表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/74

25.おかしいのは自分か周りか

☆☆☆


「し、四天王だって!?アイツらも復活してたのか・・・魔王と共にきっかり倒したのに!」


「どうやらそのようです。俺自身見るのは初めてですが、母さんと父さんから聞いた、四天王のひとりの特徴に合致してましたから、その可能性が高いかと。 」


「そんな・・・」


「父さんの見立てでは、四天王を倒すのがやっとだとの事でした。アイツらでは束になっても適わないでしょうね。あんたはそんな死地に、皆を送り出したんだよ。」


セルクさんの顔があおざめていく。俺はそれを無視し、教室へと戻ろうとした。だが、その道を阻む者がいた。


「どこへ行くんだい、イグニくん。」


「この学校の生徒ともあろうものが、敵前逃亡ですか?」


あまり顔を見たくない、校長と副校長の姿だった。


「なぜここに?」


「魔王軍が攻めてきたと聞いてね。相手の数と特徴はわかっているのか。」


「そ、それは・・・」


兵がそういって、俺の方を見る。俺はため息をついて答えた。


「1000をゆうに超える数で、一個体がそこそこ強力な魔物。魔王軍側の主将は、おそらく四天王の1人だ。」


「へぇ、結構大胆な強襲だね。それで、先程までここにいた生徒たちは?実技授業中だったはずだけど。」


「ゆ、勇敢にも立ち向かいに行かれました!」


兵がそう答える。校長はそれを聞いて、にっこりと微笑んだ。


「そうか、戻ってきたらうんと褒めてやらないとな。それでこそ勇者を継ぐものたち、勇気ある行動だ。なにか報酬も考えておこう。」


「勇気だと?バカか、無謀の間違いだろ。」


俺はぼそっと呟いた。多分、勇者には聞こえているだろう。聞こえるように言ったのだから。だが勇者は、俺の言葉を無視して、俺の方を向いて言った。


「で、そんな中君はどこへ行こうとしてるんだ?」


「なにって、教室に戻るんですよ。こうなってしまっては、もう授業どころではないでしょう。大人しく、みんなが戻るまで魔法の勉強でもしておきます。」


「君、自分が恥ずかしいと思わないのか?皆命懸けで戦ってるというのに、1人逃げるのか。」


「そうよ!みんなと一緒に、あなたも戦いなさい!!」


そう言われ、俺は鼻で笑った。


「戦って無様に死ねってか?馬鹿言えよ。そんなの愛国心でも正義でもなんでもない、ただの自殺行為だ。それを抜きにしても、俺は戦わないがな。あんたらにはさっき言ったはずだけど?」


「あなたね、つまらない意地をはらないの!いいからさっさと戦いに行きなさい!あなたが行かないせいで、クラスメイトが怪我したり、殺されてもいいっていうの!?」


「別に構わねぇな、俺には関係ないし。家族でもないやつを助ける義理はねぇよ。」


「まぁまぁ、そんなことを言わずにさ。あういうヤツらを放っておけば、いつか君の家族にも危害を加えるかもしれないぞ?」


「そうなればその時にぶち殺します。その事は、今襲ってきてる敵の主将にも忠告してますから。」


「忠告だって・・・まさか君、敵にあったのか!?」


「えぇ会いましたよ。だから分かるんです、あいつらじゃ絶対に勝てない。全員名誉ある戦死ですよ。どこかの誰かさんのせいでな。」


「っ・・・」


校長は苦い顔をした。


「あの、もういいですか。俺は戻りますので。」


「ダメよ、行きなさい。これは学校としての命令です。みんなを助け、魔王軍を追い返しなさい。そうしないのなら、この学校からは退学処分とします。」


副校長が、そう声を荒らげる。最低だな、こいつ。権力で脅してくるとは。これだから人間は手に負えない。さっさとくたばってしまえばいいのに。


「さ、さすがにそれは・・・!」


セルクさんが声を荒らげるが、副校長に睨まれ一蹴される。そこに、校長が口を開いた。


「彼女の言う通りだ。君も戦え、イグニくん。2人とも私と一緒に来い。今こそ人類救済のため、みんなで戦うときだ。」


「は?嫌だって言ってるだろ。」


「いいからきなさい、これは命令だ。」


「校長としての命令ね。退学にしたきゃ勝手にしなよ。」


そういうと、校長は何故かにっこりと笑った。そして、その笑顔のままこういう。


「校長?いいや、これは勇者としての命令だ。逆らうのなら、勇者に楯突いた罪人として、斬首に処す。」


「・・・は」


乾いた声が漏れ出る。こいつ、正気か?本気でそんなこと言ってるのか?そう思い、勇者の目を見る・・・ダメだありゃ、本気のやつだ。本当に馬鹿げてやがる。


ここで勇者を手にかけるか、とも思ったのだが、そんなことをすれば世界を敵に回すことになる。そうすれば、家族に危害が及ぶかもしれない。それに、勇者と父さん達は友人だ。友人が殺されたとしっては、俺は家族に見放されるかもしれない。


「卑怯者が・・・!」


俺に取れる選択肢など、ひとつしか無かった。


☆☆☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ