16.彼に合う武器
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「セルク、そいつが例の?」
「あぁ、イグニ君だ。」
クルセントと呼ばれたその男は、俺を頭の先から足の先までみてきた。
「あ、あの・・・」
「うむ、若い割にはいい体つきしてるな。リュークのやつ、子供が出来たら最強になれるよう鍛えると言っていたが・・・有言実行したらしい。」
「父さんを知ってるんですね。最強、とは言えないですけど、それなりに努力はしてました。父さんの足元にも及ばないですが・・・。」
「ふむ、そうか。焦ることは無い、これからいくらでも強くなれるさ。」
クルセントさんはガハハと笑いながらそういう。そして、後ろから木箱を取りだしてカウンターに置いた。
「ほれ、初心者用の武器だ。坊主、メイン武器は何にする?父親とおなじ弓か?」
「あ、いえ短剣を。」
「短剣?そりゃまたマイナーなもんを使うな。」
クルセントさんは少し驚いたように言った。
「マイナー?そうなんですか?」
「あぁ。リーチが短いし、他の武器より威力ものりにくい。携帯しやすい、スピードが出せるっていう利点はあるが、メインにしてる奴は珍しいぞ。」
「へぇ、そうなんですね。僕はスピード特化の戦術なので、短剣があってるんです。」
「そうか。短剣は・・・このボックスにはないか。そこに置いてあるやつから、これってやつを選んでみな。」
クルセントさんは、壁際に置かれた箱のひとつを指さす。近づくと、何本かの短剣が入っていた。デザインが凝っているもの、シンプルなもの、明らかに高級そうなもの・・・色々あったが、そのうちの1本に目を引かれた。
手を伸ばし、短剣を手にする。他のものと違い、刃が半透明になっている。まるで水晶のような、そんな感じだった。
「ほう、そいつを手に取るか。」
「綺麗ですね、これ。ちょっと高そうですけど、軽いし使いやすそうです。」
「そりゃよかった。そこのやつは全部試作品でな。商品にできない廃棄品だからタダでいいぜ、持っていきな。」
「えっ!?いやいや、さすがにそういう訳には」
「いいんだよ。その代わり、うちの店をぜひご贔屓にな。」
クルセントさんは、笑顔で親指を立てていった。この人はいい人だ、目を見ても嘘ついてる感じしないし。
「は、はい!絶対また来ます!」
俺も笑顔でそう返し、ワクワクしながら店を出た。いい武器も手に入れ、ますます学校生活が楽しみになるのだった。
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「・・・クルセント、本当はいくらなんだアレ。」
「いったろ、試作品だって。本当にタダだよ・・・正規品ならあんたの月給くらいだがな。」
「げっ・・・!?」
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