21.行動理由
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「何故です!?あなたは勇者パーティの、リュークの子でしょう!?なぜ人類のために戦わないのですか!!勇者は全人類の平和のために、全てを投げうって戦い抜いたんですよ!!」
「えぇ、それが?そのご立派な勇者様と、ただの子供の俺に、なんの関係があるんです?親が勇者と共に、人類のために命張って戦ったからって、俺もそうする必要がどこにあるんです?」
「勇者がどれだけみんなのことを思っているか、知らないからそんなことが言えるのよ!!あんたみたいな奴がいるから、世界は救われないのよ!!」
若干ヒステリック気味にそういう副校長。愛する勇者様を否定されたように聞こえたための発言だろうが、それはちょっと押し付けがましいな。
言い返す前に、校長が先に口を開いていた。
「やめるんだ、サラ。そういう言い方は良くない。」
「勇者、でも・・・!」
「彼は魔王討伐を目指してくれている。それは俺たちの目的にも沿ってるし、尊重すべきだ。」
さすがは勇者様、言うことが違うね。少しキザっぽいというか、利他主義気味だけど。
「君が戦う理由はわかった。家族のために戦う、大いに結構だとも。だがわからないな、どうして人類のために戦うことを嫌うんだい?」
「・・・それは」
俺は口をつむんだ。話したところで、こういうお人好しには理解などされないだろうからな。まぁ、理解されたい訳でもなし、特段話す意味は無いと思ったからだ。
「母親が魔物だからか?確かに魔王討伐後も、人間は魔物を迫害し続けた。だがそれは、人間は魔物を恐れているからだ。魔物は人を襲うからな。俺が旅してた時もそうだったし、現にその状況が各地で起きている。」
校長は的はずれな見解を示した。勇者の言うことは正しいのだろうが、それは俺の理由ではない。訂正しようとしたところに、副校長が声を上げた。
「やっぱり魔物は滅ぼすべきね。リュークがあれを庇った時は心底驚いたわ。彼だって故郷を魔物に襲われてるのに、あろうことか、魔王直属の四天王の子供を庇うなんて。そして生まれたのが人間を守ろうとしないようなやつなんて・・・世も末ね。」
・・・あ?
「サラ、言い過ぎだよ。あの子は人間を襲わなかったし、君だって最後に認めたじゃないか。」
「あれは認めなきゃいけない感じだったからそうしただけで、私はずっと反対だったのよ。魔物なんて酷いやつらばかりで、みんなクズ─」
その瞬間、俺は無意識に副校長に向け、ナイフを投げつけていた。首から数センチズレた窓の木枠に、ナイフが突き刺さる。
「え・・・?」
「俺のことはどう言おうが構わない。だが、家族を侮辱するなら、話は別だ。相手が人間だろうが、魔物だろうが、魔王だろうが・・・容赦なく殺す。」
そう言いながら、身嵐で刺さったナイフに近づき、それをを引き抜いて副校長につきつける。
「ひっ・・・!?」
「俺の家族にあんなことを言って、タダで済むと思うなよ。謝罪は受けない、死を持って償ってもらおう。」
副校長は腰が抜けたのか、その場に座り込んだ。俺はナイフを掲げ、切りつけようとしたところに、勇者が待ったをかけた。
「そこまでだ、そのナイフをおろせ。これ以上妻になにかするようなら、この場で切り伏せる。」
校長はそう言いつつ、腰の剣に手を当てていた。どうやら脅しのつもりらしい。俺は横目で校長を捉え、ナイフをしまって校長室から出ていく・・・前に。俺は振り向き、2人に対して言い放った。
「俺のことが気に食わないなら、退学にでもするといいさ。だがそっちがその気なら、こちらにも考えがある。まぁ、どうせ何も出来やしないでしょうが。」
「挑発のつもりかい?俺は怒ると我を忘れるタイプでな。あまり俺を舐めないことだ。」
剣に手を当てながら、勇者はそういう。俺は鼻で笑いながらいった。
「ならまず、その殺気が全くない脅しを辞めたらどうです?本当に怒ってるなら、俺を殺す素振りのひとつでも見せろよ。」
「っ・・・!」
図星だった校長は、苦虫を噛み潰したような顔をした。
「俺はあんたらの敵でも味方でもない、今のところはな。敵となれば、誰であれ容赦はしない。それでは、失礼します。」
俺は丁寧にお辞儀をして、その場を後にした。
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