんちきしょう。」


「ほう、まだ立てるのか。割と本気めにやったのに、しぶといやつめ。」


「はっ、あったりめぇよ。こんなとこでくたばってたら、家族を守れねぇからな。」


ボロボロの状態で、かつ強気な俺は、さぞ相手に滑稽に映ったのだろう。俺を見ながら、高笑いをするのだった。

☆☆☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ