表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/57

20.2人からの依頼

☆☆☆


「えぇと、私をお呼びとの事でしたが、一体どのようなご要件で?」


「あはは、そんな固くならなくていいよ?もしかして緊張してる?」


「そ、そりゃあ緊張もしますよ。勇者である校長先生と、そのパーティメンバーだった副校長先生の前ですから・・・」


「ふふ、そういうところは歳相応なのね。安心して、私たちは校長副校長とか、勇者一行とかじゃなくて、友達の子供として呼んだのよ。」


「あぁ。だから話し方も崩してもらって構わないよ。」


「そう、ですか。そういうことなら・・・」


まだ少し緊張するが、幾分ましになった。こういうところも勇者一行たる部分なのだろう。


「君のご両親・・・リュークとシュアナさんから、君と妹さんの話は聞いてたんだ。君が入学するって聞いて、ぜひ1度会って話したいと思ってね。」


「セルクから聞いたけど、セルクと1戦交えたんだって?」


「あ、あれは俺の家族を傷つけようとしたからで・・・」


「わかってるさ。君の住んでいるところは悪性のない魔物が住まう森だからね。セルクからも聞いたと思うが、魔物の動きが活発でね。テイマーの魔物も暴走する始末だし。」


「魔王・・・よもやあの時以上の力を蓄えて復活するとは。あの時きっかりトドメは刺したはずですが・・・」


「復活してしまったものは仕方ない、けれど今の魔王を倒せるほど、僕たちの力は強くない。だからこそ、こうやって学校で、次世代の育成に取り組んでいるんだ。」


「父さんからも聞きました。魔物の暴走もあるし、家族にも被害が出かねない。ここで、魔王を倒す仲間を集めるつもりです。」


「そうか、頼もしいな。」


勇者は手を差し伸べてきた。


「年老いたが、俺は今でも勇者だ。その信念は変わらない。人類皆笑って暮らせる、平和な世界を取り戻したい。生きとし生けるもののため、人類すべての救済のため、是非とも君の力を貸してくれ。よろしく頼むよ。」


勇者はにっこりと微笑み、そう言った。ああ、確かにこの人は勇者らしい。考えも、理想も。


俺はその手をじっと見つめ、勇者の顔を見上げながらいった。


「そういうことなら、お断りします。」


☆☆☆


「・・・へ?」


断られるとは予想していなかったのだろう。なんとも間抜けな返事が聞こえた。


「お断りします、と言いました。俺は人間のためには戦いません。人が何人死のうが、文明が滅びようが、どうでもいい。俺は、俺の家族のために戦うだけです。魔王を倒すのも、家族との平穏な暮らしを取り戻すためですから。家族さえ無事なら、その他はどうでもいいので。その辺、勘違いされませんよう。」


そう、これこそが俺の信念。前世のことで、俺はもはや人を信用できなくなっていた。唯一の救いは、家族だけ。だから、家族を守る。家族だけは、何としてでも守り抜く。ほかのことにまで首を突っ込む気はない。


俺の話を聞いた2人は、唖然としていた。大方、俺を人類のために戦う使徒かなにかと思っていたのだろう。残念ながら、俺はそうじゃない。そんな人にはもうなれないし、なりたいとも思わない。人は醜いものだよ。俺はよく知っている。


「確かにあなたは立派な勇者だ。考えも、理想も、すべてが人のため。自分より他人を優先し、みんなのためにとかほざく。正直、反吐が出ますよ。それが理想の押しつけだと、なぜわからないのか。」


俺はさっきの勇者のように、にっこりと笑ってそういった。


「あ、あなたそれでも・・・!」


「それでも勇者一行の子供か、って言いたいんですか?知るかよ、そんなこと。勇者一行の関係者なら、誰とも問わず救うべきってか?冗談じゃない。俺は、守りたいものだけを守る。その枠組みに、赤の他人は存在しない。」


「・・・君にとって家族だけが、救うべき、守るべきものだと?」


「その通りです。さらに言うなら、家族だけが、俺が救える命です。手の届く範囲にいないひとまで救おうなどと、おこがましいにもほどがある。」


ギリ、という歯ぎしりの音が聞こえる。が、俺は無視して続けた。


「俺の目的は魔王討伐ですので、そういった意味では人類救済にもなるのでしょうが・・・さっきも言った通り、あくまで俺が手を差し伸べるのは、家族だけです。赤の他人にまで手を差し伸べるほど、俺は無責任になれませんから。自分の身は自分で守れ。」


俺は校長と副校長に向けて、キッパリと、そう告げるのだった。


☆☆☆

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ