14.試験の結果は
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「はぁ・・・」
国を出る門へと向かう途中、俺は大きなため息をついた。ため息の理由は言わずもがな、試験結果が散々だったためだ。
「まぁその、なんだ。まだ希望が無いわけじゃないんだろう?筆記はそこそこ、剣術の実技はゴーレム停止で満点確定。ならまだなんとかなるんじゃないか?」
隣を歩くセルクさんが、俺の方に手を置いて言う。
「でも、魔法実技は0点ですからね。本当にギリギリだと思いますよ、合格できるか出来ないか・・・」
俺はまたため息をつく。
「すぎたことは仕方ない、ダメなら編入は諦めて、半年後の入学試験に期待するしかないな。」
「ダメなら留年かぁ・・・」
セルクさんと話をしながら歩いていると、いつの間にか門に着いていた。出ようとしたところで、セルクさんに引き止められる。
「渡すのを忘れていた。君の入国許可章だ、次に入国する時はこれを使ってくれ。」
「あ、ありがとうございます。」
「合格してるといいな。それじゃあ、リュークにもよろしく。」
「はいまた、お元気で。」
俺は森に向かって歩く。誰からの視線も感じなくなったところで、グリフォンを呼んだ。カバンの中から、ベルも出てくる。
「お待たせ、帰ろっか。」
「グアッ!」
「ガウゥ!」
俺とベルはグリフォンに乗り、大空へと飛び上がるのだった。
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・・・数日後、学校から通知が送られてきた。恐る恐る、手紙を開ける。両親と妹が見守る中、手紙に書かれた文字を読み上げた。
「試験の結果・・・貴殿は本学校の生徒として『合格』したことをお知らせします・・・!!」
この数日間、受かるかどうかでずっとそわそわしていた。どうなる事かと思ったが、合格の2文字が俺に安心感を与えた。
「やったじゃないイグニ!合格だってよ!」
目をきらきらさせて、自分の事のように喜ぶ母さん。
「いやぁよかった、帰ってきた時絶望した顔してたから、どうなる事かと思ったが。」
「それはお父さんが遠距離型魔法を教えてなかったせいでしょ。」
妹が正論をかまし、父は冷や汗をかいて目を逸らした。俺は苦笑いし、ユイナの頭を撫でる。
「あんまりお父さんを責めないでくれよ、教えて貰っても使えたか分からないし。俺はこの戦い方が性に合ってると思うからさ。」
「お兄ちゃん・・・」
「ま、まぁなんだ。とりあえず、受かってよかったよ。おめでとうイグニ、入学の準備をしなくちゃな!」
「うん!」
俺は元気よく返事をした。
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後日送られてきた制服を身にまとい、セルクさんからもらった入国許可章をポケットにしのばせる。数日前とはまた違った緊張感に包まれていた。
「今日から学校か・・・」
俺はぐっと拳を握りしめ、気合を入れる。
魔王討伐のため、学校へ行ってパーティメンバーを集う。そして仲間たちと共に、魔王を討伐する。そしてまた、家族と幸せに暮らす。これが、俺が学校へ行く理由。
まぁ、魔王討伐に関しては2の次だ。全ては家族の安寧のため。それが俺の信念であり、信条だ。それは決して変わらない。
と、決意を新たにしたところで、袖をクイクイっと引っ張られた。既視感を覚えつつ、その方向を振り返る。先にいたのは、やはり妹であるユイナだった。
「どうしたユイナ、もしかして、お兄ちゃんと離れるのが寂しいのか?可愛いじゃないかこの~」
からかうようにして、優しく頭を撫でる。
「うん。寂しいから、もっと撫でて。」
「へ?お、おう。」
まさか肯定されるとは思わず、少しびっくりしたが、とりあえず要望通り、撫で続けた。数分にわたり撫で続け、何時までやれば良いのか聞こうとしたところで、ユイナから俺の手を離れた。
「ん、もう大丈夫。頑張って、お兄ちゃん。」
「あぁ。ユイナも元気でな。」
俺はユイナに背を向け、玄関前で止まった。
「・・・いってきます!」
俺は背中を見守る3人に、笑顔でそういう。外へと走り出し、あの人同じように飛び出して、口笛を吹いた。
グリフォンとベルがやってくる。グリフォンが俺の腕を足でつかみ、背中に乗せた。
「さぁ、出発だー!」
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「・・・死なないでね、お兄ちゃん。もう、おわかれは二度とごめんだから。」
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