12.誤解
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「問おう、なぜ魔物の味方をする?」
「なぜだと?こいつは小さい頃からの遊び相手、俺の家族同然だ。魔物だとか、そんなものは関係ない。家族を守るのに、理由が必要か?」
「魔物が遊び相手だと?また数奇な人生を・・・いや待てよ、君、名前は?」
「名前?イグニだ。」
「イグニ・・・どこかで聞いたことがある名前のような・・・その耳、エルフ種だろう?父親の名前は?」
「父さんの名前?リュークだが・・・この質問になんの意味が」
その回答の後、騎士団長の顔がどんどん青ざめていくのに気がついた。あれ、もしかしてこの展開は・・・
「すなまかったぁっ!!」
騎士団長と呼ばれたやつは、その場で綺麗な土下座をした。突然のことで、俺は困惑する。それは門番2人も同じだった。
「き、騎士団長様!?一体何の真似ですか!?魔物を従えるようなやつに土下座など!!」
「馬鹿者!!さっきの話を聞いていなかったのか!?あの子はリュークの、勇者パーティの一人、俊敏のエルフの子供だぞ!!」
「「えっ!?!?」」
騎士団長の話を聞いた門番も、同じように土下座をしてきた。俺、置いてけぼり。父さんって、俺が思っている以上にに凄い人なんだな。
「本当にすまない。近々リュークの子供がやってくるという話は聞いていたんだが、まさかこんな事になっているとは。」
「あぁいや、こちらこそすみません。元はといえば入国許可章が古かった、こちらの落ち度ですから・・・」
「入国許可章が古い?」
「これです。どうやら父さん、更新してなかったらしくて。」
例のペンダントを見せると、騎士団長は頭を抱えた。その後震えだし、フフッと笑いだした。
「そうか、あの人はやはりどこか抜けているな。」
「あの、あなたは父さんの知り合いですか?父さんのことをリュークと言ったり、話を聞いた限り、親しそうな印象を受けましたが。」
「あぁ、深く知ってるよ。なんていったって、元パーティメンバーだからな。」
「パーティメンバー・・・ってことは、貴方も勇者パーティの?」
「あぁ、自己紹介が遅れてすまない。」
騎士団長は、俺に手を差し伸べて言った。
「元勇者パーティの一人、セルクだ。今はこの国の騎士団長をやっている。」
「ご丁寧に、どうも。先程も言いましたが、イグニです。よろしくお願いします。」
俺は騎士団長もとい、セルクの手を握った。
「あぁそうだ、ひとつだけ。」
「?」
俺はセルクの手を強く握り返し、言った。
「俺、心が小さい人間なもんで。知らなかったとはいえ、家族に剣を向けたあなた方のことは、絶対に許しませんから。どれだけ謝られても、その事実は拭えませんので。」
あくまで笑顔で、けれど脅しをかけるように。セルクの顔はピクリとも動かなかったが、門番たちの顔は相当ひきつっていた。
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セルクに案内され、俺は学校の前に到着した。ベルはセルクの助言により、カバンの中に隠れてもらっている。
道中、気になっていたことをセルクに聞いた。魔物を忌み嫌うのはまだ分かるが、畏怖の対象がテイマーにまで及んでいる理由だ。
「実は魔王が復活した時、国中のテイマーが使役していた魔物が、一斉に暴れだしてな。国中で大騒ぎになったもんでね、それからテイマーは悪とされたんだ。多分、どこの国でも同じだろうな。」
「そんなことが・・・」
「その子の取り扱いには、十分に気をつけた方がいい。それと、その子以外にも友達の魔物がいるだろうが、少なくとも国内では呼び出さないことだ。」
「き、肝に銘じておきます」
国内でグリフォンを乗り回すのは、やめた方がいいようだ。楽しみが減ってしまい、少し悲しかった。
何はともあれ、ここまできた。さぁ、試験を受けようじゃないか。絶対合格してやるぜぇぇ!
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