15.お騒がせ入国
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王国に入るための門の前。前回の失敗が脳裏によぎるが、邪念を振り払うように首を横に振る。今度は大丈夫、ちゃんと最新の入国許可章だって持ってる。それに、前と違って学校の制服を身にまとってるんだ。何も問題ない、堂々と入ってやろう!
そんなことを考えながら、得意げにカードを端末へかざす・・・が。
『ビーッ!!ビーッ!!』
かざした瞬間、大きめのアラート音が端末から鳴り響いた。すかさず、門番がすっ飛んでくる。ま、また厄介な方向に・・・!?なんでこうなるんだ!?
「貴様いったい・・・って、あなたは!」
「え?あ、あの時の門番さん!」
俺の元にやってきたのは、あの日俺を止めた門番の1人だった。今日の門番係は彼だったのか・・・助かった。
「あのときはどうも。その制服、学校に合格したんですね!おめでとうございます!」
「あ、ありがとうございます。それであの、これはいったいなんです?」
依然アラートが鳴りっぱなしの端末を指さし、門番に聞いた。
「これは、特定のカードがかざされた時になるアラートですね。例えば入国禁止となった人や、指名手配になった人とか。」
その説明を聞いて、俺は冷や汗をかいた。つまり俺、この国には入れないのでは!?
「ぼ、僕入国禁止ですか!?」
我ながらすごい剣幕で門番に迫るが、当の門番は笑いながらこう返した。
「はは、まさか。これはあなたを見つけるための措置ですよ。」
「僕を見つけるため?どういうことですか?」
言ってる意味がわからず、きょとんとしながら聞き返した。
「貴方が来たら、騎士団長様を呼ぶように言われてるんですよ。あの人、あなたの学校への案内役を買ってでたらしいです。」
「そ、そうだったんですか。よかった、ちゃんと入国できるんですね。」
「驚かせてしまってすみません、今騎士団長様を呼びますから。」
そういうと、門番は待機所に備え付けられた機械をなにやら弄り、騎士団長・・・セルクさんに連絡をとった。数分後、走りながらこちらへとすっ飛んでくる人影が見える。
「はぁ、はぁ・・・い、イグニ君!」
「ど、どうもセルクさん。数日ぶりですね。」
「いやぁ、受かってよかったよ!君の顔がくらいままだったから、落ちてたらどうしようかと・・・。おっとこうしちゃいられない、早速学校へ案内するよ。といっても、途中まではこの前と一緒だけどね。」
「セルクさんと一緒とは、とても頼もしいです。よろしくお願いします!」
「はは、よしてくれ。じゃあ行こうか。」
俺はセルクさんに連れられ、学校へと向かうのだった。
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学校へ向かう道中、セルクさんがふと、足を止める。
「セルクさん?どうしたんですか?」
「いやなに、君に入学祝いをと思ってね。個人的な詫びも含めて、どうだい?」
セルクさんが、ひとつの店を親指で指さしていった。そこは、少しふるびた建物。看板には、「武具防具の専門 クルセント商店」という文字が。
「武具防具のお店・・・って、まさか」
「そう、君には武器をプレゼントしてあげようって思ってね。学校の生徒には、入学時に武器が支給されるんだけど、君は編入だからそれがないんだ。その代わり、こっちから提供させてもらいたいのさ。」
「有難いですけど、こういうのってそこそこするんじゃあ・・・」
恐る恐る聞くと、セルクさんは笑って中に入って行ってしまった。後を追うように、慌てて店の中に入る。
外からの印象通り、中も少しふるびている。老舗ってほどでは無いが、そこそこ年季が入っていそうだ。
「クルセント、連れてきたぞ!」
セルクさんがそう言うと、お店の奥から、体が大きめで強面の男が出てくるのだった。
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