24.半端に力を持つ者は
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「よっと。ありがとうグリフォン!」
地上よりも3メートルほど上空で、俺はグリフォンから降り立った。そのままグリフォンはどこかへと飛んでいく。魔物と一緒にいるところを見つかると、色々と厄介だからな。
俺が実技場に足を向けたと同時に、実技場の扉が開いた。奇しくも扉より少し前にいた俺は、出ていくヤツらと鉢合わせすることになった。
「あれ?君外にいたの?さっきまで中にいなかったっけ?」
「い、いやぁ?俺は外にいたよ?」
「ふーん・・・?」
な、なんか怪しまれてるな。とりあえず勢いで押し切ろう。
「それで、君たちは戦いに行くの?魔王軍と。」
「あぁ、今の俺たちの力があれば、魔物なんて軽くひねれるさ。俺たちの力で鼻の穴をあかせてやるぜ!」
「もう止めたって無駄だからな、俺たちの意思は固いんだ。もちろんお前も行くだろ?1人でも多くの人を救わないとな!」
そんなことを言いながら、イキがる同級生。悪ふざけとかじゃなく、本気で言ってるから、尚更タチが悪い。俺はその馬鹿さ加減に、心の中で苦笑する。
「頑張ってね、それじゃ」
そういって、隣をとおり過ぎようとして、肩を掴まれた。先程俺との戦闘で負けたやつだった。
「おいおい、なんの冗談だよ?あぁそうか、お前はこの学校に来たばっかりだもんな。実戦にビビっちまったか。」
ニヤニヤと笑いながら、そういう。負けた腹いせだろうか、俺をバカにするかのように指さしてきた。
「こいつ、魔物との戦いから逃げようとしてるぜ!ビビっちまったんだってよ!」
クラスのみんなが笑っていた。ふいに、前世に受けたいじめが脳内にチラつく。
「そ、そうなんだよ。いざ魔物と実戦ってなると、ちょっと怖くてね・・・みんなが戦うのは止めないよ、僕の分まで頑張って。」
「おい、本当に行かないつもりか?それでも戦士か、腰抜けが!」
そのせいだろうか、勢いで口が滑ってしまった。
「勇気と無謀は違う、死にたいやつは勝手に死ねばいい。」
「・・・は?」
言い終わってからハッとしたが、もう遅い。皆が俺を見てくる。俺はため息をついて、作り笑顔を辞めた。
「はぁ・・・だから、死にたいやつは勝手に行けって言ったんだよ。自分の実力も測れない大馬鹿どもめ。」
「て、てめぇ調子に乗ってんじゃねぇぞ!俺たちが負けるとか思ってんのか!?」
「あぁ死ぬね、間違いなく。戦場でそんな思い上がりをしてるようならな。今来てる魔物は、少なくともお前らじゃ到底敵わないだろうから。」
「んだとてめぇ!!」
掴みかかってこようとした奴を避ける。
「おいおい、こんなことしてていいのか?行くならさっさと行けよ、英雄さん。」
「っ・・・言われなくても!おい行くぞみんな!こんなやつ放っておけ!」
その合図で、俺を除く生徒全員が、俺の横を走って過ぎ去っていった。シエルさんも、俺をちらりとみて横を通り過ぎて行った。
「・・・忠告はしたからな、勝手にしろ。」
溜息をつきながら実技場に入ると、セルクさんと兵の姿があった。
「あ、イグニくん・・・君は戻ってきたんだね。」
「セルクさん、なんでアイツらを止めなかったんですか。」
「止めたよ、もちろん。でも、誰一人として聞かなかった。それに・・・その」
「まさか、あいつらの実力があれば、そこそこ戦えるだろうって思ったんですか?もしそうなら、先生失格ですよ。」
俺がそう言うと、セルクさんは目を見開いた。だがすぐに目を伏せ、俯いた。
「よくわかったね、その通りだよ。彼らも言っていたが、実戦に近い方式で半年教えていた。もうそろそろ魔物と戦ってもいい頃合いだと思っていたし・・・」
「どんな理由があろうと、あなたは教師として、絶対に止めなきゃいけなかったんだ。それに今回に関しては・・・あいつら、全員死にますよ。」
「しっ・・・!?ど、どういうことだい!?」
「さっきここに攻めてくる魔王軍を確認してきました。攻めてきてるのは、この辺りの魔物じゃない。一個体それぞれが、強いやつばかりだ。」
「なっ!?そんな報告は受けて・・・!」
「無いでしょうね、遠くから見ただけじゃ、そこまで分からないでしょうから。さらに問題は、それを引き連れている魔王軍側の主将です。」
「し、主将?いったいどんな・・・」
「これは、相手から感じ取った力を元にした推測ですが・・・」
俺は、セルクさんを真っ直ぐ見て言った。
「あれは、幹部クラスです。おそらくは、魔王直属の四天王に匹敵するか、もしくは四天王その人かと。」
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