23.魔王軍との会合
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「もうすぐで人間の街だ!行くぞお前ら!」
降下中、そんな声が先頭から聞こえる。先頭に見た目から将軍っぽい奴がいるのが見えた。あれが魔物側の主将だろう。
俺はそいつの目の前に降り立った。ヒーロー着地、決まった!一回やって見たかったんだよね、これ。
「よっと!はいそこストップ!」
「のわっ!?な、何事だ!?敵襲か!?」
「よぉ、あんたが魔王軍側の主将かい?」
「貴様、人間だな。こちらに気づいて先手をうちに来たか、頭のいいヤツらめ。だがこの数を相手に1人で来るとは、拍子抜けだなぁ!」
そういい、魔王軍の主将は笑いながら、剣を鞘から抜く。魔物たちも臨戦態勢をとっていた。戦う気などサラサラないのだが、俺は誤解を与えてしまったようだ。まぁ、あんな登場をしたらそうもなるか。
「いや、俺は戦いに来たわけじゃない。あと人間側の使いでもない。1個聞きたいことがあってな。」
「ふん、信用出来んな。人間は我々の敵、ここで切り伏せるのみよ。」
「いやほんとなんだってば。うーん・・・あ、そうだ。おーいグリフォン!」
俺は近くの木で待機させていたグリフォンを呼び寄せる。グリフォンは俺のそばに着地し、体を擦り寄せてきた。優しく頭を撫でてやる。
「ぐ、グリフォンと意思疎通を!?貴様、テイマーとかいうやつなのか!?いやしかし、テイマーの魔物は暴走させたはず・・・」
「違う違う、こいつは友達。な?」
俺がそう言うと、グリフォンは嬉しそうにひと鳴きした。というかテイマーの魔物暴走は、魔王復活による弊害じゃなくて、あっちが意図的に引き起こしたものなのか。
「・・・わかった、ひとまず信じよう。だが、それならお前は何しにここに来た?あの国の住人なのだろう?」
よかった、とりあえず誤解は解けたようだ。俺はまたグリフォンを近くの木に待機させ、話を進める。
「とりあえず、お前らの目的を聞きたくてな。あの国を襲って、人間を殺すのが目的か?」
「第1の目的はな。ここを滅ぼして我らの拠点にし、侵攻の足がかりにする。そして、他の人間の国にも攻め込むつもりだ。」
「ほう?なるほど。それが魔王様の命令ってわけね。」
俺は頷き、こう続けた。
「わかった、ありがとう教えてくれて。もう行っていいぞ。」
すると、何故か主将は目を丸くしていた。とんでもないものを見たかのような顔だ。
「どうした?あの国を滅ぼすんだろ?」
「ど、どうしたもこうしたも・・・貴様は人間だろう!?同族が滅ぼされるという話を、はいそうですかと了承するか普通!?人間の味方では無いのか!?」
「違うって言ったじゃん。赤の他人なんざ興味はないね。」
「そ、そうか。では、我々の味方ということか?」
「それも違う。俺は人間の味方でも、魔王軍の味方でもない。俺は自分の家族が無事なら、それでいいのさ。」
「・・・?よくわからんやつだな。」
「分からなくて結構。目的はわかったんで、俺は戻るよ。人間を滅ぼしたきゃ勝手にどうぞ。」
「そ、そうか・・・ではそうしよう」
俺の横を通り、魔王軍は行軍を再開した。
「あ、そうだ。1個だけアドバイスやるよ。」
「アドバイス?」
主将は足を止め、俺のほうを振り向いた。俺はあくまで笑顔で、やつに告げた。
「人間の街を滅ぼす過程で、俺の家族に何かあったら・・・お前ら全員殺すから。」
ドスを聞かせて、そう宣言する。その場でグリフォンを呼び、俺は街へと戻るのだった。
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